変額保険と投資信託のメリット・デメリットを比較、使い分けのケースも

変額保険は投資と保障を兼ねた保険商品ですが、運用は投資信託によって行います。そのため、運用目的で変額保険を利用する場合、投資信託そのものと比較してメリット・デメリットをよく考えることが大切です。

この記事では変額保険と投資信託のそれぞれの特徴とメリット・デメリットを解説し、自分に合った運用の選択肢と使い分けを解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年11月22日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 変額保険とは?
    1-1.変額保険のメリット
    1-2.変額保険のデメリット
  2. 投資信託とは?
    2-1.投資信託のメリット
    2-2.投資信託のデメリット
  3. 変額保険と投資信託を比較
    3-1.死亡保障の有無は?
    3-2.いくらから始められるか?
    3-3.コストはどれくらいかかる?
    3-4.積立金の移転(スイッチング)
    3-5.商品の選択肢
    3-6.拠出時の税制
    3-7.受取時の税制
  4. 変額保険と投資信託の使い分けは?
    4-1.変額保険を活用するケース
    4-2.投資信託を活用するケース
  5. まとめ

1.変額保険とは?

変額保険とは契約者が払い込んだ保険料を特別勘定という投資信託で運用し、運用成果に応じて死亡保険金や満期保険金、解約返戻金が増減する投資型の保険です。運用は契約者自らが投資信託を選ぶ商品もあれば、保険会社が行う商品もあります。

変額保険の運用成果はすべて契約者が負い、マイナスの場合でも元本保証はありません。ただし、死亡保険金には最低保証があり、運用がプラスであれば増額分が反映され、マイナスであっても基本の保険金額を受け取れます。

1-1.変額保険のメリット

「保険機能のある投資信託」ともいえる変額保険には、以下のようなメリットがあります。

投資と保障を兼ねられる

投資信託を積み立てて資産形成をしている途中で本人が死亡してしまった場合、以降の運用はできなくなります。しかし、変額保険であれば運用ができなくなっても死亡保険金を受け取れます。将来準備したかった資金を死亡保険金でまかなえるのです。

生命保険料控除が利用できる

変額保険は保険商品であるため、投資信託とは税制が異なります。支払った保険料は、生命保険料控除の適用対象となります。

積立金の移転(スイッチング)ができる

投資信託の運用を契約者が行う変額保険の場合、毎月の保険料で購入する投資信託(特別勘定)の変更が可能です。それだけでなく、既に買い付けた投資信託を別の投資信託に変更する、積立金の移転(スイッチング)も可能です。

積立金の移転は保険会社ごとにルールがあり、多くの場合、年に12回まで無料で行えるようになっています。積立金の移転により変額保険ではポートフォリオのリバランスができるため、長期の分散投資がしやすい点はメリットです。

1-2.変額保険のデメリット

変額保険には投資信託にはない保険機能がありますが、知っておくべきデメリットもあります。

投資信託に比べて運用益が出るのに時間がかかる

変額保険は、同じファンドで運用していても、投資信託の単独運用とは運用成績が変わります。変額保険の運用成績には保障のコストが反映されるため、運用でプラスであっても運用益が出るのには時間がかかります。

健康状態によっては加入できない

変額保険は保険商品であり、保険会社は保険金支払いのリスクを負うため、加入時に告知や診査があります。よって、健康状態によっては加入できない可能性がある点に注意が必要です。

年齢が高くなると投資効率が悪化する

変額保険では被保険者の年齢が上がると死亡リスクが高くなるため、保険のコストも高くなります。保険のコストが高くなると支払った保険料から特別勘定に回す分が減るため、投資効率が悪化します。年齢の高い人にとって変額保険は、資産形成に向かない方法です。

投資信託よりコストが割高

変額保険では投資対象である投資信託そのものの運用コストに加え、保険のコストがかかります。そのため、投資信託単独で運用する場合よりも余分にコストを負担することになるのです。

加入してすぐに解約するとお金がほとんど戻らない

投資信託を購入してすぐに売却すると、売却時の基準価額相当が受け取れます。しかし、変額保険は加入してすぐに解約すると保険料相当分はほとんど戻らない点に注意しましょう。

2.投資信託とは?

投資信託は分散投資のための運用商品で、投資家から集めたお金を株式や債券などで運用し、運用成果を還元する仕組みです。

2-1.投資信託のメリット

投資信託には以下のようなさまざまなメリットがあります。

少額から始められる

投資信託の最低投資金額は取り扱う金融機関によって異なりますが、100円から購入できる証券会社があります。そのため、運用のリスクに慣れない初心者でも少額から始められるのです。

NISAやiDeCoを活用できる

投資信託はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の対象です。そのため、NISAの非課税投資やiDeCoの税制優遇のメリットを享受できます。NISAやiDeCoを利用しない場合は運用益に対して20.315%の税金がかかります。

選択肢が多く、自分に合う商品が選べる

変額保険の投資信託は商品ごとに10種類程度の選択肢しかありませんが、日本で販売されている公募投資信託は約6,000本です。多い金融機関では2,000本以上の投資信託を取り扱い、自分のリスク許容度や投資スタイルに合った商品を選択できます。

好きなときに換金できる

投資信託はiDeCoのように換金が制限される制度もありますが、通常は都合のよいタイミングで売却して現金化できます。

2-2.投資信託のデメリット

投資信託には元本保証でないなどの注意点はあります。しかし、変額保険と比較した場合は保険機能がない程度しかデメリットがありません。

3.変額保険と投資信託を比較

変額保険と投資信託にはどのような違いがあるでしょうか。2つを比較してみましょう。

項目 変額保険 投資信託
死亡保障 あり なし
最低費用 最低保険金額による(数千円から) 100円から
コスト 投資信託の運用手数料
保険料
投資信託の運用手数料
積立金の移転(スイッチング) 可能 可能(つみたてNISAは不可)
選択肢 商品ごとに準備された10種類程度の投資信託から選択 金融機関ごとに取り扱う中から(多くて2,000本以上)選択
拠出時の税制 生命保険料控除 iDeCoは掛金全額所得控除
受取時の税制 解約返戻金:所得税(一時所得)
死亡保険金・満期保険金:契約形態による
通常は分配金・売却益ともに20.315%の所得税・住民税
NISA・つみたてNISAは非課税
iDeCoは所得控除の対象

3-1.死亡保障の有無は?

変額保険と投資信託の最大の違いは死亡保障の有無です。運用と保険を一本化したい人には変額保険は合理的ですが、保険機能を必要としない人は投資信託を活用したほうがよいでしょう。また、死亡保障が必要な場合、別途必要な期間だけ定期保険などに加入することも可能です。

3-2.いくらから始められるか?

変額保険の保険料は同じ保険金額でも年齢や性別によって異なります。年齢が高いほど保険料も上がり、投資効率が悪化します。よって、変額保険による資産形成は30代くらいから始めるのが理想的です。

一方、投資信託はネット証券などでは100円から始められるので、誰でも無理のない範囲で取り組めます。

3-3.コストはどれくらいかかる?

変額保険の投資信託も投資信託単体で運用する場合も、投資信託にかかる手数料を負担しなければなりません。さらに変額保険には保障のコストがかかるため、運用効率だけで比較した場合、投資信託に劣ります。

運用目的で変額保険を活用する場合、コストパフォーマンスを投資信託とよく比較してみましょう。

3-4.積立金の移転(スイッチング)

投資信託を活用して分散投資をする場合、基本のポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)を定期的にリバランスするのが理想とされています。リバランスとは値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買い増して資産の比率を当初と同じに修正することです。

変額保険と投資信託のリバランス

変額保険には積立金の移転(スイッチング)という仕組みがあり、すでに買い付けたファンドを別のファンドと入れ替えることが可能です。

投資信託を直接売買する場合やiDeCoで運用する場合は、リバランスは随時可能です。しかし、つみたてNISAではリバランスができません。また、一般NISAではリバランスは可能ですが非課税枠を消費するため、不利です。

3-5.商品の選択肢

変額保険の特別勘定(投資信託)は1商品あたり多くて10本程度から選びます。ラインアップは商品ごとに異なり、信託報酬の高いアクティブファンド中心の変額保険もあれば、インデックスファンド中心の変額保険もあります。

運用商品の選択は成果に大きくかかわるため、自分に合う運用ができそうな商品を選びましょう。

一方、投資信託そのものの選択肢は多い金融機関では2,000本以上と、自分の運用方針に合う商品が選択できます。

3-6.拠出時の税制

変額保険の保険料は、有期型・終身・変額年金などの種類を問わず一般生命保険料控除の対象となります。「すでに他の保険で一般生命保険料控除額を使い切っていた」のようなケースでは変額保険による税効果は期待できません。

投資信託を購入しても税制上のメリットはありませんが、iDeCoの掛金を支払うと全額が所得控除の対象になります。

3-7.受取時の税制

変額保険、投資信託をそれぞれ現金化する場合にかかる税金を確認しておきましょう。

変額保険の受け取りにかかる税金

変額保険の解約返戻金を受け取った場合は一時所得となり、所得税・住民税がかかります。満期保険金・死亡保険金にかかる税金は以下のとおりです。

【変額保険の満期保険金にかかる税金】

契約形態 税金の種類
契約者=受取人 所得税(一時所得)
契約者≠受取人 贈与税

【変額保険の死亡保険金にかかる税金】

契約形態 税金の種類
契約者=受取人 所得税(一時所得)
契約者≠被保険≠者受取人 贈与税
契約者=被保険≠者受取人 相続税

投資信託の受取にかかる税金

通常の投資信託の売却には、売却益に対して20.315%の税金がかかります。NISA制度では運用益に対しては税金がかかりません。iDeCoの場合、60歳以降に一括または分割(年金)で受け取りますが、いずれの場合も所得控除の対象となります。

4.変額保険と投資信託の使い分けは?

変額保険と投資信託はそれぞれの特徴を理解して使い分ける必要があります。

4-1.変額保険を活用するケース

変額保険には投資信託単体にはない保険機能があり、その機能を活かしたいときには選択肢となります。

死亡保障と教育資金の準備を兼ねる

教育資金準備というと、かつては学資保険が第一の選択肢でした。しかし、長引く低金利で円建ての学資保険は運用難に陥り、長く預けてもお金がほとんど増えなかったり、元本割れしたりするようになりました。

そこで、保険機能と貯蓄性を備えた商品として、変額保険が注目されるようになったのです。変額保険の死亡保険金は最低保証があるため、被保険者(保護者)が死亡しても保険金によって学資を準備できます。

現金化する時期に被保険者が生存していれば、運用成果に応じた解約返戻金や満期保険金を受け取れます。

相続対策

一般的に変額終身保険の保険料は、同じ保険金額の円建ての終身保険より低めです。そのため、死亡保険金に最低保証のある変額保険は、相続対策としての活用にメリットがあります。

相続対策の場合、死亡保険金として受け取ることが前提となるので特別勘定の運用成績がマイナスでも問題ありません。

4-2.投資信託を活用するケース

資産形成で変額保険より投資信託が向いているケースも見ていきましょう。

独身者などの資産運用

変額保険に加入する場合、必ず死亡保険金の受取人を指定しなければなりません。独身者などで保険金を残したい人がいない、そもそも保険の必要性が薄い人には変額保険は適していません。投資信託で資産運用をしたほうが合理的です。

持病があって保険に入れない場合

変額保険に加入するには告知や診査が必要なため、持病のある人などは加入できない可能性があります。保険が必要な人が保険に入れないケースでも、投資信託で保険金に相当する資産を積み上げていくことは可能です。

iDeCo・つみたてNISAで老後資金準備

老後資金準備では、税制優遇のあるiDeCoやつみたてNISAの利用が有利です。変額保険に比べて保障のコストがかからず税の優遇がある分、効率的に資産形成ができます。

教育資金準備

教育資金準備も投資信託の積立やつみたてNISAで行うことができます。保護者の死亡保障は必要な期間だけ、掛け捨ての定期保険などで準備すれば余分なコストもかかりません。

余裕資金の運用

まとまった余裕資金を運用で増やしたい人は、変額保険より投資信託の利用が適しています。投資信託単体なら選択肢も多く、保険のコストもかからないからです。

まとめ

変額保険は投資信託単体にはない死亡保障があり、合理的だと感じる人も多いでしょう。加入を検討する場合、設計書の試算で運用利率に対する解約返戻金の返戻率を確認しましょう。

運用がプラスでも返戻率がなかなかプラスにならない場合、保険のコストが高すぎると考えられます。その場合、投資信託単体の運用と比較してみましょう。

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