ミュンヘン再保険 23年4月より新規石油・ガス田開発への投資・引き受け停止し保険商品などに適用

独ミュンヘン再保険(ティッカーシンボル:MUV2)は10月6日、新たに石油・ガス業界向けの投資、保険引き受け方針を公表した(*1)。自社の投資、(再)保険取引、および事業オペレーションの脱炭素化を推進すべく、2023年4月から新規の石油・ガス田開発事業への投資、保険引き受けを停止する意向だ。

新方針の下で、23年4月以降、22年末までに生産が開始されていない新規の石油・ガス田、新規の中流(生産した石油・天然ガスの輸送)インフラ、および新規の石油火力発電所の計画、資金調達、開発・建設、運営をもっぱらカバーする契約・プロジェクトへの投資、もしくは保険引受を行わない。これは非流動性資産(不動産)への直接投資、第一次的保険商品(primary insurance、#1)、任意保険、(再)保険分野に適用される。

上場株式においても、23年4月以降、石油・ガス専業の企業へ新規に直接投資を行わない。さらに、25年1月より、相対的および絶対的な温室効果ガス(GHG)排出量が最も多い一貫操業の石油・ガス上場企業(listed integrated O&G、#2)に対し、短期・中期目標をふくむ、50年までのネットゼロにコミットするよう要請する方針だ。

気候変動リスクは保険業界に大きな金融リスクをもたらし得る。気候変動リスクは物理的リスクと移行リスクに大別される。物理的リスクは洪水、ハリケーンなどの自然災害によって保有する不動産や担保価値が毀損することで、移行リスクは低炭素社会への移行に伴って生じる政策、技術革新、市場の嗜好の変化などに起因した損失リスク(座礁資産化など)のことである。

気候変動による影響を評価する世界で最も権威のある国際機関のひとつ「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、世界の気温上昇を約2℃に抑える場合、未燃焼の化石燃料と、化石燃料インフラの世界的な割引価値の合計が、15年から50年にかけて1兆~4兆ドル(約149兆~600兆円)ほどになると試算する(*2)。1.5℃であれば更に大きくなる。そのような状況下において、石油・ガス資産は今世紀半ばにかけて座礁資産化するリスクが高まると予測する。

気候変動リスクにさらされる保険業界にとって、脱炭素化に向けた取り組みは喫緊の課題だ。再保険世界大手のミュンヘン再保険もサステナブルな取り組みを推進する。同社は50年までに資産ポートフォリオのGHG排出量のネットゼロを目指す国際イニシアチブ「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(AOA)に加盟しているほか、保険引受ポートフォリオの移行を推進する国際的なイニシアチブ「ネットゼロ・インシュランス・アライアンス(NZIA)」の設立メンバーでもある。

保険業界では、そのほかにも独保険大手アリアンツ(ALV)が4月、気候変動に関する新コミットメントを公表した(*3)。30年までにネットゼロの達成を目指すほか、一部の石油・ガス事業への投資・保険引き受けを停止する。大きな金額を運用する機関投資家として投資先にも責任を持つことが求められるが、単なるダイベストメント(投資撤退)によってその責任を回避するのではなく、エンゲージメント(投資先との建設的対話や働きかけ)によって投資先企業の変容を促し、一緒に伴走をしていくことで、業界全体・社会全体の脱炭素化に向けたインパクトを創出していくことに期待したい。

(#1)第一次的保険商品…損害が発生して初めて支払われる保険金であり、保険会社の抗弁権をふくむ。

(#2)一貫操業の石油・ガス企業…石油の探鉱・開発・生産を担う石油開発部門(上流部門)と、精製・輸送・販売の下流部門を一社で行っている企業。

【参照記事】*1 ミュンヘン再保険「New Oil & Gas investment / underwriting guidelines
【参照記事】*2 IPCC「Climate Change 2022 Mitigation of Climate Change Summary for Policymakers
【関連記事】*3 独アリアンツ、2030年までにネットゼロ目指す。石油・ガスへの一部引受・投資停止

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