ECBが0.5%利上げならEUR高の可能性も?FXで儲けるための注目ポイントを解説

2022年7月現在、ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアからのエネルギー依存度が高かった欧州は景気後退リスクに晒されています。ドイツの貿易収支も単月で赤字に転落しました。

投機筋からもEUR売りを仕掛けられ、EUR/USDは1.0000を割り込みむなどEUR安が進行しました。輸入物価の上昇は更に欧州を苦しめています。

英国では、スタグフレーション懸念が高まっています。北アイルランド議定書問題に加え、ジョンソン首相が辞任するなど、経済だけでなく政治問題が発生し投機筋からGBP売りを仕掛けられています。

今回は、ECBの政策決定会合及び英国の重要経済指標について詳しく解説していきます。

※本記事は7月18日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ECB政策決定会合
    1-1.前回6月のECB政策決定会合
    1-2.直近の経済状況
    1-3.今回7月のECB政策決定会合予想
    1-4.発表後の反応予想
  2. イギリス経済指標
    2-1.前回6月のBOC政策決定会合
    2-2.6月CPIの予想
    2-3.7月GFK消費者信頼感調査の予想
    2-4.発表後の反応予想

 

1.ECB政策決定会合

1-1.前回6月のECB政策決定会合

政策金利を0%に据え置いたうえで、7月0.25%利上げの後、9月は0.50%利上げの可能性もあると示唆しました。資産買入(APP)については7/1に終了することを決定し、再投資についてはコロナショックの緊急買取分のPEPPも含めて継続することが決定されました。

3か月に一度のスタッフ経済予測では、物価見通しが大幅に上方修正されました。2022年:+6.8%、2023年:+3.5%、2024年:+2.1%となりました。

参考:ブルームバーグ「ECB、漸進主義は遅いペースや小幅ステップを意味せず-議事要旨

ラガルド総裁は会見の中で、9月の会合時に2024年の物価見通しが現行の+2.1%以上であれば0.5%幅の利上げが必要となるとしました。事実上9月の0.5%の利上げの可能性が高まっています。

しかし9月以降の政策については、緩やかな利上げが適切と大幅利上げについては否定的な見解を示しました。また成長率を2022年:+2.8%、2023年:+2.1%と大幅に引き下げています。

ECBが継続して利上げできるのか懐疑的な部分も浮上し、EURは下落しました。中立金利水準に関しては議論から外され、これまでの高官の発言を元に推測できる1~2%の間から変更はなさそうです。

参考:ブルームバーグ「ECB、7月利上げを確認-9月に0.5ポイントの可能性も示唆

1-2.直近の経済状況

ECBのタカ派転以降、景気後退リスクが加わりイタリアを中心とした周辺国の金利上昇が止まりません。ECB6月会合の直後の6/15にECBは緊急会合を開催、PEPPの再投資分について柔軟に対応するということと、新たなツールの開発を検討することで一致しました。

参考:ブルームバーグ「ECB、断片化対策で広範な戦略を協議-PEPP再投資が第一段階

ECBは利上げを急ぐだけでなく、南欧の国債金利急騰に対応するため、分断化対策の新ツールを決定しなければならなりません。しかし、ドイツの憲法裁判所がドイツ国債の償還金を財政的に弱い国の国債買い入れに充当することについて違憲判断を下す可能性が報じられています。分断化阻止ツールが7月会合までに準備が整わない可能性が高まっています。

ドイツのノルトライン・ウェストファーレン地域の6月CPIが前日比▲0.1%とマイナスになったことでEURが急落しました。原因はドイツ鉄道が1か月9EURで公共交通機関が乗り放題になるというチケットの販売を開始したためでした。6・7・8月の限定であることと、ドイツだけであるため、EU全体への影響は軽微なものに留まると思われます。

6月のユーロ圏HICPは前年比+8.6%と5月の+8.1%から更に加速し、過去最高を更新しました。ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給不安からエネルギーや食品など幅広い品目の価格高騰が止まりません。

ECBには大幅利上げを求める声も強まっています。ECB議事録では0.25%以上の利上げの可能性について言及がありながらも、7月の会合については大半のメンバーが0.25%の利上げを支持していることが明らかになっています。

参考:ブルームバーグ「ECB、漸進主義は遅いペースや小幅ステップを意味せず-議事要旨

ドイツの貿易赤字がついに単月で赤字に転落しました。輸出が振るわないだけでなくエネルギーの輸入が大幅に増加したことが要因です。これを受けてEURは一段と売られました。

2022年7月11日時点でノルドストリーム1経由でのロシアから欧州への天然ガス供給が完全に停止しました。6月半ば以来ロシアガスプロム社は技術的な理由から天然ガス供給を6割削減してきたものの、今回は7月21日まで点検の為完全に止めてしまいました。7月21日に点検が終了しガスの供給が再開するのかも不透明な状況です。

ドイツの7月ZEW期待指数は、▲53.8と大幅に悪化し、2011年のギリシャショック以来の低さとなりました。原因としてエネルギー供給、ECBの利上げ方針、中国のコロナ対策規制などが挙げられています。

1-3.今回7月のECB政策決定会合予想

市場の大半は0.25%の利上げ予想です。一方で先日BOCが1.0%の利上げを実施し、先進国では0.5%の利上げが当たり前になってきていることを考えると、ECBも0.5%の利上げに踏み切る可能性があります。

もう一つの注目ポイントは、分断化防止ツールの枠組みを発表する段階にまで持っていけるかどうかです。今のところ、何かやるという発表はあっても大まかな枠組みだけで詳細までは発表できないと予想されています。タカ派国に配慮して、新たな債券買取の仕組みを上限付きで決定するが、その発動の水準など具体的な詳細については出てこないと予想します。

1-4.発表後の反応予想

EURがJPYに代わってUSD高の受け皿になってしまうリスクが高まっています。既にEUR/USDは1.0000の節目を明確に割り込みました。EUR安が進行し、このまま放置すれば更に輸入物価の上昇がインフレを加速させてしまうでしょう。

0.25%の利上げ幅では反応は限定的であるものの、もし利上げ幅を0.5%とするなら、一時的にEURはショートカバーが発生し1.0200程度までの上昇する可能性があります。しかし、金利の最終到達点が引き上げられないと、FRBとの引き締めスタンスの差は埋められないため、EUR買いは限定的になりそうです。

ECBはEUR安が進行を止めたい思惑がある一方で、分断化防止ツールの枠組みの詳細を出さないといけません。もし具体策が出てくるならサプライズとなり、EURは1.0300を超えて1.0500を目指す展開になると考えます。

2.イギリス経済指標

2-1.前回6月BOE政策決定会合の内容

政策金利を0.25%引き上げて1.25%としました。今回は、引き上げ幅についてかなり幅広く予想が分かれていたものの、6人が0.25%、3人が0.5%を主張しました。

声明文ではインフレ見通しについて、10月の電気・ガスの再値上げを見越して10月に11%をやや上回るとしました。5月時点では第4Qに10%をやや上回るとし、物価の想定を更に引き上げた形です。

しかし、今後の政策方針については必要なら強力な対応を取ると大幅利上げに含みを持たせつつも、政策は「経済見通しや物価についての評価次第」としました。前回の「引き締めが適当」という表現から、より柔軟に対応する構えを見せました。

インフレによる個人消費減速懸念も滲ませています。実際GDP見通しについては、第2Qには早くも▲0.3%のマイナス成長を予想しています。

ベイリー総裁が、景気を過剰に冷やさずにインフレを抑制するには「narrow path」と表現しているように、金融政策運営はかなり厳しいものになっていきそうです。ただ、ベイリー総裁はECB主催の公開討論会では物価上昇が持続的となる兆候が見られるようであれば更に踏み込む必要があると、0.5%の利上げの可能性を匂わせています。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利を1.25%に引き上げ-必要ならより大きな動きも

BOEチーフエコノミストのピル氏はインフレ抑制の為には成長を犠牲にする用意があると、先日のFRBパウエル議長と同じような主旨の発言をしました。

参考:ブルームバーグ「英中銀チーフエコノミスト、インフレ抑制のため成長を犠牲にする用意

2-2.6月CPIの予想

前年比+9.3%と前月から更にインフレが進行する予想です。これまで米国中心に多くの国で6月のCPIが上振れています。BOEも第4Qにピークを迎えると予想しており、上振れてもサプライズにはならないでしょう。

2-3.7月GFK消費者信頼感調査の予想

7月GFK消費者信頼感調査の予想は▲42です。6月の▲41から更に低下し、リーマンショック以来の最低値を更新する可能性があります。実質賃金が完全にマイナスであり、景況感は悪化の一途を辿っています。

2-4.発表後の反応予想

CPIが予想を上回ったとしてもサプライズとはなりません。同時に発表される週平均賃金をセットで確認しておきましょう。

賃金がどの程度CPIに近づいているかによって、その後発表されるGFK消費者信頼感調査へのポジティブサプライズへの期待感が高まるでしょう。直近1カ月は悪材料しかないものの、GBPの下落スピードは徐々に弱まきています。今週の賃金かGFK調査がきっかけとなりショートカバーが入る可能性があります。

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