不動産の耐用年数の仕組みは?耐用年数が切れている物件売却のコツも
耐用年数が切れている不動産は融資が付きにくいこともあり、売却のハードルが高くなってしまっている物件も少なくありません。
しかし、不動産の耐用年数は必ずしも実際の使用できる年数を反映したものではなく、耐用年数が切れている物件であっても適切な戦略を練ることで十分に売却できる可能性があります。
本記事では、不動産の耐用年数の仕組みと、耐用年数が切れている物件を売却するコツについて説明していきます。
目次
- 不動産の耐用年数の仕組み
1-1.耐用年数と減価償却
1-2.法定耐用年数と実際の耐用年数は異なる - 法定耐用年数が切れている物件売却のコツ
2-1.使用可能であることをアピールする
2-2.空室であれば入居者をつける
2-3.リノベーションをおこなう
2-4.中古物件の売却が得意な不動産業者に依頼する
2-5.建物を解体して売却する - まとめ
1.不動産の耐用年数の仕組み
不動産の耐用年数は、減価償却と密接に関連しています。まずは、耐用年数と減価償却の関係性を簡単に整理しておきましょう。その上で、実際の不動産の耐用年数は、法定耐用年数とは異なるということを説明していきます。
1-1.耐用年数と減価償却
耐用年数は、減価償却の仕組みと密接に関連しています。
減価償却は、減価償却資産の取得価格を、その使用できる年数にわたって費用化していく仕組みです。耐用年数は、この減価償却資産の取得価格を費用として配分すべき期間であり、減価償却にとって重要な意味があります。
基本的に不動産の売買で用いられる耐用年数は、税法において定められた「法定耐用年数」が用いられることが多いといえます。金融機関の担保評価においても法定耐用年数から割り戻した建物価格を算出したり、法定耐用年数内での融資期間しか設定されないケースもあります。
1-2.法定耐用年数と実際の耐用年数は異なる
企業会計の一般原則を構成する「連続意見書第三」では、耐用年数は、本来、物質的減価と機能的減価の双方を考慮して決定されなければならない、としています。
すなわち、耐用年数は、減価償却資産の「物理的耐用年数」ではなく、「経済的耐用年数」に見合ったものでなければならないと考えられています。資産の材質・構造・用途などの物質的に消耗する期間と、使用環境、技術革新、経済事情の変化による陳腐化などを考慮した、実際に経済的に使用できる期間は異なるということです。
法定耐用年数が切れてしまっている物件でも、しっかりとメンテナンスが行われている物件の経済的耐用年数は非常に多く残されているということも少なくありません。このような物件は、過去の修繕履歴や現況の劣化具合などを加味することで次の買主に良い印象を持ってもらえることもあります。
2.法定耐用年数が切れている物件売却のコツ
ここまでで、税法上定められた法定耐用年数と、実際に経済的に使用できる期間を考慮した、経済的耐用年数は異なる、ということがお分かりいただけたかと思います。
法定耐用年数が切れていたとしても、実際に経済的に使用できる物件であれば、まだ収益を生み出しうるということであり売却できる可能性はある、ということが言えます。
そこで、以下では、法定耐用年数が切れている物件を売却するコツをみていきましょう。
2-1.使用可能であることをアピールする
不動産がまだ経済的に使用可能であることをアピールしましょう。
不動産の買手は、居住用もしくは賃貸用に使用することで、その不動産に経済的な価値を見出します。法定耐用年数が切れている物件であっても、買手が経済的な価値を見出すような物件であれば、売却しやすくなります。
居住用あるいは賃貸用として利用する際、必須の設備となるキッチンや風呂、トイレなどの水回り設備は、使用できる状態にしておきましょう。特にキッチンは、衛生面から使用できるかどうかが判断されます。汚れが目立つような状態であれば、清掃をおこなったり、交換したりするとよいでしょう。
2-2.空室であれば入居者をつける
不動産の買手は、居住目的のみならず、賃貸料収入を得ることを目的として物件を購入することがあります。入居者が入居して、賃貸料収入が入っている状態であれば、買手は購入と同時に賃貸料収入を得ることができるため、収益物件として売却しやすいといえるでしょう。
ただし、入居者が居住中の物件は、買手がすぐに居住することが難しいため、自己居住目的で物件を探している買手を遠ざけてしまうことになりかねません。収益目的の買手を探すか、あるいは自己居住目的の買手を探すか、どちらが売却できる可能性が高いかを、その不動産の立地や状態から見極めることが大切といえます。
2-3.リノベーションをおこなう
建物をリノベーションすることで、建物の経済的価値を上げて売却しやすくする方法も考えられます。
古い建物の場合、設備や間取り、デザインの陳腐化が影響して、現在の市場ニーズに合致しなくなり、経済的価値が下落していることがあります。最新の機能を備えた設備を取り付けたり、少人数世帯用の間取りに変更したり、和室を洋室に変更したりすることで、経済的価値が向上し、売却しやすくなる可能性があるでしょう。
ただし、市場ニーズを的確に掴むには、市場の需給状況に明るいことが前提になります。不動産の市場は個別要因の影響を受けやすく、リノベーションによって市場価値を向上させるのは、難易度が高いといえます。
2-4.中古物件の売却が得意な不動産業者に依頼する
耐用年数が切れた古い物件を売却するには、その物件が市場においてどのようなニーズに合致する可能性があるかを的確に把握することが重要になります。
不動産の市場は、個別性や地域性が高いことから、中古物件の個別要因、地域要因に詳しい不動産業者に売却を依頼することが有効でしょう。売却しようとしている不動産の種類、立地、間取りなどと類似した不動産の売却実績を確認し、実績の豊富な業者に依頼することを検討してみるようにしましょう。
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2-5.建物を解体して売却する
耐用年数が切れた古い物件が一棟物件で、建物が経済的に使用できる価値がないような場合は、建物を解体して売却することも一つの選択肢といえます。
その不動産を土地として使用したいというニーズに対しては、使用価値のない建物が建っていると、解体する手間がかかる分、経済的価値を損ねていることになります。
そこで、建物を解体するか、あるいは解体費用を負担することを売却条件とすることで、その不動産の経済的価値を向上させることができるでしょう。たとえば、戸建てを建築して販売する建売業者などに、建売用の土地として売却することが考えられます。
しかし、リノベーションと同じく買い手のニーズを限定させてしまうことにもつながり、必ずしも解体費用分を売値に反映できるとも限りません。解体を実施してしまう前に、まずは売却を依頼する不動産会社へ相談されてみると良いでしょう。
まとめ
耐用年数は、この減価償却資産の取得価格を費用として配分すべき期間であり、減価償却と密接に関連しています。
一方、法定耐用年数は、実際にその資産を使用できる経済的耐用年数とは乖離しているケースもあり、耐用年数が切れている物件であっても、経済的に使用できる物件であれば十分に売却できる可能性があります。
物件の個別性、地域性に応じて、市場ニーズに合った売却方法を検討するようにしてみましょう。売却方法によっては難易度が高い場合もあるため、市場ニーズに詳しい類似物件の売却実績が豊富な不動産業者に売却を依頼するとよいでしょう。
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