ESG投資の問題点は?今後の見通しや課題、個人投資家が気をつけるべきポイントも
ESG投資は、年金基金など大きな資産を長期で運用する機関投資家を中心に、企業の新たな収益創出の機会を評価する指標として注目されています。
今回の記事では、ESG投資の手法、問題点などを中心に詳しく説明していきたいと思います。今後の見通しや個人投資家が気をつけるべきポイントも解説していきます。
※この記事は2022年11月10日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
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目次
- ESG投資の理念について
- ESG投資誕生の背景
- ESG投資の7つの手法について
3-1.ネガティブ・スクリーニング
3-2.ポジティブ・スクリーニング
3-3.規範に基づくスクリーニング
3-4.ESG統合
3-5.サステナブル・テーマ投資
3-6.インパクト投資
3-7.エンゲージメント・議決権 - 何か問題点はあるの?
- 個人投資家に関わる変化は?
- ESG投資の今後の課題は?
6-1.ESG評価の整備
6-2.ESGの不確実性
6-3.人材や体制の整備 - まとめ
1 ESG投資の理念について
まず、ESG投資の理念について整理していきましょう。
ESG投資とは、元々第7代目国連事務総長コフィー・アナン氏の主導で国連責任投資が提唱された時に取り上げられた3つのキーワードである環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字から造られた用語です。以下のような6つの原則が提唱されています。
- 投資分析と意思決定プロセスにESGの課題を組み込む
- 活動的な株式所有者となり、株式所有方針・習慣にESGを組み入れる
- 投資対象に対してESG問題について適切な開示を求める
- 資産運用業界において本原則が受入られ、実行されるようにする
- 本原則が実行する際の効果を高めるために協働する
- 本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告する
引用:PRI「責任投資原則」
機関投資家は受益者のために長期的な視点に立ち、最大限の利益を追求する義務があります。そして、これらの原則を遵守することにより、投資家たちがより広範囲な社会の目的を達成できるようになります。
2 ESG投資誕生の背景
ESG投資が誕生した背景はどのようなものでしょうか。
これまで投資家は、企業の営業利益やキャッシュ・フローなどの株価指標・財務情報をもとに投資判断を行ってきました。一方で、現在の財務状況が優れているからといって、必ずしもその企業が長期的に成長するとは限りません。投資先を選ぶ上で、投資家は財務情報以外にも幅広く目を向ける必要があります。
そこで、財務情報以外として、ビジネスの持続可能性を加味して投資先を選ぶというESG投資が注目されるようになりました。そしてESG投資が生まれた背景には、以下のような要素があります。
- 企業の財務情報だけでは長期的な収益性を図るのが困難
- 人財の活用(人的資本)など非財務情報の重要性が高まっている
- 世界的な環境問題が企業業績に大きな影響を与えている
- サプライチェーンでの人権問題が消費者の購買に影響を与えている
「ESGへの取り組みが企業の持続的成長に必要」という認識の広まり、非財務情報も投資の判断材料の1つになった経緯があります。また、企業にとってはESGに取り組むメリットは投資家の評価が上がるだけではありません。ESGへの取り組みを課題として掲げることで、長期的な収益力の向上、ブランド力や企業価値の向上にもつながるのです。
3 ESG投資の7つの手法について
では実際、ESG投資ではどのような手法を用いて運用に反映しているのでしょうか。
世界のESG投資額の統計を集計し、サステナブル投資を普及するための国際団体である GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は、ESG投資を以下の7つに分類しています。
3-1 ネガティブ・スクリーニング
ESG手法の中では最も歴史の古い手法であり、世界で広く普及しています。武器、ギャンブル、たばこ、アルコール、ポルノなど、倫理的でないと定義される特定の事業から収益をあげる企業を投資先から除外する戦略です。
ただ、ネガティブ・スクリーニングはESG投資において最古のスクリーニング手法であるため、累計の投資残高は多いのですが、近年ネガティブ・スクリーニングはESG投資ではないとみなす考え方が提唱されるようになり、徐々に投資額も落ちてきています。
ESG投資において日本の代表的な組織である、 NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)では、ネガティブスクリーニングをESG投資と考えていない立場を取っています。
3-2 ポジティブ・スクリーニング
同種の業界、あるいは投資対象の中でESG関連の評価が相対的に高い企業に投資する戦略です。ESG評価の高い企業は中長期的に業績が高くなるという発想に基づく手法です。
ポジティブ・スクリーニングでは、環境保護や多様性、人権保護への取り組みが実施されていますが、そのようないわゆる「非財務情報」は評価の基準が定まっていないため「評価がしづらい」などの欠点があります。
さらに、ESGへの取り組みが必ずしも投資で大きなリターンを出すという確約もないため、ポジティブ・スクリーニングは大きく飛躍していくことが難しい状況となっています。
3-3 規範に基づくスクリーニング
ESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準をクリアしていない企業を投資先リストから除外する手法です。人権問題や環境問題、汚職などの問題に関与した不祥事企業を除外することで国際社会のルールに則したポートフォリオを構築します。
業界に指定はなく、外部の団体などが定めた国際規範をもとにして投資対象をスクリーニングします。
3-4 ESGインテグレーション
最も広く普及しつつある手法で、投資先選定の過程で、従来考慮してきた財務情報だけでなく非財務情報も含めて分析をする戦略です。
特に、年金基金などの長期投資性向の強い資金を運用するファンドが、将来の事業リスクや競争力などを図る上で積極的にESG情報を活用し、市場平均よりも大きなリターンを目指すために用いられることが多くあります。
3-5 サステナブル・テーマ投資
再生可能エネルギー、持続可能な農業、男女同権、多様性など、サステナビリティに貢献し得る投資テーマや企業に投資する戦略です。
3-6 インパクト投資
社会・環境に貢献する技術やサービスを提供する企業を投資対象とし、投資収益に加えて社会や環境に測定可能なポジティブ・インパクトを与えることを目的とする投資手法です。
3-7 エンゲージメント・議決権行使
株主として企業に対してESGに関する案件に積極的に働きかける投資手法です。株主総会での議決権行使、日常的な経営者へのエンゲージメント、情報開示要求などを通じて投資先企業に対してESGへの配慮を促します。
7つの投資手法は重複して用いられることも多く、特に「エンゲージメント・議決権」は他の投資手法と重複するケースが多くなっています。
4 ESG投資の問題点は?
以下では、ESG投資する上での問題点についても考えていきましょう。
ESG投資を実践するには、数値化されていない各企業の取り組みについてチェックしなければなりません。ESGに関する情報発信はまだまだ途上で、フォーマットも企業によってバラバラです。企業のESGの取り組みが、今後どのように企業価値を高めていき、利益向上に貢献するのかを見極めなければいけません。
ESG投資の歴史がまだまだ浅いため、成功事例から投資判断基準をすぐに導けるものではなく、投資対象を絞り込む難しさがあることも、ESG投資のデメリットとして挙げられます。
ESG投資は長期の資産運用に向いた手法です。ESG投資は短期で大きなリターンを狙う手法には向いていません。また、ESG投資では、財務情報に加えて環境・社会・ガバナンスに配慮した取り組みを考慮して投資先を決めます。従来の投資と比べると、扱う情報が増える分、投資先の見極めが難しくなる点に注意が必要です。
5 個人投資家に関わる変化は?
それでは個人投資家はどのようにESG投資に取り組んでいけばいいのでしょうか。
近年、ESG投資を取り巻く環境は大きく変化しています。その主な変化として次の3点が挙げられます。
- 環境改善や社会貢献につながる製品・サービスが「付加価値のあるもの」として世界的に認知されるようになり、需要拡大に繋がるようになった。
- 技術進歩や法整備により、省エネルギー化や資源の有効活用に向けた設備投資が大きなコスト改善効果を生むようになった。
- インターネットやSNSの普及により、企業のESGへの取り組みが世界的に発信されるようになり、ブランド力の向上や優秀な人材の確保などに大きく貢献するようになった。
つまり、ESGへの取り組みを、コストではなく「将来、企業価値を向上させる資産」として捉えられるようになりました。
実際に、環境改善や社会貢献につながる画期的な製品・サービスを開発したことで大きく成長した企業もあります。また、世界的な大企業はESGを自社が果たすべき課題として掲げ、その取り組み状況を積極的に開示することで、ブランド力をさらに高めています。
今後、こうした変化がより顕著に表れると考えられ、それに伴い、ESG投資の重要性はますます高まると予想されます。
6 ESG投資の課題は?
ESG投資の今後の改善に向けた課題を3点解説します。
- ESG評価の整備
- ESGの不確実性
- 専門知識を持つ人材や体制の整備といった点
6-1 ESG評価の整備
多数の評価機関が様々な観点から企業のESG評価を行っていますが、評価方法は一律ではなく類似する項目でも評価に食い違いがあります。
また、企業によっては必ずしも十分なESG情報を開示していない場合もあります。ESG情報の開示ルールの整備や評価手法の改善が今後の課題となってくるでしょう。
6-2 ESGの不確実性
ESG要因の影響は、気候変動をはじめとして将来的な影響の予測が難しいものもあります。現在、世界各国が気候変動対策に取り組んでいますが、その内容は各国政府の方針に大きく影響されます。
また、再生可能エネルギーなどは現在開発が行われている途上にあり、その技術進歩と将来像を予測することは非常に難しいのです。こうした不確実性の大きさがESGに関する情報を投資に活用する上での課題となっています。
6-3 人材や体制の整備
ESGは従来の経済・金融だけでなく、環境問題や人権問題などに関連した自然科学、ガバナンスに関連した法律といった知識も必要となります。こうした専門知識をカバーすることは難しく、専門家などと連携する体制を構築することが求められます。
7 まとめ
現状のESG投資の手法はまだまだ完成されたものではなく、各企業が改善し続けることや投資家からも必要な情報開示を求めることなどが必要です。
ESG投資を長期リターンを得るための手法とだけ捉えずに、投資を通じてより良い企業への変化・移行を促したり、より良い社会・環境を形成していくためのアクションの一つとして捉えたりすることで、今後さらにESG投資が広がるのではないでしょうか。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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