【7分で分かる】アメリカで不動産投資を始めるための10のステップ

経済成長が続くアメリカでは、2008年のサブプライム問題で大きく下落した不動産相場が上昇を続けています。名目GDPも成長を続けており、アメリカ経済の強さがドル高につながることで、ドル建て資産の保有が為替差益を生み出す可能性やインフレによる資産価値の向上への期待も高まっています。

2022年12月時点、日米の政策金利の差によりドル高・円安傾向が続いています。このような傾向が長期になるほど、日本国内に資産を集中させるのではなく、国外における事業投資によって米ドルを獲得していきたいというニーズは今後も増加する可能性が高いと言えるでしょう。

そこで今回はアメリカで不動産投資を始めるための手順を一から解説します。アメリカ不動産投資を始めたい方、どのような手順が必要なのか知りたい方はご参考ください。

目次

  1. アメリカ不動産に強いエージェントを探す
    1-1.アメリカでの物件購入でエージェントが必要になる理由
    1-2.アメリカ不動産に強いエージェントの探し方
  2. アメリカの銀行口座を作る
  3. ローンの事前承認を取り付ける
  4. アメリカの物件を探す
    4-1.アメリカ不動産はMLSで探す
    4-2.アメリカ不動産は「学区」がポイント
  5. オファー(買付申し込み)を入れる
  6. エスクローをオープンする
  7. ホームインスペクターに物件の調査を依頼する
  8. ローン審査を受ける
  9. クロージング(不動産の所有権譲渡)する
  10. 不動産の賃貸管理を行うPM(Property Management)会社を探す
    10-1.PM会社との連絡は不動産エージェントを通す
  11. まとめ

1 アメリカ不動産に強いエージェントを探す

アメリカで流通する不動産は新築よりも中古が圧倒的に多いため、不動産投資でも中古物件を購入するケースが一般的です。

アメリカではエリアによって不動産価値に明確な違いがあり、資産価値の高い場所に建つ中古物件に特に人気が集中します。例えば世帯年収の高いサンフランシスコやロサンゼルス、ニューヨークなどのエリアは不動産価格も上昇する傾向にあります。

ただし、初めてアメリカ不動産投資をする方にとっては物件価格が高すぎるため、オハイオ州のコロンバスやテキサス州のダラスなど価格が手頃でかつ住宅購入のニーズが高く、現地の世帯年収が高いエリアなども選択肢に入れると良いでしょう。こういった成長中のエリアは、人口も増加傾向にあり、継続的な家賃収入(インカムゲイン)や資産価値の維持・向上(キャピタルゲイン)が期待できます。

1-1 アメリカでの物件購入でエージェントが必要になる理由

アメリカで中古不動産を購入する際は、不動産のエージェント探しから始めます。売主側もエージェントを付けて少しでも良い条件で売却しようとするため、売買交渉にはエージェントの力が不可欠となります。

特に土地勘のない外国人がアメリカで中古不動産を購入する際は、対等に交渉できるエージェントが必要になります。エージェントは物件選びから購入のための交渉、取得後の賃貸管理会社選びまでサポートしてくれます。

なお、アメリカでの中古不動産売買では、売主が仲介手数料の全てを負担します。それを売主と買主それぞれのエージェントが折半することになります。

1-2 アメリカ不動産に強いエージェントの探し方

エージェントはアメリカ不動産に明るく、交渉に長けたプロに依頼しましょう。アメリカではエージェントになるために資格が必要です。資格には「ブローカー」「セールスパーソン」の2種類があります。

「ブローカー」資格では、会社を経営し、他のエージェントを雇うことができます。一方、「セールスパーソン」はブローカーの元でしか活動することができない資格ですが、多くの顧客を抱える優秀なセールスパーソンもいます。さまざまな顧客やコネクションを持っているエージェントを探してみましょう。

なおアメリカ不動産のエージェントは国内でも探すことができます。たとえば、東証プライム上場企業の「オープンハウス」は、アメリカ不動産の販売・管理・売却などで国内トップクラスの実績がある不動産投資会社です。

オープンハウス

アメリカ不動産投資会社「オープンハウス」

会社名 株式会社オープンハウスグループ
サービスサイトURL https://wm.openhouse-group.com
本社所在地 東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング12階(総合受付13階)
銀座サロン 東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 11F(※アメリカ不動産事業の拠点)
設立年 1997年
上場年 2013年
資本金 200億7,008万円
売上高 5,759億円(2020年10月期)
社員数 4,087名(2021年9月末時点)
上場市場 東証プライム上場
投資エリア アメリカ(テキサス州、オハイオ州、ジョージア州、ハワイなど)

オープンハウスは、アメリカ現地の不動産市場に深く入り込み、人口動態や需給バランス、空室率、学区などの生活環境、周辺取引事例といった広範囲に渡るデータを駆使することで投資に適した地域、物件を見極めています。

オープンハウスでは、長期的な値上がりが期待できるエリアを絞り込むポイントとして、下記5点に注目をしています。

  • 転入や自然増により人口が増えている
  • 優れた教育機関(主に大学)がある
  • ハブ空港に近いなど交通のアクセスがよい
  • 居住者の世帯年収が高い
  • 不動産価格と世帯収入との乖離が大きすぎない

これらの観点から、トヨタ自動車をはじめ世界的大手企業が多数あり、州別経済規模全米2位、全米の投資に適した町ランキング上位に多数ランクインしている「テキサス州ダラス」、優れた税務環境で世界的大手企業が多数あり、州別GDP成長率全米3位などリーマンショックの影響が少なく安定的な人口増加・経済成長をしている「オハイオ州コロンバス」など、4つの投資エリアに注目して不動産を提案しています。

また、海外不動産を購入する際に最もハードルになりやすい言語の面でも、すべて日本語で対応してもらうことが可能で、交渉や賃貸管理などは現地のグループ企業(エージェント)が担当しています。そのため、国内にいながらアメリカ不動産を購入・運用・売却までできるというのが大きな特徴となっています。

2 アメリカの銀行口座を作る

アメリカで不動産投資を始める前に、家賃収入を振り込んでもらう銀行口座を作っておく必要があります。日本円に換える場合、為替相場をチェックして有利な時に交換することができるからです。あるいは購入時のエスクローで残金があった場合には、そのお金を振り込んでもらう口座が必要になります。

口座開設手続きは、例えば三菱UFJ銀行に口座を持っている場合、傘下となるアメリカの「ユニオン・バンク」だとネット上から口座を開設できるため便利です。

なおアメリカの銀行口座を開設した直後は、不動産を購入するためのローンを借りられない点に要注意です。アメリカでローンを申し込むためには、クレジットカードの利用履歴である「クレジット・ヒストリー」を積み重ねる必要があります。

またクレジット・ヒストリーの期間の長さに応じて金利が変わります。ヒストリー期間が長いほど金利は低くなり、頭金も少なく済むようになるなど、クレジット・ヒストリーによって借入条件が変化することに留意しましょう。

3 ローンの事前承認を取り付ける

アメリカの銀行口座を開設した後は、物件探しをする前に住宅ローンの「事前承認」を取り付けておきましょう。「事前承認手続き」とは金融機関がいくら融資してくれるのかを記載したレポートのことで「Pre-Approval Letter」と呼ばれています。

なお、エージェントは「Pre-Approval Letter」を発行してくれる銀行探しも手伝ってくれます。「Pre-Approval Letter」を入手しておくことで売主との交渉も有利に進みます。購入希望者が売主に対してオファー出した際、売主は銀行が融資をしてくれる証となる「Pre-Approval Letter」がある希望者と交渉するからです。

購入オファーには購入希望金額や物件の劣化具合などを調査するインスペクション(住宅検査)の期限日数、住宅ローンの融資を取り付けるまでの期間などの情報を細かく記載します。取り付けるまでの期日が守れない場合、オファーは他の人に流れてしまい、購入できなくなるため注意しましょう。

また「Pre-Approval Letter」を取得しておけばすぐに融資を申し込むことができます。売主に購入代金を振り込む期間はそれほど長く確保できないため、早めに取得するのが望ましくなります。

なお、こういった銀行での手続きが不安・面倒だという方は、国内でアメリカ不動産投資のローンを借りることも可能です。たとえば、先ほどエージェントの項目でも取り上げたオープンハウスは、グループ会社のアイビーネットが融資面をバックアップすることで、国内にいながら融資を活用してアメリカでの不動産投資をスタートすることが可能となっています。

アイビーネット社の融資プラン「プラチナモーゲージ70」を利用すれば、購入するアメリカ不動産を担保として、物件金額の最大70%相当まで融資を受けることが可能です。(※年収や年齢、資産状況などにより融資条件は異なります)

4 アメリカの物件を探す

エージェントを決めてアメリカで銀行口座を開設し、ローンの事前承認も得られれば物件選びに移ります。

4-1 アメリカ不動産はMLSで探す

アメリカの不動産はMLS(Multiple Listing System)という不動産情報システムで探すのが一般的です。日本のレインズに当たる物件情報システムですが、圧倒的に情報量が多く、情報が更新される頻度が高いなどの点が大きく異なります。売買履歴、税金履歴、修繕履歴など非常に細かな条件を入れて検索することもできます。

ただしMLSを閲覧できるのは地域の不動産業者に限られます。エージェントを上手に活用し、自分が希望する条件を設定してもらいましょう。

その他、個人がアメリカの物件情報を探す方法としてはRedfinZillowなどのアメリカ不動産賃ポータルサイトなどでも売物件を探すことが可能です。ただし、2022年2月時点では賃貸関連の情報が掲載されておらず、エリアや物件ごとの想定賃料などは確認できません。例えば、不動産会社から案内された物件の想定利回りを検証するなどの利用には適してないと言えるでしょう。

4-2 アメリカ不動産は「学区」がポイント

検索条件の中で欠かせないのが「学区」の設定です。日本の不動産は駅に近いものほど価値が高くなりますが、アメリカの場合は学区によって不動産価値が上下します。

アメリカは日本以上の車社会です。駅に近くなるほどに資産価値が高くなるわけではありません。逆に、公共機関を使わなければならない所得の低い人が駅近に多く住むという現象もあります。そのためMLSでは不動産価値の高い「学区」で検索することが重要です。

ただし、日本の駅近物件のように、評価の高い学区では家賃収入に対して物件価格が高くなり、表面利回りが低下してしまうというデメリットがあります。学区選びの際は、利回りと学区評価のバランスを取った投資戦略も重要なポイントです。

なお、アメリカで購入できる不動産には一戸建てやコンドミニアム、コープとよばれるアパートがあります。ただしコープは購入手順が複雑で、所有してから数年間は自分で住まなければなりません。そのため購入対象になるのは一戸建てかコンドミニアムになります。

5 オファー(買付申し込み)を入れる

気になる物件が見つかれば、売主に対して「オファー」(購入申し込み)を入れます。売主はオファーを受け付け始めてから1週間ほどで申し込みを終了します。気に入った物件が見つかった場合は早めにオファーを入れておくのがポイントです。

オファーには購入希望金額や引き渡しの希望日、さらに現金での購入か住宅ローンを利用するかなど細かな条件を記載します。売主は記載内容を比較して条件が良い購入希望者と交渉することになります。

購入希望者は他人のオファーを確認することはできないため、エージェントの経験が役立ちます。対象となる物件の魅力に応じてどのような条件を出せばオファーが通りやすいかを提案してくれます。優秀なエージェントを雇うことで、売主との交渉権を得る可能性が高まります。

また売主のエージェントからオファーに対して条件交渉をしてくることがあります。希望金額やその他の条件は申し分ないものの、気になる条件があれば融通してくれるかどうかを打診してきます。売主からのオファーに応えるのもエージェントの仕事です。これをカウンター・オファーと呼びます。

現地情報に疎い外国人はカウンター・オファーの内容で足元を見られることがあります。特に英語が苦手な日本人は相場よりも安い金額を提示されることもあるため、周辺相場に詳しいエージェントに対応してもらう必要があります。

6 エスクローをオープンする

売主にオファーが通り、エージェント同士の交渉がまとまれば弁護士を介した売買契約に移ります。

アメリカ不動産の売買契約ではお互いの弁護士を通して行うのが一般的です。契約書の作成やチェックも弁護士が行います。アメリカは契約を重視する国であるため、買主に不利な内容の記載が含まれていないかなど細かく確認することが大切です。

売買契約書の作成後は、購入金額のうち手付金をエスクロー口座(第三者の決済機関)に入金します。入金や契約書へのサインなどの作業は日本から行うことができますが、エスクロー入金までにアメリカの銀行口座を開設しておく必要があります。またエスクローの金額は概算になるため、お金が残ればアメリカの銀行口座に返金されます。

7 ホームインスペクターに物件の調査を依頼する

エスクローがオープンしたら迅速に物件調査をします。物件調査はホームインスペクター(住宅診断士)に依頼して対象の物件を細かくチェックしてもらいます。ホームインスペクターは物件に欠陥がないかどうか、どのような修理が必要なのかを調査し、劣化具合やメンテナンスの必要性をレポートにまとめます。

購入希望者は調査レポートをもとに売主に修理を依頼することになります。修理はどこまで対応するのかなど売主と交渉することになりますが、お互いが同意できなければ売買契約をキャンセルすることもできます。

8 ローン審査を受ける

銀行に売買契約書を提出するとローン審査が始まります。「Pre-Approval Letter」の事前承認を確保していればすぐに融資が下りるため、エスクロー口座に直接振り込んでもらいます。

なお、クレジットカードの支払いを滞納したり、車など大きな買い物をしたりすると、返済能力の評価が下がり審査が通らないことがあるため注意しましょう。

アメリカの銀行でローンを組む場合、ローン書類へのサインは公証人の前で行う必要があります。公証役場は東京・横浜・大阪、あるいはアメリカ大使館や領事館にあり、公証担当官の立ち合いのもとでサインすることになります。

売買契約書が作成されたら買主が先にサインをします。日本にいても電子サインをすることができます。現地でサインをする場合は、弁護士に権限を委任することで代行してサインをしてくれます。

9 クロージング(不動産の所有権譲渡)する

不動産の所有権譲渡をエスクロー・クロージングと呼びます。購入代金を支払うことで所有権が移転しますが、同時に固定資産税の月割り金額や税金、登録手数料なども一緒に支払います。全ての手続きが完了すれば、エスクロー会社が登記日に購入代金を売主へ振り込んでくれます。

なお住宅ローンの申請をしている場合、審査が通るまで30〜45日程度かかります。エスクローはその分遅くなるため、オファーでは住宅ローンを利用するよりも現金で購入する方が売主に好まれます。

10 不動産の賃貸管理を行うPM会社を探す

物件を購入した後は、賃借人を見つけなければなりません。賃借人を探したり管理をしたりするのはPM(Property Management)会社です。PM会社もエージェントに紹介してもらうことができます。

10-1 PM会社との連絡は不動産エージェントを通す

なおPM会社と連絡を取り合う際は、常にエージェントを介すことになります。買主はエージェントと管理委託契約を結び、エージェントはPM会社と管理に関する再委任契約を結ぶという形です。

日本とアメリカでは時差があるため、直接PM会社に問い合わせするのが難しくなります。まずはエージェントに必要な要件を伝え、PM会社に伝言してもらい、各種対応してもらうことになります。

さらに賃貸収入に対する税金を支払うために、ITIN(個人納税者番号)も取得しておきましょう。ITIN番号があれば確定申告ができるうえ、減価償却費などを経費計上できます。一方、ITIN番号がない場合は賃貸収入の30%を源泉徴収されます。ITIN番号の取得方法もエージェントに相談すればアドバイスしてくれます。

まとめ

アメリカは日本の不動産購入と比べて厳密なシステムが出来上がっています。また、エージェント探しやエスクロー決済など、日本にはない商習慣があるため、事前に購入までのプロセスをきちんと押さえておくことが必要です。

アメリカ不動産の契約においては、日本よりも買主が不利になるリスクが少ないのはメリットですが、サインする書類が非常に多くなります。日本に居ながら書類サインする場合には不備がないようにエージェントを通じて十分に確認しておきましょう。

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