金融機関のライセンス 〜 投資詐欺やトラブルを避けたい!投資家を守るモノは
今回は、様々なモノやサービス、事業を小口化・証券化できる『ST(セキュリティトークン)』事業を2022年7月より開始したHash DasH株式会社から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
投資詐欺やトラブルを避けたい!投資家を守るモノは。
芸人さんであるTKO木本氏が巻き込まれた投資トラブルがテレビを賑わしました。そのなかで、ちょっと耳に引っかかったのは「無登録業者」というワードでした。そこで、大切なお金を預ける金融業者の「登録」の意味を考えます。
まず、金融業者は、お客様のお金をお預かりし、投資して収益を上げてお客様に返すことを目的とします。収益を上げる―簡単にそうはいっても、誰でもできることではないですよね。投資対象や市場、経済環境などに対する深い知識とスキルがなければ、投資そのものや資産の管理に失敗してお客様に理不尽な痛手を負わせる可能性があります。また、投資というと、最初から騙し取る目的を持っている悪いヤツも・・・。そこで、知識・スキルのない業者や犯罪者から投資家を守るために、国家機関がいわゆる「ライセンス」を付与する仕組みが作られています。
これがライセンス制度
金融業のライセンスは、大きく分けて「資産の運用」「投資商品の販売」の2つがあります。
資産を運用する業務は、資産運用を行うプロとしての専門知識やスキル、体制があるかを問われます。知識の乏しい勘で投資するような人に大事なお金を預けたくないですよね。そこで、スタッフのキャリアや保有資格のほか、一人が好き勝手にお金を動かすことができないように運用計画を設定し承認する組織の在り方が厳重な要件になります。
販売する業務では、投資家の属性にあった商品を販売する体制や投資家の資産を確実に管理するインフラがあるかを問われます。その投資家の保有資産に比べてリスクの大きすぎる商品を販売しない判断が重要な要件となりますので、口座開設の時に金融資産額や収入額を問わない業者はそれをやっていないことになります。訊いてくる業者がすべて安全ということではありませんが、少なくとも訊いてこない業者は疑うべきと思います。また、その業者が破綻した場合でも、投資家のお金に経済的・権利関係的な影響を及ぼさない仕組みも要チェックポイントです。
ライセンスの形としてはハードルの高い順に認可(許可)、登録、届出がありますが、投資運用業者・金融商品取引業者(証券会社)は登録制です。登録制といっても書類を出せばポンと登録できるものではなく、ハードな質問(の形を採った実質的な要求!)を満たさなければ、書類を受け取ってはもらえません。数年越しでの登録作業も珍しくなく、ライセンスを取れずに撤退するケースも見られます。
当社も、2020年6月に第一種金融商品取引業者の登録を行いましたが、第一種であるからといって何でも取り扱えるかといえばそうではなく、個別の商品を扱うにはまたさらにライセンス(登録変更といいます)が必要です。その後、デジタル証券を取扱うことができる登録変更ができたのは2022年2月と、裕に1年半の年月を費やしました。デジタル証券はブロックチェーンでの管理となるため、データ書き換えのパスワード(秘密鍵)の管理体制やシステム監査、万一にもトークンが漏洩・滅失した場合の対応策にも回答を求められました。加えて、第一号の商品となる「毎月分配│家賃収入ファンド・静岡呉服町」についても、スキームの安全性はもちろんのこと、投資対象物件である「静岡呉服町・札の辻クロス」の鑑定結果から売買価格の決定過程、投資家への説明の仕方まで200を超える質問に対応しました。
審査はそれなりに大変でしたが、それも投資家を守ることを使命とする金融庁(関東財務局)のお役目であり、私たち登録業者の目的は「投資家を守り、資産を育てる」ことでもありますので、がんばりました。もしよろしければ、商品のメイキングドラマをマンガにしたコンテンツを読んでみてください!
【参照URL】Hash ST メイキングストーリー
ライセンスを取った後も
この登録制度の肝は最初のハードルだけではなく、その後、抜き打ちでやってくる「金融庁検査」があります。池井戸潤さんのドラマに出てくるような立入り検査は、リアルに近いものです。
スーツに身を包んだ検査官数人が整然と廊下を歩いてくる・・・そんなシーンが検査の始まり。受付から「金融庁の検査官が投資信託部に向かわれました」と電話が来て、「え?」と思いドアの方を見るとガラスに映った黒い影。その次の瞬間には、「金融庁です。全員手を止めて、そのまま。取引帳票を回収します。ロッカーを開けて」と命令口調でいいながら、一斉にガサ入れ・・・と、私が証券会社に入った1990年ごろは犯罪捜査のような感じでした。女性社員のデスクのひきだしは開けられないとの噂が出て、ヤバい書類はそこに隠す・・・、しかし程なく女性検査官が登場してその作戦は突破される・・・といった抵抗必死エピソードも業界では耳にしました。
さすがに今は、緊急でない検査はアポイントがあり、コンプライアンス担当を窓口に事務処理的な雰囲気で進められるようになっていますが、検査内容の厳しさはそのまま。すべての議事録や社内メールが見られ、お客様との電話対応レコードも聴かれます。長ければ数ヵ月にわたって社内に駐留しての検査となります。小さな事務処理ミスや事務フロー違反、事実に反する書き方をされた広告、ずさんな資産管理、証拠隠滅のメール削除も・・・すべて検査で見つかります。
違反が見つかると行政処分が行われます。軽ければ改善策の提出、業務改善命令、重ければ数カ月にわたる業務停止や登録抹消も。最悪、経営危機に直結します。行政処分の報告書を読むたびに、他社ごとながら国家権力の強大さをヒシヒシと感じる瞬間です。私たち金融機関はそうならないように日々努力しています。
金融当局はすべての金融機関にとって怖い存在ではありますが、投資家をしっかり守るのが使命なのであり、その監督に服することは金融機関自身も身を守ることにつながります。
金融庁登録の調べ方
金融庁がこんなに厳しく監督していますから、これを利用して投資家のみなさまは大事な資産を守るべきです。
金融庁はウェブサイトに登録状況を公開しています。
金融機関の種類ごとに分かれており、銀行から始まり金融商品取引業者(証券会社)、保険会社と続きます。目で見て探すほか、ExcelやPDFでダウンロードして検索やソートをかけて手早く探すこともできます。面倒な方は「●●証券 金融庁 登録」と検索してもいいかもしれません。Excelそのものが検索結果に出てきます。
このように苦労してライセンスを取り、日々努力して法令を遵守している登録業者からみれば、無登録業者など危険極まりなく、資産運用業界の名を汚す存在です。投資家のみなさまは新しい金融機関と取引を始める時に必ず登録状況をチェックしてください。
【参照サイト】『半沢直樹』黒崎検査官の“悪役”イメージは本当? 金融庁の役割を中の人に聞く
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