新トレンドReFiで活用されるNFT!注目すべきカーボンオフセットプロジェクト

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の大内裕未 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. NFTの環境問題
  2. ReFiとは
  3. カーボンオフセットとは
  4. NFTを用いたカーボンオフセットプロジェクトの事例
    4-1. Nori
    4-2. DOVU
    4-3. Moss
  5. まとめ

NFT市場は昨年から急激な拡大を続けており、特にユーティリティを持つNFTへの注目度が高まっています。その一方で、NFTが及ぼす環境への影響を懸念する声も大きくなっています。

M2E(Move to Earn)として注目されているSTEPNは、フィットネスのサービスという側面を超えて、カーボンニュートラルの実現を理念として掲げており、4月23日には「STEPN taking bold steps toward Carbon Neutrality(カーボンニュートラルに向けて大胆な一歩を踏み出すSTEPN)」という記事を出しました。ブロックチェーンベースの炭素除去NFTマーケットプレイスNoriとの提携を発表し、収益の一部でカーボンクレジットを購入することで、環境問題にアプローチしています。

2015年には気候変動に関する新たな枠組みであるパリ協定が採択されるなど、世界全体として環境問題への関心が高まっており、Web3の中でもReFi(再生金融)分野への注目度が高まっています。本記事では、NFTにまつわる環境問題について触れながら、NFTを用いたカーボンオフセットプロジェクトについてまとめます。

NFTの環境問題

NFTの基盤となっているブロックチェーンに対する、環境への影響が懸念されています。ビットコインを始めとする多くのブロックチェーンが採用している「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」は、取引データを正しくブロックチェーンに記録し、ブロックチェーンのセキュリティを確保する仕組みですが、マイニングによる膨大な電力を必要とします。それが原因となり、ビットコインのマイニングは年間で138テラワット時を消費しているといいます。これはノルウェーやスウェーデンなどの国の年間消費電力よりも多い数字です。

そして、世界第2位の取引量を誇るブロックチェーンであり、NFTの大部分が取引されているイーサリアムもこのPoWを採用しています。これが原因で、NFTの環境問題に対する批判の声が生じています。しかし、イーサリアムは、執筆時点では9月19日に、「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」という、エネルギー消費を抑えながらセキュリティを確保するシステムに移行予定であるという発表しました。この移行に成功すれば、環境に与える影響をかなり小さくすることができ、NFT市場のさらなる発展に影響してくると思われます。ちなみに、既にPoSを採用している環境に優しいチェーンは、Celo、Near、Polygonなどがあります。

ReFiとは

ReFiとは、「Regenerative Finance」の略で、ブロックチェーン技術を用いて、長期的に世界規模の環境問題や社会問題を解決しようとするアプローチのことです。再生経済学の理論に根ざしており、人間の幸福に不可欠な物理的資源を回復、維持するシステムをいかに作るかを探求しています。ブロックチェーン技術によって、従来のシステムでは解決できなかった領域にアプローチすることが可能になりました。

カーボンオフセットとは


カーボンオフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資するといったことにより、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です。イギリスを始めとした欧州、米国、豪州等での取組が活発であり、日本でも民間での取組が拡がりつつあります。取り組みによって削減・吸収できたCO2の量を数値化した「クレジット」を売買する方法が一般的です。

NFTを用いたカーボンオフセットプロジェクトが注目される理由としては、クレジットを創出するプロジェクトの二重登録、クレジットの二重発行及び二重使用の回避が容易になることが挙げられます。例えば、二重支払いが行われると、支払った金額よりも多くCO2削減に貢献したという扱いになってしまいますが、NFTを活用することで、これを防ぐことができます。また、カーボンオフセットを個人レベルで行うのは、額の少なさ、手続きの煩雑さなどの問題で非常に難しいことでしたが、NFTを活用することで、個人でも簡単に取り組むことができるようになりました。

NFTを用いたカーボンオフセットプロジェクトの事例

NFTを用いたカーボンオフセットプロジェクトの基本的な仕組みは以下の図のようになっています。

以下で紹介するNoriやDOVUなどのプロジェクトは、炭素除去の活動を行っている農家のCO2削減量を計算してカーボンクレジットNFTを発行し、提供するマーケットプレイスで販売します。そのマーケットプレイスでNFTを購入することで、企業だけでなく個人でも気軽にカーボンオフセットに取り組むことができます。

Nori


冒頭でもご紹介したNoriは、大気中の二酸化炭素を集めて土壌に戻す再生農家などの「炭素除去サプライヤー」と、炭素除去に積極的な企業や個人をつなぐカーボンクレジットのマーケットプレイスです。サプライヤーは、計画、実施した炭素除去のプロジェクトをNoriに登録し、NRTと呼ばれるNFTを作成、販売します。二酸化炭素排出量を削減したいと考えている個人の消費者または企業は、$NORIを使用してサプライヤーからNRTを購入します。二重支払いを防ぐため、一度購入されたNRTはバーンされます。

DOVU


DOVUも、Noriと同様に、世界中の農家に農地土壌の管理を促して、土壌に蓄積される炭素を農家から購入し、Carbon NFTを発行しています。Carbon NFTは、$DOVというトークンと交換ができ、環境に優しい農地作りが推進されるエコシステムの構築を目指しています。

DOVUが提供するCarbon Calculatorというサービスにウォレットを接続すれば、そのウォレットで行われた取引によるCO2の排出量を計算してくれるので、自分がオフセットすべきCO2の量を知ることができます。また、Carbon Market Capという別のサービスでは、現在Ethereumチェーン上にあるプロジェクトのCO2排出量の可視化をしています。

Moss


Mossは、上記2つのプロジェクトとは異なり、Moss自体が森林の保全や持続可能な農業を促進するプロジェクトに取り組み、$MCO2というカーボンクレジットトークンを発行しています。カーボンオフセットをしたい企業や個人は、カーボンフットプリントを計算し、$MCO2を購入します。

Mossはアマゾンの広大な土地を購入し、Moss Amazon NFTを発行しています。その購入者は、アマゾンの1ヘクタールの土地の所有者になることができ、森林破壊の抑止力となる「グリーンウォール」の作成に貢献できます。

まとめ

このように、NFTを活用したカーボンオフセットプロジェクトが次々と生まれており、個人でもカーボンオフセットに取り組みやすくなりました。NFTの基盤となっているブロックチェーン技術には、環境に対する影響を懸念する声がありますが、PoWからPoSへの移行など、負の影響を最小限にするために今後も進化していくと思われます。NFTを用いたカーボンオフセットの取り組みは、ただNFTによる環境への悪影響を埋め合わせることができるというだけでなく、カーボンオフセットの取り組みの新たな可能性を示しており、持続可能な社会の実現への大きな一歩になると言えるのではないでしょうか。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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