ワンルームマンション投資に適したエリアの特徴は?東京・大阪・名古屋を比較

ワンルームマンション投資は物件価格が安く小規模の不動産投資が検討しやすいため、初心者でも比較的手軽に始めることができる投資方法の一つです。しかし、都心部となると数千万円の運用となり、物件選びの際にエリアを間違えると物件運営が順調にいかないこともあります。

そこで今回のコラムでは、ワンルームマンション投資に適したエリアの特徴を4つ解説します。また三大都市圏の東京、大阪、名古屋について、どのエリアがワンルームマンション投資に適しているのかデータを用いて検証していきます。

目次

  1. ワンルームマンション投資に適した4つの特徴
    1-1.単身者が多いエリア
    1-2.交通アクセスが良好なエリア
    1-3.住みたい街ランキング上位のエリア
    1-4.治安のいいエリア
  2. 東京、大阪、名古屋でワンルームマンション投資に適しているエリア
    2-1.東京、大阪、名古屋で単身者が多いエリア
    2-2.東京、大阪、名古屋で交通アクセスが良好なエリア
    2-3.東京、大阪、名古屋で住みたい街ランキング上位のエリア
    2-4.東京、大阪、名古屋で治安のいいエリア
  3. まとめ

1 ワンルームマンション投資に適した4つの特徴

1-1 単身者が多いエリア

投資の対象となる物件タイプがワンルームマンションですから、基本的には一人で住むことが前提となります。つまり「単身者が多い」「単身者から人気がある」というエリアがワンルームマンション投資に適した特徴の一つになります。

具体的には、下記のような条件が揃っているとワンルームマンション投資に適していると考えられます。

  • 最寄り駅から近い
  • 近くにコンビニや24時間営業のスーパーがある
  • 夜遅くまで営業している店がある
  • 最寄り駅の交通機関は新宿駅や渋谷駅などのターミナル駅に直結している
  • 大学や専門学校などが近くにある、など

物件のメインターゲットとなる入居者を20代の社会人と想定すると、会社に通いやすく、夜遅く帰ってきても開いている店があれば不便を感じずに暮らすことができると推測できます。また通勤・通学のアクセスを考えると、最寄り駅から徒歩10分以内のエリアであれば、単身者からの賃貸需要が見込みやすいと考えられます。

1-2 交通アクセスが良好なエリア

総務省統計局が平成28年の「社会生活基本調査」をもとに公表した「社会生活基本調査から分かる47都道府県ランキング」によると、全国平均の通勤・通学時間は1時間19分となっています。また都道府県別ランキングの上位5位までと大阪府、愛知県は下記のようになっています。

順位 都道府県 通勤・通学時間
1位 神奈川県 1時間45分
2位 千葉県 1時間42分
3位 埼玉県 1時間36分
4位 東京都 1時間34分
5位 奈良県 1時間33分
6位 大阪府 1時間25分
9位 愛知県 1時間19分

※参照:総務省統計局「社会生活基本調査から分かる47都道府県ランキング

このデータは単身者のみの統計ではありませんが、首都圏の1都3県ではいずれも1時間30分以上になっています。しかし単身者の場合は、できるだけ交通アクセスがよく、通勤時間が短い方が便利ですので、このデータよりも短い時間で通勤・通学できるようなエリアが適していると考えられます。

交通利便性を検討する際は、このような通勤・通学時間の長さに加えて、乗り換えの回数が少なくなるよう複数の路線が乗り入れているターミナル駅とつながっているのかどうかもポイントになります。また都心から離れる場合は、快速電車や特急電車が停車する駅、座って通勤できる可能性がある始発駅が最寄り駅となっているエリアも利便性が良いと判断できます。

1-3 住みたい街ランキング上位のエリア

住みたい街ランキングは調査時点での賃貸ニーズを推し量ることができ、どのようなエリアが人々に求められているのかという点で参考になります。住みたい街ランキングの傾向を見ると、商業施設や商店街、ショッピングという利便性だけでなく、ランチや散歩などで休日ものんびり過ごせる環境が求められていることが分かります。

その他、住みたい街ランキングの上位エリアは、下記のような特徴があります。

  • 家賃相場が高く、住んでいる人の平均収入が高い
  • 景観もよく、街並みが汚れていることがない
  • 治安がいい
  • 生活利便施設が揃っている
  • 交通アクセスが良い、など

ただし、物件の購入代金は高くなる傾向にあるため、物件の取得費(投資額)と期待利回りのバランスには注意が必要です。住みたい街ランキングをそのまま鵜呑みにするのではなく、エリアごとに求められている資産価値が下がりにくいと考えれば出口戦略も見つけやすく、ワンルームマンション投資には適しているエリアと考えられます。

1-4 治安のいいエリア

ワンルームマンション投資に限らず、不動産投資のベースとなるのが治安のいいエリアです。治安の悪いエリアと治安がいいエリアでは、治安がいい方が入居期間は長くなる可能性があります。そのため空室リスクや家賃滞納リスク、資産価値リスクなども低くなります。

反対に治安が悪いエリアでは入居者の属性が低くなることも考えられ、騒音や近隣とのトラブルに発展することも考えられます。こうしたことから、治安のいい方がワンルームマンション投資に適しているのです。

現地を訪問する際は、物件の見学だけではなく周辺の環境も確認することが大切です。主に下記のような状態であれば、治安があまり良くないと考えられます。

  • ゴミが不法に投棄されている
  • 近隣の公園に人がいない
  • ごみ集積所が汚れている
  • お店のシャッターが閉まっている
  • シャッターや塀などに落書きがされている
  • スーパーなどに指名手配犯の張り紙が貼られている
  • パトカーのサイレンが聞こえた
  • 街灯があまりない、など

静かな住宅街は住みやすいイメージですが、夜道でひったくりの犯罪が頻発している地域もあります。出来れば各エリアごとの犯罪履歴についても確認するようにしましょう。

2 東京、大阪、名古屋でワンルームマンション投資に適しているエリア

これまで4つの特徴を見てきましたが、これらに適したエリアをそれぞれのデータから見ていきましょう。東京都は23区、大阪市と名古屋市はそれぞれ行政区ごとに調べたデータを上位5位まで表にしていますので、比較して検証していきます。

2-1 東京、大阪、名古屋で単身者が多いエリア

各自治体で公表している人口統計には世帯の人員別のデータもあります。そのうちワンルームマンションは一人世帯になるので、東京23区、大阪市、名古屋市それぞれの単独世帯の数をまとめたのが下記の表です。

順位 東京23区 大阪市 名古屋市
1位 世田谷区:250,635世帯 淀川区:60,382世帯 中区:45,473世帯
2位 大田区:214,237世帯 東淀川区:58,105世帯 千種区:43,832世帯
3位 杉並区:196,919世帯 北区:54,591世帯 中村区:41,683世帯
4位 練馬区:178,473世帯 中央区:45,502世帯 中川区:41,423世帯
5位 板橋区:170,849世帯 西成区:42,214世帯 北区:34,929世帯
最下位 千代田区:21,076世帯 大正区:12,988世帯 熱田区:16,708世帯

※参照:総務省統計局「令和2年国勢調査 都道府県・地区町村別主な結果
大阪市「令和2年国勢調査 人口等基本集計
名古屋市「令和2年国勢調査 人口等基本集計

東京23区では、1位の世田谷区と最下位の千代田区は10倍以上の開きがあることが分かります。一方、名古屋市の場合は、1位の中区と最下位の熱田区の差は3倍未満となっており、都市の規模によって単身者の偏りが生まれる幅にも大きな違いが出ています。

下記、それぞれの総世帯数と単独世帯数について割合を求めた表です。

都市 総世帯数 単独世帯数 単独世帯の割合
東京23区 7,227,180世帯 3,625,810世帯 50.2%
大阪市 1,464,615世帯 784,785世帯 53.6%
名古屋市 1,119,847世帯 505,343世帯 45.1%

三大都市圏のうち、単独世帯数が多いのは人口の母数が多い東京23区です。しかし、単身者の割合で見てみると大阪市の方が大きくなっています。

2-2 東京、大阪、名古屋で交通アクセスが良好なエリア

下記の表は、東京23区、大阪市、名古屋市内の乗車人員の多い上位5つの駅です。ターミナル駅となっている駅もあるので、投資対象のマンションの最寄り駅となる路線を選ぶ際にも参考となります。(※各駅のデータ元が異なるため、東京23区は1年間の乗車人員の総数、大阪市と名古屋市は1日平均の乗車人員となっています。)

順位 東京23区(単位:千人、集計期間:1年間) 大阪市(単位:人、集計期間:1日平均) 名古屋市(単位:人、集計期間:1日平均)
1位 新宿駅(JR):174,132 大阪駅(JR):422,685 名古屋駅(JR):126,578
2位 池袋駅(JR):137,368 梅田駅(地下鉄):220,376 栄駅(地下鉄):72,180
3位 東京駅(JR):98,954 なんば駅(地下鉄):178,383 金山駅(JR・地下鉄):55,993
4位 新宿駅(京王電鉄京王線):91,513 天王寺駅(JR):146,163 伏見駅(地下鉄):35,843
5位 品川駅(JR):80,639 天王寺駅(地下鉄):132,761 矢場町駅(地下鉄):21,506

※参照:東京都の統計「東京都統計年鑑令和2年
大阪市「大阪市統計書(最新版)
名古屋市交通局オープンデータ「駅別乗車人員(令和2年度1日当たり)

なお、東京23区と大阪市は路線ごとの統計になっているため、乗り換えを含めた総数ではありません。例えば、大阪市は4位がJRの天王寺駅、5位が地下鉄の天王寺駅となっています。データを確認する際は注意してください。

2-3 東京、大阪、名古屋で住みたい街ランキング上位のエリア

下記の表は、大東建託が発表している「住みたい街ランキング」の東京都版、大阪府版、愛知県版から東京23区、大阪市、名古屋市の行政区でそれぞれ上位5位までをまとめたものです。東京都版は、20歳以上の男女20,335人、大阪府版は20歳以上の男女13,147人、愛知県版は20歳以上の男女11,975人を対象にアンケートをとっています。

順位 東京23区 大阪市 名古屋市
1位 港区 北区 千種区
2位 世田谷区 天王寺区 中区
3位 渋谷区 中央区 東区
4位 目黒区 福島区 中村区
5位 文京区 都島区 名東区

※参照:大東建託「住みたい街ランキング2022 東京都版
大東建託「住みたい街ランキング2022 大阪府版
大東建託「住みたい街ランキング2021 愛知県版」(本記事の執筆時点、愛知県版のみ2021年度のデータ)

前述したように、住みたい街ランキング上位のエリアは物件価格と賃料ともに高いエリアとなり、投資に適したエリアであるかどうかという点には異なる視点での検証が必要になります。

例えば、東京都港区の平均賃料はワンルームマンションでもおおよそ11~14万円代、表面利回りは3~4%が目安となり、主要エリア・築年数10年未満の物件価格は1億円を超えてくるケースが大半となります。

投資額も非常に大きくなることに加えて、資金調達の難易度の高さや投資効率の低さを考慮すると、収益目的で低リスクの運用を検討している方にはややハードルの高い投資対象と言えるでしょう。

住みたい街ランキングで投資対象のエリアを検証する際は、入居者から求められているニーズの把握を行うという観点で参考とすることが大切です。

2-4 東京、大阪、名古屋で治安のいいエリア

下記の表は、東京23区、大阪市、名古屋市における刑法犯罪認知件数の上位5位までの行政区を抜粋したものです。犯罪数の少なさは街の治安を確かめるうえで重要な要素となるため、それぞれ比較して参考にしてみましょう。また、参考資料として最も犯罪数が多い行政区も表に組み入れています。

順位 東京23区 大阪市 名古屋市
1位 文京区:808件 大正区:474件 瑞穂区:426件
2位 荒川区:1,078件 此花区:541件 名東区:568件
3位 目黒区:1,417件 港区:591件 昭和区:590件
4位 墨田区:1,817件 福島区:643件 熱田区:601件
5位 品川区:1,818件 旭区:657件 守山区:711件
最も多い区 新宿区:4,421件 中央区:4,261件 中区:2,635件

※参照:警視庁「区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数
大阪府警察「令和3年中の犯罪統計(確定値)9刑法犯罪種及び手口別発生市区町村別認知件数
名古屋市「市内の犯罪発生状況について 名古屋市の刑法犯罪区別認知件数(令和2年1月〜12月)

地域の治安についてより詳しく知りたい場合は、警察官の人数や検挙率などからも判断することができます。

まとめ

ワンルームマンション投資に適しているエリアの特徴について、4つのポイントを挙げて解説しました。ここまで見てきたように、一つの要素だけで「ワンルームマンション投資に適しているか?」ということを判断することはできず、それぞれの要素を複合的に考慮して比較することが重要と言えます。

また、物件選びには築年数や間取り、デザイン、設備・仕様、予算なども検討材料になり、利用できる金融機関の融資条件によっても異なってきます。特に投資家の居住地が融資審査に与える影響も大きいため、不動産投資会社に問い合わせる際は提携金融機関も確認されておくとなお良いでしょう。

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