不動産投資ローンの名義を妻(夫)の名義にするメリット・デメリットは?
不動産投資では、不動産投資ローンの名義を妻(夫)の名義にする手法がしばしば利用されることがあります。メリットもある手法ですが、投資家本人ではなく、妻(夫)に収入や収益物件の名義、返済義務が帰属することになることから、デメリットやリスクもあります。
本記事では、不動産投資ローンとそのローンを組んだ収益物件を妻(夫)名義にする手法のメリット・デメリット、注意点について解説していきます。
※記事内の税金・税率などは2022年6月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 不動産投資ローンの名義を妻(夫)名義にするメリット
1-1.副業禁止規定を避けることができるケースがある
1-2.家賃収入を分散させ所得の割合を軽減することができる
1-3.ローンを低利率で借りられるケースがある - 不動産投資ローンの名義を妻(夫)名義にするデメリット
2-1.不動産投資ローンを受けることが難しい場合もある
2-2.後から名義を変更することが難しい
2-3.不動産投資に関する負担や責任が妻(夫)に発生する
2-4.妻(夫)の税金や社会保険料負担が増えることがある - 不動産投資ローンの名義を妻(夫)名義にする場合の注意点
3-1.妻(夫)名義にすることの目的を明確にし、本人の意志を確認する
3-2.投資に関する収支を妻(夫)で完結できるようにする - まとめ
1.不動産投資ローンの名義を妻(夫)名義にするメリット
不動産投資ローンの名義を妻(夫)名義にする場合、そのローンを組んだ収益物件も妻(夫)名義にすることになります。そのため、その収益物件から発生する家賃収入が妻(夫)に帰属することになり、その結果、様々なメリットが生じます。
1-1.副業禁止規定を避けることができるケースがある
サラリーマンの方が不動産投資をおこなうことを検討する場合、勤務している企業に副業禁止規定があることがあると、その規定に抵触しないかどうかが懸念事項となり、不動産投資に踏み出せないケースもあるでしょう。
妻(夫)に投資物件を購入してもらい、配偶者の名義で不動産投資ローンを組む場合、収入や返済義務は本人ではなく配偶者に帰属することになります。副業禁止の要項が名義の有無や収入を得ているか否か、という点が争点になるのであれば副業禁止規定を避けることができるでしょう。
ただし、副業禁止規定によっては収入ではなく「実務」を伴っているかどうかが争点になることもあり、必ずしも名義や収入をベースに判断されるものではありません。不動産投資が副業にあたるかどうかは、勤め先に確認をとっておくことが重要なポイントとなります。
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1-2.家賃収入を分散させ所得の割合を軽減することができる
妻(夫)名義にした収益物件から発生する家賃収入は、所得税や住民税の計算上、配偶者の所得となります。所得税は、超過累進税率を採用しており、所得が増えると段階的に税率が上がっていく仕組みになっています。
そのため、所得の多い方に家賃収入を一人に集中させてしまうと累進課税のステージが上がり、税率が高くなってしまう懸念があります。(※参照:国税庁「所得税の税率」)このような場合は、夫婦で所得の割合を分散するなどの対策を取られると良いでしょう。
ただし、不動産投資では減価償却費などの経費を計上することで会計上の赤字と給与所得を損益通算する方法もあります。(※参照:国税庁「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」)
税制上、どちらの方のメリットが大きいかという点については税理士など専門家への相談も検討されてみると良いでしょう。
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1-3.ローンを低利率で借りられるケースがある
不動産投資ローンを妻名義にすることで、女性向けの優遇された融資制度を利用できるケースがあり、夫名義でローンを組むよりも低利率で融資を受けられる場合があります。
例えば、日本政策金融公庫では、「女性、若者/シニア起業家支援資金」として、事業開始後おおむね7年以内の方のうち、女性または35歳未満もしくは55歳以上の方に対し、設備資金および運転資金の利率を基準利率よりも0.4%低く設定し、融資する制度を設けています。
2.不動産投資ローンの名義を妻(夫)名義にするデメリット
妻(夫)名義で不動産投資ローンを組み、妻(夫)の名義で収益物件を購入することは、不動産投資に関する責任や負担が配偶者にかかるということでもあり、デメリットもあります。以下で詳しくみていきましょう。
2-1.不動産投資ローンを受けることが難しい場合もある
夫(妻)と妻(夫)は生計が同一であることから、妻(夫)の収入が少ない場合であっても、配偶者の属性を考慮して不動産投資ローンを受けることが可能なケースも少なくありません。
しかし、属性状況や金融機関によっては、生計の主宰者でない方の名義の不動産投資ローンを受けることが難しい場合もあります。融資を受けられる方の属性や金融機関側の融資審査によってケースバイケースになるという点に注意しましょう。
2-2.後から名義を変更することが難しい
いったん、妻(夫)の名義で不動産投資ローンを組み、妻(夫)の名義で収益物件を購入した場合、後から、不動産投資ローンの名義を変更したい事情が生じて変更しようとしても、原則として名義の変更はできません。
収益物件とその不動産投資ローンの名義を、妻(夫)から、夫(妻)に変更しようとすると、贈与税がかかることになります。余計な税金などの支出をすることにならないように、慎重に検討するようにしましょう。
2-3.不動産投資に関する負担や責任が妻(夫)に発生する
不動産投資ローンを妻(夫)名義で組み、収益物件を購入した場合、不動産投資に関する負担や責任が配偶者に発生することになります。
収益物件には修繕費が発生したり、不動産投資ローンには金利が上昇したりするリスクもあります。こうした様々な負担やリスクを負うことを充分に理解してもらう必要があるでしょう。
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2-4.妻(夫)の税金や社会保険料負担が増えることがある
妻(夫)には、不動産投資の家賃収入を自分の所得として確定申告をおこない、それにかかる所得税および住民税を支払う義務が発生します。また、その結果、社会保険の扶養から外れてしまうケースもあり、このような場合は社会保険料が増えることになります。
3.不動産投資ローンの名義を妻(夫)名義にする場合の注意点
妻(夫)名義で不動産投資ローンを組み収益物件を購入することは、リスクもあるので、目的を明確にして本人の意志確認をしっかりとおこなうようにしましょう。また、投資に関する資金移動には、贈与税が課される可能性がありますので注意しましょう。
3-1.妻(夫)名義にすることの目的を明確にし、本人の意志を確認する
不動産投資に関する様々な責任や負担が妻(夫)に帰属することや、税金や社会保険料の負担も増える可能性があります。このようなリスクが生じることを配偶者の方に理解してもらい、目的を明確にしたうえで本人の意志をしっかりと確認するようにしましょう。
3-2.投資に関する収支を妻(夫)で完結できるようにする
不動産投資に関する収入は、妻(夫)の所有するところとなり、投資に関する支出についても、名義人が負担するところとなります。
仮に、不動産投資ローンの返済など、投資に関する支出を名義人が負担できずに、配偶者の方から資金を融通してもらった場合、その分の資金は贈与という扱いになり、贈与税の課税対象となる可能性があります。
夫婦間であっても、生活費の範疇でおこなわれない贈与については課税対象となります。不動産投資における経費の補填は生活費によるものではないため、収支を本人の資産の中で完結させないと、贈与税がかかる場合があることに注意しましょう。
※出典:国税庁「贈与税がかからない場合」
まとめ
不動産投資ローンを妻(夫)名義で組み、名義で収益物件を購入した場合、その収益物件から生じる家賃収入は、配偶者の方に帰属することになります。
収入の分散や資産管理の観点からメリットがある一方、不動産投資から発生する様々な責任や負担を妻(夫)が負わなければならなくなります。
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、目的を明確にし、配偶者の方の意志を充分に確認しておこなうようにしましょう。
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