元本保証のある資産運用は?始め方とメリット・デメリット

資産運用の初心者やリスク許容度の低い人は、元本保証のある商品を求めることもあるでしょう。長引く低金利で元本保証のある商品ではお金は増えませんが、利益を狙う運用商品と使い分けると有効です。

この記事では、元本保証のある資産運用とその始め方などを紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年9月21日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 元本保証とは
    1-1.元本保証が望ましい資金
  2. 元本保証のある資産運用
    2-1.定期預金
    2-2.財形貯蓄
    2-3.個人向け国債
    2-4.地方債
    2-5.社債
  3. 元本保証のある資産運用
    3-1.元本保証といえどもノーリスクではない
    3-2.低金利のため資産はほとんど増えない
    3-3.インフレリスクには対応できない
  4. まとめ

1.元本保証とは

元本保証とは、運用期間中に買付けた商品が元本割れしないことを保証することです。元本保証に近い意味合いで、一定の条件を満たすと元本割れしなくなる「元本確保型」の運用商品もあります。

反対に、投資元本が減ることが「元本割れ」です。株式や投資信託は高い利益が期待できる反面、元本割れのリスクもあります。

1-1.元本保証が望ましい資金

日本では長引く超低金利のため、元本保証の商品で資産を増やしていくことは困難です。しかし、生活費や近い将来使い道が決まっている以下のような資金は、元本保証の金融商品での運用が望ましいといえます。

  • 生活費
  • 住宅購入資金
  • 自動車購入資金

2.元本保証のある資産運用

ここからは、元本保証のある資産運用を紹介します。

2-1.定期預金

預貯金は金融機関が利息の支払いと元本の元払いを約束している金融商品です。預貯金には、大きく分けて預け入れ期間の定めのない普通預金と預け入れ期間が決まっている定期預金の2種類があります。

定期預金は1年・5年など満期日まで引出しが制限されている分、普通預金より金利の高い預金です。

定期預金のメリット

定期預金には元本保証であることの他に、以下のようなメリットがあります。

  • 普通預金より金利が高い
  • 預金保険制度により一定額まで保護される
  • 目的に合わせて期間を選べる

預金保険制度(ペイオフ)とは金融機関が破綻した場合に、預金元本1,000万円までと破綻日までの利息を預金保険機構が保証する制度です。保証される元本1,000万円とは、定期預金や普通預金など利息の付く預金の合計のことです。

定期預金のデメリット

定期預金には以下のようなデメリットもあります。

  • お金がほとんど増えない
  • 中途解約すると利息が低くなる

定期預金の始め方

定期預金は多くの金融機関で取り扱っていますが、条件が異なります。比較するときは以下の4つのポイントをチェックしましょう。

  • 金利
  • 預け入れ期間
  • 利息タイプ(単利・複利)
  • 変動金利か固定金利か

一般的にはネット銀行の定期預金の金利が高めです。ネット銀行で定期預金を始める手順は以下のとおりです。

  1. 口座開設
  2. 普通預金口座に入金
  3. 定期預金に預け入れる

口座開設には、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類が必要です。

2-2.財形貯蓄

財形貯蓄とは導入している事業所の会社員や公務員が、勤務先を通じて提携金融機関へ給与の一部を積み立てる制度です。提携金融機関は銀行以外に保険会社、証券会社があります。

財形貯蓄には「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類があります。それぞれの違いは以下のとおりです。

項目 一般財形貯蓄 財形住宅貯蓄 財形年金貯蓄
対象者 制度が導入されている事業所の従業員 制度が導入されている事業所の55歳未満の従業員 制度が導入されている事業所の55歳未満の従業員
利用目的 自由 住宅新築・購入・リフォーム 老後資金
積立期間 3年以上 5年以上 5年以上
非課税措置 なし 財形年金貯蓄との元利合計550万円からの利子等が非課税 財形住宅貯蓄との元利合計550万円からの利子等が非課税

財形貯蓄のメリット

財形貯蓄には、以下のようなメリットがあります。

  • 給与天引きで貯蓄できる
  • 財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄なら利子に課税されない
  • 一般の定期預金より優遇される場合もある
  • 財形住宅融資が受けられる

財形住宅融資は、財形住宅貯蓄に限らず財形貯蓄の残高に応じた融資を低金利で受けられる制度です。

財形貯蓄のデメリット

財形貯蓄には以下のようなデメリットもあります。

  • 勤務先に制度がないと利用できない
  • 提携金融機関によっては元本割れのリスクがある

提携金融機関が銀行の場合は定期預金で運用されるため、元本割れはありません。保険会社・証券会社の場合、可能性は低いものの元本割れのリスクがあります。

財形貯蓄の始め方

財形貯蓄を始めるには勤務先の担当者にその旨を申し出て、必要書類を受け取ります。書類に必要事項を記入して提出すると、給与天引きされるようになります。

2-3.個人向け国債

個人向け国債とは、国が発行する個人を対象とした債券です。最低1万円から購入可能で年2回利子が支払われ、満期には元本が全額戻ります。

個人向け国債には、満期と金利タイプの異なる3種類があります。いずれも最低金利0.05%が保証されています。

  • 変動金利型10年満期(変動10年)
  • 固定金利型5年満期(固定5年)
  • 固定金利型3年満期(固定3年)

個人向け国債のメリット

個人向け国債には、以下のようなメリットがあります。

  • 債務不履行リスクが低い
  • 少額投資が可能
  • 一般的な定期預金より金利が高い
  • 中途換金しても元本割れしない
  • 毎月売り出されている

2022年10月17日発行の個人向け国債の固定5年と3年の利率はともに0.05%で、変動10年の利率は0.16%です。一方、2022年9月20日現在のみずほ銀行の定期預金金利は0.002%です。一般的な銀行へ預けるよりも、個人向け国債のほうが金利は高めです。

個人向け国債のデメリット

主なデメリットは以下です。

  • 発行後1年間は中途換金できない
  • 大きなリターンは期待できない

個人向け国債の始め方

個人向け国債は多くの金融機関で取り扱っています。銀行や郵便局など証券会社以外では、預金口座以外に証券口座の開設が必要です。証券口座に資金を入金し、毎月の発行日の前の募集期間中に金融機関に購入の申し込みをします。

SBI証券マネックス証券野村證券など、一部の金融機関ではインターネットで個人向け国債の申し込みが可能です。

2-4.地方債

地方債とは地方自治体が資金調達のために発行する債券で、国債に次いで債務不履行リスクが低いとされています。購入単位や満期はさまざまですが、1万円単位で5年・10年満期などが一般的です。地方債にも種類があり、「全国型市場公募地方債」であれば発行自治体の住民でなくても購入可能です。

地方債のメリット

地方債には、以下のようなメリットがあります。

  • 債務不履行リスクが低い
  • 少額投資が可能
  • 個人向け国債より金利が高い

2022年9月22日発行の千葉県令和4年度第4回公募公債(10年債)の表面利率(額面金額に対して毎年支払われる利率)は0.374%です。変動10年の国債と比べても、高金利であることがわかります。満期まで保有していれば元本割れのリスクはほぼなく、メリットのある資産運用といえます。

地方債のデメリット

  • 発行頻度が不定期
  • 取り扱う金融機関が限られている
  • 中途換金の場合は元本割れのリスクがある

地方債のデメリットは個人向け国債のように購入しやすくない点です。発行が不定期であり、取り扱う金融機関も限られています。また、中途換金は時価での売却となるため、売却金額が購入金額を下回り元本割れになる可能性があります。

地方債の始め方

全国型市場公募地方債の発行情報は、一般社団法人地方債協会のWebサイトに公表されています。銘柄ごとに取り扱う金融機関が異なるため、金融機関のWebサイトで詳細を確認しましょう。

地方債を取り扱う金融機関は、発行体の地元の地方銀行、都市銀行、店頭証券会社などで、ネット証券ではほとんど取り扱いがありません。購入したい場合は取り扱い金融機関への証券口座の開設が必要です。わからないことは、口座を開設する前に金融機関に問い合わせましょう。

2-5.社債

社債とは、企業が資金調達を目的として発行する債券のことです。個人向け国債や地方債同様に、決められた利払いと満期時に元金が返還されます。社債のリスクは、発行する企業の信用によって異なります。

社債のメリット

社債の発行条件は銘柄によりさまざまですが、一般的に個人向け国債や地方債より金利は高めです。2022年9月28日発行のZホールディングス株式会社 第23回無担保社債(5年債)の税引き前の利率は0.76%です。

基本的に満期まで発行体の破綻などが起こらずに保有できれば、元本が戻ってきます。

社債のデメリット

  • 発行頻度が不定期
  • 取り扱う金融機関が限られている
  • 国債・地方債より信用リスクが高め

社債のデメリットは地方債と同様に、購入しやすくない点です。発行が不定期であり、取り扱う金融機関も限られています。ただし、大手ネット証券の中には社債を取り扱う会社もあります。

社債は発行体の信用によっては、デフォルト(債務不履行)になるリスクが高い点に注意が必要です。元本割れリスクの回避を優先したい場合は、定期預金での運用や破綻リスクがより低い個人向け国債の購入などを検討したほうが良いでしょう。

社債の始め方

社債の取り扱いが多いのは野村證券のような大手店頭証券と、ネット証券であればSBI証券などです。取り扱う証券会社に口座がなければ口座開設し、社債の募集期間内に入金し、申し込みます。

また、社債に限らず発行済みの債券が、売り出されている場合があります(既発債)。既発債は取り扱う証券会社に口座があれば、すぐに買い注文を出して購入可能です。希望する利回りや投資期間の既発債が売り出されていれば、購入してもよいでしょう。

3.元本保証のある資産運用の注意点

元本保証は資産運用の安全性を重視する人には魅力的ですが、注意すべき点もあります。

3-1.元本保証といえどもノーリスクではない

元本保証の運用商品が元本割れする可能性は低いものの、全くのノーリスクとはいえません。たとえば、預貯金は預金保険制度による保護がありますが、元本が1,000万円を超えた分については対象外です。

また、国が破綻する可能性もゼロとはいえません。国債でさえ100%安全とは言い切れないことを知っておきましょう。

3-2.低金利のため資産はほとんど増えない

一般的に元本保証の金融商品は、10年国債の金利を基準にして利率が設定されます。そのため、現状の超低金利では、元本保証で高金利の運用商品はありません。高くても1%に満たない金利では、資産形成には向かないでしょう。

低い金利で多くの資金を準備するには元手も多く必要で、家計に負担がかかります。

3-3.インフレリスクには対応できない

元本保証の運用商品は、固定金利型など将来の受取額が確定しているものがほとんどです。その場合、金利以上の物価上昇が起きたときには、資産価値が目減りするリスク(インフレリスク)があります。

教育費や老後資金などを元本保証の運用商品で準備する際には、将来の物価上昇より資金不足になる可能性があることを認識しておきましょう。

まとめ

できることなら運用で損失を被ることは避けたいため、元本保証を魅力的に感じる人も多いでしょう。しかし、元本保証されている金融商品の多くは低金利で、資産を増やすことは期待できません。

近い将来使う資金を元本保証で、長期で準備する資金はリスクのある運用で準備する目的別の使い分けが有効です。運用も適材適所を心がけましょう。

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