ルイヴィトン、アフリカでリジェネラティブ・アグロフォレストリーを推進
仏高級アパレルブランドLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(ティッカーシンボル:MC)は2022年11月7日、循環型共生経済の可視化や啓蒙活動を行うサーキュラー・バイオエコノミー・アライアンス(CBA)と提携し、アフリカでリジェネラティブ・アグロフォレストリー(再生型の森林農業)を推進する新たなプロジェクトを開始すると発表した(*1)。
CBAはイギリス国王チャールズ3世が「プリンス・オブ・ウェールズ(皇太子)」であった2020年に設立した。「緑の万里の長城(Great Green Wall)」プロジェクトの一環として、リジェネラティブ・アグロフォレストリー・システムを通じ、アフリカで持続可能な綿花栽培を推進する。
LVMHはCBAとの提携を通じ、LVMHの環境戦略「LIFE360」の推進およびリジェネラティブ農業に関するコミットメントの強化を図る。プロジェクトは地元政府と研究機関に加え、国際救済委員会(IRC)、レインフォレスト・アクション、欧州森林機構(EFI)といった様々な業界プレーヤーと協働する。
アフリカのチャド湖は1963年から2001年の間に90%の面積を失い、このままでは約20年で消失する可能性がある。そこで、チャドにあるCBAのリビングラボ(#1)は、持続可能で環境再生型の綿花栽培方法の研究に加え、生物多様性の回復、持続可能な綿花栽培のバリューチェーンに加わる地元民の経済的機会の創出に向けた取り組みを推進する。LVMHがそれらの活動をサポートすることにより、リビングラボはリジェネラティブ・アグロフォレストリーや土地の再生に注力し、綿花農家500人と協働して綿花農場近くにフルーツの苗木や材木用樹木を植えられるようになる見通しだ。
多様な樹木を綿花農場に植えることで土壌の肥沃度や水質を保てるほか、生物多様性の向上、地元農家の収入拡大にも繋がる。たとえば、マンゴーなどのフルーツの木であれば、農家自身が食すこともできるし、地元の市場で販売することも可能だ。また、植物は窒素固定により土壌の肥沃度を保ち、家畜の飼料にもなる。高木は蒸発散量を減らし、必要な水量の削減につなげられる。
CBAのリビングラボは高品質の植物原料の生成に向けたコミュニティの形成に加え、植え付け・収穫機の利用や収穫物の貯蔵、持続可能な灌漑技術の導入などもサポートする。さらに、既存の綿花バリューチェーンの強化や、キャッサバ、とうもろこし、胡椒などの穀物市場の形成を目指す。
LVMH環境部門ディレクターを務めるヘレン・ヴァラド氏は「LIFE360を通じ、当社は生物多様性の保全と気候変動への取り組みにコミットする。また、すべての戦略的サプライチェーンにおいてリジェネラティブ農業を実施し、30年までに500万ヘクタールの土地を保全する」と述べた(*1)。
アフリカは気候変動の影響に最も脆弱な地域のひとつとされる。気候変動にともなう食糧の安定生産・供給、農家の収入確保などのリスクも高まっている状況だ。そのようななか、LVMHのほかにも多くのグローバル企業がアフリカ向けの支援策を講じている。たとえば、英蒸留酒大手ディアジオ(DGE)は8月、45万ポンド(約7,400億円)を投じ、アフリカの小規模農家向けの気候変動緩和・モニタリング技術を有する企業に投資するファンドを立ちあげた(*2)。水・炭素・生物多様性の課題解決を目指す。
(#1)リビングラボ…「Living(生活空間)」と「Lab(実験場所)」を組み合わせた言葉。研究開発の場を人々の生活空間の近くに置き、生活者視点に立った新しいサービスや商品を生み出す場所、もしくはサービスや商品を生み出す一連の活動。
【参照記事】*1 LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン「CBA and LVMH announce major new project – The Circular Bioeconomy Alliance」
【参照記事】*2 ディアジオ「Diageo launches innovation fund to help mitigate climate change in smallholder farms in Africa」
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