【特集コラム】世界最大級のNFTイベント「NFY.NYC 2022」の概況
今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の大内裕未 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- NFT.NYCとは
- NFY.NYC 2022から始まった2つの新しい企画
- The NFT Awards 日本人では村上隆 氏が受賞
- 300以上のサイドイベントが開催
- メインプログラムの質は低下?考えられる3つの要因
- まとめ
2022年6月20日~23日に、アメリカのニューヨークで、世界最大級のNFTイベントである「NFY.NYC 2022」が開催されました。NFT.NYCは、2019年から毎年開催されており、今年で4回目の開催でした。
2022年5月頃から、暗号資産の価格は大幅に下落しており、それに伴って多くのNFTの価格も急落しております。そんな市場の中で開催された今回のNFT.NYCでしたが、結果としては、合計1,500人のスピーカーと15,000人の参加者、300以上のスポンサーが集まり、非常に大きな盛り上がりを見せました。これは、昨年の3倍ほどの規模です。
NFY.NYC 2022がここまで盛り上がったのはなぜでしょうか?今回はNFY.NYC 2022のイベントレポートの第1弾として、NFY.NYC 2022の概況について解説します。
NFT.NYCとは
NFT.NYCは、2019年2月から毎年開催されている世界最大級のNFTイベントであり、アーティスト、コレクター、エンジニア、投資家、起業家、ブランドなど、グローバルのNFTコミュニティが一挙に集結します。
NFY.NYC 2022のテーマは、「The Diversity of NFTs」であり、様々なプログラムが開催されました。メインプログラムは高級ホテル「マリオットマーキス」を始めとするタイムズスクエアの7つの会場で開催され、以下のトピックについてセッションが行われました。
Sports、Brands、Music、Art、Blockchains、Film、Fashion、Gaming、DAOs、 Legal & Accounting、Social、NFTs for Good、Developer、Investment、Ticketing、Future
公式のブログを参照すると、NFT.NYCのバリューは、以下にあると述べられています。
- コミュニティに発言権を与えるために、できるだけ多くのスピーカーをステージに配置する。
- 同様のプロジェクトに取り組んでいる人々を集める。
- NFTの価値をグローバルコミュニティに教育する。
NFY.NYC 2022から始まった2つの新しい企画
NFY.NYC 2022では、2つの新企画が用意されました。
一つ目の企画は、「Unconference」です。なるべく多くのスピーカーが登壇できるように用意されたこの企画では、先着順で誰でも登壇することができ、ガイドラインに沿って最大10分間NFTやDAOについて考えを共有することができました。「主催者がスピーカーを選ぶ」以外でもスピーカーに登壇のチャンスがあることは、スピーカーの選択に主催者の恣意性が排除されるため、良い企画だと感じました。
二つ目の企画は、「NFT.NYC 2022 Diversity of NFTs Art Collection」です。これは、NFT.NYC初のアーティストショーケースとコレクションです。応募は1,500件以上にものぼり、そこから以下の基準に基づいて221人のアーティストが選出されました。
- NFTコミュニティで以前にソートリーダーシップを示したアーティスト
- NFTの多様性に情熱を注ぐアーティスト
- NFT.NYCコミュニティの多様性を代表するアーティスト
7歳のアーティストから世界的に有名な写真家まで様々な人が選出され、国籍もアメリカだけでなく、計17か国から作品が集められました。NFT.NYC 2022のテーマの通り、多様性を重視していることが伺えます。日本人では、大平彩華氏、Goro Ishihata氏などが選出されました。選出された作品は、NFT.NYCの期間中、タイムズスクエアとマリオットホテル全体に表示されていました。
The NFT Awards 日本人では村上隆 氏が受賞
今年で2回目の開催であるThe NFT Awardsは、30以上あるそれぞれのカテゴリーでノミネートされたプロジェクトや人物の中で得票数の最も多いものに授与される賞であり、今年は計18,456票が集まりました。日本人では、村上隆 氏が受賞されています。
300以上のサイドイベントが開催
NFT.NYC 2022の期間中、メインイベントの他に、300以上のサイドイベントがニューヨーク近辺で開催されていました。大規模なパーティーから、入場者を限定した小規模のイベント、アミューズメント的なものまで内容は様々で、リアルのAirdrop(フィジカルグッズの配布)も行われていました。どのイベントもNFTホルダーを中心に非常に盛り上がっており、NFTコミュニティの熱量の高さが伺えました。
メインプログラムの質は低下?考えられる3つの要因
このように過去最大規模で開催され、非常に盛り上がったNFT.NYC2022でしたが、一方で、「メインイベントのプログラムの質は悪化した」「メインチケットは要らなかった」との声もありました。それはなぜでしょうか。このような意見が生じた要因としては、主に3つが考えられます。
まず一つ目は、スピーカーの人数が多すぎたことです。「できるだけ多くのスピーカーが登壇できるようにする」ことがNFT.NYCのバリューとして掲げられており、NFT.NYC 2022では多様性を重視して昨年の3倍の人数が採用されました。しかし、スピーカーの数を絞らなかった結果、スピーカーのレベルもまちまちであり、プログラムの全体の質の担保ができなかったということが考えられます。
二つ目は、メインプログラムのスケジュールがわかりにくかったことです。Twitterを検索していても、スケジュールを理解して回る時間がなかったとの声がありました。複数の場所で同時多発的にイベントが行われていたり、近くにいる人に話しかけられたりする中で、スケジュールを確認しながらメインのセッションを聞いて回ることは困難であったと思われます。
三つ目は、前述の通り、サイドイベントが非常に充実していたことです。これが一番大きな要因であると思われます。多くのNFTコミュニティが非常に力を入れてサイドイベントを開催しており、中にはメインイベントとしても成立するような規模とクオリティのものもありました。また、NFT.NYCは、初心者がNFTについて学ぶ場というよりは、NFTを既に保有していたり、NFTに関して一定程度詳しい方が集まるイベントであるため、参加者はNFT.NYC開催期間中、メインセッションを聞くより、サイドイベントを回り、同じNFTホルダー同士で交流する方が有意義だと感じる人が多かったようです。
中には、メインイベントのチケットは買わずに、サイドイベントだけ回る人もいました。次の記事では、このサイドイベントについて言及したいと思います。
まとめ
今年のNFT.NYCは過去最大規模で開催され、テーマの通り多様性に富んだ内容で非常に盛り上がりました。市場は下がっているものの、コミュニティの熱量は高まり続けていることが分かり、NFTの投機性としての価値ではなく、コミュニティの参加権としての価値をリアルの場でより一層強く感じられるようなイベントだったのではないかと思います。
次回のNFT.NYCも今回以上の大規模イベントになると予想されるので、どのような展開になるのか非常に楽しみです。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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