横浜ゴムのESG・サステナビリティの取り組みは?配当推移も【2022年11月】
ESGやサステナビリティへの取り組みを強化している横浜ゴムは、投資家が注目している企業の一つです。もともと、日経平均株価の構成銘柄として市場から注目度の高い銘柄であり、日本でもESG投資残高が増加を続ける中、最近は世界的なESG投資指数の構成銘柄にもなっています。
そこで、この記事ではESG投資の重要な判断要素となる、横浜ゴムのESG・サステナビリティの取り組み内容について詳しくご紹介します。また、会社の特徴や株価動向、株主優待なども併せて解説するので、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年11月1日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- 横浜ゴムの特徴
1-1.日経平均の構成銘柄 - 横浜ゴムのESG・サステナビリティの取り組み
2-1.横浜ゴムの重要課題(マテリアリティ) - 横浜ゴムの株価動向
3-1.業績の推移
3-2.株価動向 - 横浜ゴムの配当・株主優待
- まとめ
1 横浜ゴムの特徴
横浜ゴム株式会社(5101)は、1917年の創立以来100年以上の歴史を持つ老舗タイヤメーカーです。東証プライム市場に上場しており、社名にも入っている通り横浜市を製造拠点としていましたが、関東大震災や第二次世界大戦を経て、現在は神奈川県平塚市や三重県伊勢市、静岡県三島市などに生産拠点を構えています。
「ヨコハマタイヤ」のブランド名で知られる横浜ゴムのタイヤ事業は、2021年の事業別売上収益で約7割を占める主力事業です。世界のタイヤ市場に占めるシェアは売上高ベースで第8位となっており、全日本スーパーフォーミュラ選手権でタイヤを単独供給するなど、モータースポーツファンをはじめタイヤ事業は世界的にも高い知名度を持ちます。
タイヤ事業以外には、高圧ホースなどのホース配管やコンベアベルトなどの工業資材、化粧室ユニットや飲料水タンクなどの航空部品を取り扱うMB(マルチプルビジネス)事業も展開中です。過去には、アメリカン航空のボーイング757型機の化粧室ユニットを独占供給していたなど、MB事業についても豊富な実績があります。
また、1980年代から展開しているゴルフ用品のPRGR(プロギア)ブランドは、ゴルフクラブの開発に科学を持ち込んだ先駆けとしても知られており、タイヤ事業を中核とした総合ゴムメーカーとしての確固たる地位を確立しています。
1-1 日経平均の構成銘柄
横浜ゴムは、日経平均株価(日経225)を構成している日本を代表する株式銘柄の一つです。日経平均株価とは、日本経済新聞社が発表する日本の代表的な株価指数のことで、東証プライム市場に上場している銘柄から225銘柄が選定されます。
日経平均株価の構成銘柄は、主に市場流動性の高さや業種のバランスなどを重視して選定されますが、ゴム製品製造業の中から選定されているのは、2021年に世界シェア第2位だったブリヂストン(5108)と横浜ゴムのみなので、市場からの注目度も高い銘柄です。
また、横浜ゴムは世界中の企業からESGに関する様々な評価基準を満たした企業で構成される「FTSE4Good Index Series」というESG 投資指数や、ESGにおける絶対評価が高い日本企業のESG総合型指数である「FTSE Blossom Japan Index」にも選定されるなど、ESG投資においても欠かせない銘柄の一つとなっています。
2 横浜ゴムのESG・サステナビリティの取り組み
横浜ゴムでは、2000年代に入ってから企業が果たすべき社会的責任(CSR)を重視しながら経営を行っているほか、企業としての重要課題(マテリアリティ)を定めてESG・サステナビリティの取り組みを進めています。以下では、横浜ゴムの具体的な取り組み内容を確認しましょう。
2-1 横浜ゴムの重要課題(マテリアリティ)
横浜ゴムでは、2008年からCSR経営を推進するためCSR行動指針を定め、責任部門としてCSR本部の設置や現在のCSR会議の前身となるCSR・環境推進会議を設置するなど本格的な取り組みを始めています。
2014年からは、国連と民間が協力し、参加企業に対して人権・労働・環境・腐敗防止の4分野に関わる10原則の実践を求める世界最大のサステナビリティ・イニシアチブ「国連グローバル・コンパクト」の4分野10原則などの国際規範をもとに行動指針を制定し、多岐にわたるCSR課題の中から以下のような重要課題(マテリアリティ)を特定して解決に向けて取り組みを進めています。
マテリアリティ | 認識する課題(一部抜粋) |
---|---|
・製品を通して 安心と楽しさをいつまでも届けます |
・自動車業界におけるCASE(自動運転や電動化、カーシェアなどの頭文字をとった造語で今後の新車開発の中心になる考え方)、MaaS(様々な移動サービスを1つに統合して利用者に提供する新しい概念)の浸透 ・テクノロジーの活用によるイノベーション ・お客さまの安全・安心 |
・地球環境のために 豊かな自然を次世代へ伝えます |
・気候変動問題 ・カーボンニュートラルの実現 ・自然資源の持続可能な利用・管理 |
・人とのつながり 共に高め合い笑顔を広げます |
・人権の尊重 ・ダイバーシティ&インクルージョン ・働き方改革 |
・地域社会と共に 共に生き、ゆるぎない信頼を築きます |
・水や大気の汚染、環境破壊等の地域の環境課題 ・地域社会の活性化、経済効果の創出 ・地域社会とのコミュニケーション |
・コーポレートガバナンス グローバル化する社会的課題に正しく対処するための基盤を強化します |
・適切な組織統治の基盤の維持・強化 ・持続的な企業価値の向上 ・ステークホルダーとの対話と情報開示 |
2-2 横浜ゴムのESG・サステナビリティに関する取り組み
横浜ゴムでは、環境に配慮した取り組みが進められており、経済活動との両立を図りながらカーボンニュートラルの達成を目指すほか、持続可能な天然ゴム調達の推進などを行っています。
カーボンニュートラルについては、2050年までに自社活動の二酸化炭素排出量ゼロを目標に掲げており、重油から二酸化炭素排出量の少ない天然ガスへの燃料切り替えや、高効率ソーラーパネルを利用したソーラー照明の設置などを行っています。
天然ゴムなどの原材料についても2050年にサステナブル原料100%を目指しており、環境や社会への負荷を低減した原材料の開発・利用やリトレッドタイヤなどのリサイクル製品の販売促進、MB事業でのリサイクル活動などを進めています。
社会に配慮した取り組みでは、マテリアリティとして抽出された人権の尊重や働き方改革などを行っています。例えば、国籍、性別、LGBTQなどにとらわれない採用や人材登用、在宅勤務や短時間勤務などの多様な働き方の支援、ダイバーシティ推進の一環として仕事と生活の両立を支援する制度整備など幅広い取り組みが進められています。
また、グローバルに事業を展開する横浜ゴムは、持続可能な経営を進めていく上で地域社会とのつながりも重要視しています。地域社会に対する活動では、住民懇談会の開催や地域のNGOと連携した生物多様性保全活動、「YOKOHAMA千年の杜」と呼ばれる植樹活動などを世界中で実施しています。
ガバナンスの面では、健全で透明性と公平性のある経営を実現するコーポレートガバナンス体制の充実と強化、コンプライアンス体制の強化などが精力的に取り組んでいるポイントです。コーポレートガバナンス体制においては、取締役会での議論が活発化するように取締役11名のうち半数近い5名の社外取締役が選出されています。
コンプライアンス体制については、内部通報制度の整備、国内外のグループ会社に配置されたコンプライアンス推進責任者とコンプライアンス推進室との連携による適切な法令順守の対応、社内で起きたコンプライアンス問題などを題材とした教育啓発活動などでコンプライアンスレベルを上げる取り組みが進められています。
2-3 横浜ゴムのESG・サステナビリティに関する外部評価
横浜ゴムはESG・サステナビリティへの取り組みが外部からも高い評価を受けている企業です。2021年から2022年にかけて下記のような受賞や認証取得実績などがあります。
年月 | 受賞歴・認証取得実績 |
---|---|
2021年3月 | ヨコハマタイヤリトレッド北海道事業所が「令和2年度北海道ゼロ・エミ大賞」大賞受賞 |
2021年11月 | ヨコハマタイヤリトレッド北海道事業所が「令和3年度循環型社会形成推進功労者環境大臣表彰」受賞 |
2022年2月 | 横浜ゴム平塚製造所が「令和3年度エネルギー管理優良事業者等関東経済産業局長表彰」受賞 |
2022年3月 | 横浜ゴム三重工場、新城工場が生物多様性に配慮した工場として「いきもの共生事業所®認証」取得 |
2022年6月 | 環境省の「令和4年度地域環境保全功労者表彰」受賞 |
2022年9月 | サステナ株式会社の「SUSTAINA ESG AWARDS 2022」最上位のゴールドクラスに選出 |
3 横浜ゴムの株価動向
横浜ゴムは、市場流動性の高い日経平均採用銘柄です。そのため、企業の業績だけでなく市況変化によっても株価は騰落します。こちらでは、最近の横浜ゴムの業績推移や株価動向について確認してみましょう。
3-1 業績の推移
以下は、横浜ゴムの過去5期分の売上高や営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益(連結子会社などの利益のうち株式の持分割合などに応じて親会社に帰属する利益などを含めた連結ベースの当期純利益)について横浜ゴムのIR情報を基にまとめた表です。
(単位:百万円)
決算期 | 2017年12月 | 2018年12月 | 2019年12月 | 2020年12月 | 2021年12月 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 646,272 | 650,239 | 650,462 | 570,572 | 670,809 |
営業利益 | 54,224 | 53,478 | 58,564 | 36,409 | 83,636 |
当期純利益 | 39,975 | 35,623 | 41,971 | 26,312 | 65,500 |
横浜ゴムは、2021年12月期の決算で売上高6,708億円、営業利益836億円、当期純利益655億円といずれも過去最高の業績をマークしています。2020年12月期は新型コロナウィルスの感染拡大により消費者の購買や企業の経済活動が停滞する中、大幅な減収減益となりましたが、それを除くと過去5期の売上高・営業利益・当期純利益は概ね堅調です。
2022年12月期についても、世界的な半導体不足による新車の生産調整や原材料価格の高騰などマイナス要因はあるものの、冬用タイヤや海外市販用タイヤなどの販売増加に加えて円安が大きく寄与し、過去最高の7,500億円を見込んでいた売上高を8,550億円に上方修正しています。
コスト増などの影響により営業利益や当期純利益は僅かな上方修正となっていますが、今後も円安の恩恵などを背景に堅調な業績が続く可能性もあります。
3-2 株価動向
以下は、横浜ゴムの2017年以降の四半期末時点での株価を終値ベースでまとめた表です。
(単位:円)
項目 | 3月末 | 6月末 | 9月末 | 12月末(期末) |
---|---|---|---|---|
2017年 | 2,179 | 2,255 | 2,320 | 2,763 |
2018年 | 2,463 | 2,303 | 2,449 | 2,065 |
2019年 | 2,056 | 1,980 | 2,161 | 2,131 |
2020年 | 1,343 | 1,514 | 1,491 | 1,534 |
2021年 | 1,980 | 2,379 | 2,015 | 1,843 |
2022年 | 1,692 | 1,837 | 2,216 | - |
(参照:日本取引所グループ 月間相場表)
業績が堅調に推移している一方、値下がりしている局面もあります。2019年12月末に2,131円だった株価は、2020年3月末に1,343円まで約4割近く下落していますが、この時期は日経平均株価自体も大きく下落したタイミングです。
2019年12月〜2020年1月にかけて24,000円を超える水準だった日経平均株価は、2020年3月には新型コロナウィルスの感染拡大を要因とする世界的な株安の流れで一時16,000円台まで約3割超の下落となりました。
その後は2020年12月期の新型コロナウィルスの影響などによる大幅な減収減益もありましたが、先の株価下落である程度織り込み済みの材料だったため、その後の株価は大きく下落することもなく再び上昇基調に転じています。
4 横浜ゴムの配当・株主優待
横浜ゴムの株主優待制度は2022年11月1日時点で実施されていません。以下は、2017年12月期から過去5期分の年間配当額と配当性向をまとめた表です。
項目 | 年間配当額 | 配当性向 |
---|---|---|
2021年12月期 | 65円 | 15.9% |
2020年12月期 | 64円 | 39.0% |
2019年12月期 | 64円 | 24.5% |
2018年12月期 | 62円 | 27.9% |
2017年12月期 | 62円 | 24.9% |
直近5年は毎年6月末の中間配当と12月末の期末配当で併せて62~65円の年間配当となっており、当期純利益の増減によって幅は大きくなっているものの、配当性向は15.9~39.0%の水準です。
2022年12月期は大幅な売上高の上方修正等が発表されていますが、配当予想は当初の発表通り年間66円で据え置かれており、昨年度と比較して微増となる見込みです。
なお、横浜ゴムでは、2015年7月1日から市場流動性を高めることなどを目的に株取引の最小単位である単元株数を1,000株から100株に変更しています。それに伴い株式2株を1株に統合する株式併合が実施されていますが、その頃50円ほどだった年間配当額(株式併合後の株数で算定)はその後少しずつ上昇傾向です。
なお、2017年12月期には創立100周年の記念配当が年間10円上乗せされて年間配当額は初めて60円を超える62円となっており、その後も年間配当額は60円を超える水準で維持されています。
まとめ
横浜ゴムは100年を超える歴史を持った老舗企業で、主力であるタイヤ事業の他に工業資材や航空機部品、ゴルフ用品なども取り扱っている総合ゴムメーカーです。CSR経営の一環としてESGやサステナビリティの取り組みも積極的に行っているなど、ESG投資に適した銘柄です。
ここ数年の株価は市況の変化などで大きく上下していますが、最近の堅調な業績や増配などを背景に今後は更なる株価上昇も期待できます。
横浜ゴムのESGやサステナビリティに関心のある方は、ご自身でもよくお調べの上、検討してみてください。
The post 横浜ゴムのESG・サステナビリティの取り組みは?配当推移も【2022年11月】 first appeared on 金融・投資メディアHEDGE GUIDE.
Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
横浜ゴムのESG・サステナビリティの取り組みは?配当推移も【2022年11月】