NFTとは違う「半代替性トークン(SFT)」とは?その仕組みと用途
今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
Semi-Fungible Token(SFT)とは、ERC20トークンに代表されるFungible Token(FT) とERC-721を主とするNon-Fungible Token(NFT)の双方の性質も持つトークン規格です。SFTは、「半代替性トークン」とも訳され、その規格にはERC1155とERC3525があります。
ERC1155と比較し、ERC3525は聞き馴染みのない方も多いかと思いますが、こちらは2022年9月にDeFiプロジェクトのSolv Financeが債券やデリバティブといった金融商品をより柔軟に表現するために提案した新しいトークン規格になります。
本記事では、そんなNFTとFTの特性を組み合わせたSFT、特にERC3525を中心にその概要や具体的な仕組み等を実際のプロジェクトを例に理解を深めていきたいと思います。
マルチトークン規格ERC1155とは
ここからは、まずERC1155の仕組みや特性について解説し、ERC3525の概要やその差分の理解に繋げていきたいと思います。
はじめに、これまでのERC20やERC721といった標準的なFT、NFTの規格は、1つのトークンの作成と管理にしか対応していませんでした。したがって複数のトークン規格をサポートするスマートコントラクトを作成することは、事実上不可能でした。
上記の課題を解決するために、2017年にはEnjin、The Sandbox、Horizon GamesによってERC1155が提案されました。その後 ERC1155の開発と承認により、例えばブロックチェーンゲームにおいては、複数のアイテムやトークンを作成プロセスが簡略化することに繋がりました。加えてユーザー側の恩恵として、複数の相手に複数のトークンを送るといったより複雑な処理も容易に実行することができるようになります。
具体的な例としてユーザーがブロックチェーンゲームをプレイする際に、複数のアイテムを転送したいとします。これらのアイテムがNFTとして扱われている場合、一つ一つのトークンを個別に送らなければなりません。これはERC20に関しても同様で、例えばETHとDAIを別のMetamaskウォレットに転送する際に、一気に送ることが出来ない点からも自明です。しかしながらERC20トークンに限らず、ブロックチェーンゲームともなれば、一括でトークンを転送したい場面などは日常茶飯事で、ともすればトークンの数だけガス代がかかってしまい、ユーザー体験として良いものではありません。
一方ERC1155では同じコントラクトから複数のトークンを発行することによって、それら複数のトークンを1つのグループとして送ることができます。したがってトークンを送るために必要となる手順を大幅に削減することができます。ERC1155の規格が使われているNFTはEtherscanなどを通じて確認することができますが、その代表例にThe sandboxが手掛けるSandbox’s ASSETsは上記の規格が用いられています。この他にもERC1155は、主にゲーム内トークンやメタバース上のアイテムとしてそのユースケースを確立しています。
セミファンジブルトークン(半代替性トークン)規格ERC3525とは
さて、ERC1155の概要を確認したところで、SFTのもう一つの規格というべきERC3525について深掘りたいと思います。
冒頭でも紹介した通りERC3525は昨年の9月に正式承認されたばかりの非常に新しいトークン規格です。ERC3525とERC1155を比較しながら詳しい説明を加えると、ERC3525は「ID」「VALUE」「SLOT」という3つの要素で構成されているのに対し、ERC1155には「ID」と「VALUE」の2つの構成要素しかありません。
IDというのはNFTの標準規格ERC721でもお馴染みの、トークンが唯一無二であることを示す識別子です。VALUEというのはFTの標準規格ERC20で見慣れた、トークンの持つ価値や数量などを示したものです。SLOTは、トークンの属性を示しており、トークン同士がそれぞれ同じSLOTを共有していれば代替可能となります。暗号資産で例えれば、BTCとETHの属性が違うことは自明なことでしょうし、ゲームアイテムなら武器と防具は異なる属性といえるしょう。したがって異なるSLOTの間でVALUEを移転したり分割したり統合したりすることはできず、エラーが発生してしまいます。以上がERC3525を構成する要素の解説になります。
SFTにはERC1155とERC3525が存在するわけですが、その比較としてERC3525は汎用性が高いといえるでしょう。というのも先程解説した通り、ERC3525においてはSLOTという要素によって、同種のトークンであったとしても異なるVALUEを設定することが出来ます。例えばERC3525による武器アイテムを想定した場合、攻撃力の異なる武器をSLOTさえ同じであれば一つのコントラクトで表現できます。
ERC3525を活用したプロジェクト「Solv Protocol」
先程の解説では、主にERC3525の構成要素について深堀りを行いました。ここからは、ERC3525を提案、開発したSolv Protocolを例に実際のユースケースとERC3525の振る舞いを理解したいと思います。
Solv Protocolは、SFTを利用し金融商品、特に債券を発行、取引できるマーケットプレイスで、EthereumやBinance Smart Chainなど4つのチェーンにおいて展開されています。Solv Protocolでは、主に「Bond Voucher」「Convertible Voucher」「Vesting Voucher」という3種類の債券SFTを発行することができます。
まずBond Voucherは、マーケットメーカー、VC、アセットマネジメント会社といった金融機関に加え、DAOなどが資金調達を行う際に、SFTを活用して発行する債券トークンです。Bond Voucherは割引債と同じ仕組みで、発行時にはそれぞれ、満期日や額面が設定され、額面に対して割引価格で発行されます。その後満期になり、償還されれば額面金額の100%を手に入れることができます。
Convertible VoucherはBond Voucherと基本的には同様の仕組みですが、その名の通り転換社債と同じように機能します。つまり原資産の市場価格が満期時に転換価格以上であれば、Voucherを一定額のプロジェクトの独自トークンに転換することができます。
最後にVesting Voucher とは、将来にトークンを受け取ることができる権利のことを指します。というのも現状プロジェクトの独自トークンは、一定期間のロックがかかった状態で分配されます。これはトークン上場の際の価格崩壊を防ぐ働きとして機能しますが、このVesting Voucherでは、諸々のVesting条件を組み込んだ権利としてSFTを活用し販売されます。
以上、Solv Protocolにおける3種類のVoucherについて解説しましたが、上記の商品はトークンであるため、投資家は購入も売却することができます。また、より柔軟な金融商品の設計と取引によって、透明性を保ちながらも効率的なデットファイナンス市場が実現されうるでしょう。
まとめ
今回はFTとNFT双方の特性をもつSFTについてその概要やユースケースを解説しました。2023年はWeb3、ブロックチェーン業界においてRWA(リアルワールドアセット)領域のプロジェクトに注目、資金の流入が起きると期待されています。その際に従来の金融商品を柔軟に表現できる規格が導入されることは、Web3特にDeFi業界全体にとっても非常に重要な要素でしょう。またBCG、GameFiの分野においては、これまで以上に複雑で高度なゲームが展開されると予想されます。その際に例えば同種のトークンを一括して取り扱うことやより多様な表現を設定することができるようになるのは、ユーザー体験を格段に向上させるでしょう。SFTの今後の動向にも目が離せません。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
The post NFTとは違う「半代替性トークン(SFT)」とは?その仕組みと用途 first appeared on 金融・投資メディアHEDGE GUIDE.
Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
NFTとは違う「半代替性トークン(SFT)」とは?その仕組みと用途