国際民間航空、50年CO2排出実質ゼロへ。国連の専門機関で目標採択

国連の専門機関、国際民間航空機関(ICAO)は10月7日、2050年までに国際線が排出する二酸化炭素(CO2)を実質ゼロにする、気候変動に係る国際航空分野の長期目標(LTAG)を採択したと発表した(*1)。CO2多排出産業である航空業界の脱炭素化に向けた取り組みを加速させる。

ICAOのサルバトーレ・シャキターノ理事長は「航空輸送の脱炭素化に向けた新しい長期目標を各国が採択したことは、エミッションフリー航空機を実現するために、今後数十年にわたって加速しなければならない技術革新を後押しするものだ」と強調した(*1)。ファン・カルロス・サラザール事務局長は「地球と航空輸送システムの持続可能性にとって、非常に重要な外交的進展だ」と述べている(*1)。

新たに採択された目標では、CORSIA制度(#1)のもとで、23年までは19年の排出量を上限とし、24年以降は上限を19年比で85%に引き下げる努力目標となる。85%を上限とする目標は27年以降に原則義務化する方針だ。脱炭素化に向けた取り組みが遅れる航空会社は、CO2排出権の購入費用などの負担増が避けられない見込みである。

国際エネルギー機関(IEA)によると、21年の世界の航空業界によるCO2排出量は7億1,000万トンと、運輸業界全体の9%を占める(*2)。世界全体の排出量(363億トン)では2%を占める(*3)。

LTAGの達成には、革新的な航空機技術の導入加速、運航方法の改善、植物や廃油などを使った持続可能な航空燃料(SAF)の生産・利用拡大など、多様なCO2排出削減策が求められる。

航空業界はCO2の排出削減が困難な産業(hard-to-abate産業)である。50年の実質ゼロを目指すうえで、CO2削減効果の大きいSAFの利用が注目されている。しかしながら、世界のSAF供給量はジェット燃料供給量のわずか0.03%しかなく、更なる生産・利用拡大が急務となっている状況だ(*4)。

SAFの利用は欧米が先行する。英石油大手シェル(ティッカーシンボル:SHEL)と独ルフトハンザ航空(LHA)は、24年から7年間にわたり最大180万トンのSAFの供給に向けて覚書を締結した(*5)。航空業界およびシェルにとって最大規模のSAF供給契約になる。

(#1)CORISA制度…国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム。

【参照記事】*1 国際民間航空機関「States adopt net-zero 2050 global aspirational goal for international flight operations
【参照記事】*2 国際エネルギー機関「Transport – Topics
【参照記事】*3 国際エネルギー機関「Aviation – Analysis
【参照記事】*4 航空輸送アクショングループ「Waypoint 2050 : Aviation: Benefits Beyond Borders
【関連記事】*5 英シェルと独ルフトハンザ航空 最大180万tの持続可能な航空燃料供給に向けて覚書締結

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