「アートの民主化」を実現!NFTキュレーションプロトコルが変えるアートキュレーション
今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の中村翔太 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- 現代のキュレーション
- NFTキュレーションプロトコル
2-1. JPG
2-2. Deca
2-3. Garally - まとめ:ブロックチェーン技術が現代美術へもたらすもの
現代における、アートのキュレーションの役割や定義は1つではなく、非常に曖昧なものとなっています。それがNFTの領域となるとさらに曖昧で未定義な状態です。今回は現代のアートキュレーションを概観しながら、既存のNFTキュレーションプロトコルを例にしながらアートのキュレーションがどのように変わるのかを考察します。
現代のキュレーション
まず、現代のアートのキュレーションについて概観します。1990年代半ば以降にキュレーションは創造的な活動とみなされるようになり、アーティストとキュレーターの間には以前よりも重なる部分が増え、同じような活動に従事することが多くなっています。キュレーターは、ますます異なるフォーマット、異なるアートの体験方法、異なる意味の創造を試みる作家として認識され、アーティストと同様に、新しい形式を発明し提供しています。
例として、5年に一度、ドイツのカッセル市全域で催される「Documenta」と呼ばれる現代アートの展覧会では、選考委員から芸術監督に選ばれた1人が指揮を取り、監督が他のキュレーターを選び、最終的にドクメンタのキュレーションをサポートするチームが作られる流れとなっています。
2012年にキュレーターの1人として参加したCarolyn Christov-Bakargiev氏は、街中に広がる展示やアクティビティの中心に位置する「The Brain」という小さな部屋を作り、キュレーションを担当しました。そこでは、著名なアーティストのスター作品ではなく、化石、図面、建築設計図、アーティストのスタジオにある小さなオブジェ、カンボジアの爆撃機のクレーターやヒトラーの地下壕で入浴するリー・ミラーの写真、さらには日曜画家の小作品などが展示されました。この斬新なキュレーターとしてのスタンスは、来場者に街全体から、何を探すべきかという感覚を与え、広大な展示の中の、残りの部分を独自の視点で探索し、Documentaの残りの部分に新しい思考回路と解釈を呼び起こすことになりました。
このように、キュレーターは、来場者がアートを理解するために、情報、関連性、そして対比性を提供しています。
NFTキュレーションプロトコル
現代のアートキュレーションの状況をみてきましたが、ブロックチェーンとNFTの登場によって、デジタルデータやアセットなどをアカウントベースで直接所有することが可能となりました。それにより、NFTアートなどの分野が成長し、アーティストがNFTを制作してコレクターがそれを購入する、エコシステムが誕生しました。
さらには、単なる経済活動に止まることなく、NFTアートへの学術的な意味を見出し、アーティストとコレクターに加え、才能を開発・育成し、コレクターが次の作品を見つけ、コレクションに加えるためのガイドを行うキュレーターが加わったものとして、NFTキュレーションプロトコルが見受けられるようになりました。以下ではその例を紹介します。
JPG
JPGは、「web3の文化財のためのコア・インフラを構築する」というテーマを掲げ、誰もが参加可能で、NFTの所有に関係なくNFTアート作品の展示ギャラリーを作成可能なオープンギャラリーエコシステムを提供するプロトコルとなっています。このプロトコルのプレイヤーはコレクター・キュレーター・クリエイターの3者で構成されており、キュレーターは、重要な作品にスポットライトを当て、関係する意味を持たせることで知識を共有し、同時に仕事の記録を確立することができます。それにより、JPGのユーザーは、コンテキスト、焦点を絞った視聴体験、新しい補完的な意味を通じて、NFTに注目と価値をもたらすことができます。
今までの展覧会やギャラリーとの違いや特徴は、作品とデータの発見しやすさ・展覧会の来歴・評判とコミュニティの測定が挙げられ、特に展覧会の来歴は、NFTのキュレーターによる出所記録を提供し、長期的な文化的価値を促進するという点が画期的と言えるでしょう。
Deca
Decaは、NFTギャラリーを作成・共有し、他のユーザーをフォローすることができるジェネレーティブNFTアート・プラットフォームを提供しており、ギャラリーの作成は、作品集を素早く簡単に見せるためのシンプルなギャラリーを作成する方法とユーザーがカスタム背景やテキストを追加して独自の方法でストーリーを伝えることができるフリースタイルの2つを選択することが可能となっております。また、自分が所有していないNFTでギャラリーを作ることもでき、NFTの下には現在所持しているウォレットが表示されます。これによって、このプラットフォームのユーザーは、どんなアイデアでも視覚化することが可能です。
Decaは、「デジタルオブジェクトに命を吹き込む強力なインフラストラクチャ」というテーマのもと、巨大なデジタル経済を統合する商取引のツールを構築や、異なるブロックチェーンの世界をひとつに束ねる「マルチチェーン」を目指しています。Decaは、無料で利用することが可能となっており、CC0がクリプトのための正しいライセンスモデルであるという信念のもと、Decaのシンボルであるデカールと、DecagonというメンバーシップトークンががCC0で公開されました。
Garally
Garallyは、「作品を通して自分自身を表現し、他のコレクターとつながる力を与える」をミッションに掲げ、お気に入りのNFTの閲覧、キュレーション、共有、発見することを可能とするプラットフォームを提供しています。
また、運営チームは「NFTは、インターネット上で人間関係を構築するための最も強力なツールの1つである」、「NFTはアイデンティティを構築するためのブロックである」という2つの基本的な信念に基づき開発運営を行っているとしており、何千人ものユーザーがギャラリーを作成し、デジタルオブジェクトを通して自分自身を表現したり分散型ウェブ上でアイデンティティを共有する方法を構築することに成功したとしています。
Garallyの機能の一つであるSocial Feedは、人、コレクション、コミュニティの架け橋となる最初のステップとして機能し、気になる人をフォローすると、フィードに最新情報が表示され、他の人やその活動と常に繋がりを持つことができます。この機能のユニークな点は、ユーザーが作品をキュレーションしたり、新しいコレクションを組み立てたりする行動を起こしたときにのみ、更新が表面化される点で、ミント、購入、売却されたすべてのNFTを表示する生のブロックチェーンイベントインデクサーとは異なり、より意味のある行動とその周辺のコンテキストへの洞察を得ることができる設計となっています。
まとめ:ブロックチェーン技術が現代美術へもたらすもの
従来のキュレーションは、現代美術作品に新たな付加価値を独自の世界観で設計し、作品の持つ情報を来場者へ体験を通して伝えるというものでした。それは、極めて高い専門性が要求され、取り扱う作品について深く理解する必要があり、美術品の管理人と称されるにふさわしい役職でした。
ブロックチェーンとNFTの登場により、現代美術の範囲はより一層デジタルの空間とも関わりが強くなり、デジタルの美術作品にアイデンティティをもたらしました。さらに、上述したプロトコルなどのように、誰もがキュレーターとして、アーティストや美術作品の価値を高め、広めることへ貢献できるというプロトコルの登場により「アートの民主化」に大きく貢献していると考えられます。
【参照記事】Documenta
【参照記事】Sotheby’s
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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