太陽光発電のCO2排出削減量はどれくらい?投資のメリット・デメリットや注意点も
地球温暖化への対策が世界的な課題となっている中、脱酸素社会の実現に向けて、太陽光発電に代表される再生可能エネルギーへの転換について検討されている方もいるでしょう。
しかし、太陽光発電に換えた場合、実際にどの程度のCO2排出量が削減されるのか、またその効果があるのかどうかに疑問を持っている方も少なくありません。環境負荷に対する効果が分からないと、投資判断に悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、太陽光発電を用いた場合のCO2排出削減量について解説していきます。また太陽光発電投資について、メリット・デメリット、注意点についても紹介していきます。
目次
- 太陽光発電に換えた場合のCO2排出削減量
- 太陽光発電投資のメリット
2-1.不労所得が得られる
2-2.比較的簡単に管理ができる
2-3.税負担を軽減することができる
2-4.出口戦略が複数考えられる
2-5.社会貢献ができる - 太陽光発電投資のデメリット
3-1.天候によって発電量が左右される
3-2.災害リスクがある
3-3.発電量を制限される可能性もある
3-4.想定外の費用がかかることもある
3-5.設備の製造・破棄時にCO2が排出される - まとめ
1 太陽光発電に換えた場合のCO2排出削減量
「国立研究開発法人産業技術総合研究所」の研究結果を参考に、化石燃料と太陽光発電のCO2排出量の比較を見て行きましょう。
発電方法 | 温室効果ガス排出量(1kWhあたり) |
---|---|
化石燃料を使用した火力発電 | 690g |
太陽光発電 | 17〜48g |
※参照:国立研究開発法人産業技術総合研究所「温室効果ガス排出量の削減」より抜粋
火力発電から太陽光発電に換えた場合、この研究結果をもとにすると1kWhあたり約650gのCO2排出量が削減されることになります。1kWの太陽光発電システムの年間発電量は約1,000kWhとされるため、削減されるCO2排出量は下記の計算式で求められます。
650g×1,000kWh=650kg
つまり年間650kg前後のCO2を削減することができるということになります。例えば、発電量が50kwの太陽光発電システムを設置する場合、年間32,500kgのCO2を削減することができます。電気による1世帯の平均CO2排出量は環境省のホームページ「家庭部門のCO2排出実態統計調査」によると1.80トンとなっており、概ね18世帯が排出するCO2をすべて削減できるようになるということなのです。
太陽光発電によって削減できるCO2の排出量について把握できたところで、次の項目から、太陽光発電を用いて行う投資のメリットとデメリットについて解説していきます。
2 太陽光発電投資のメリット
太陽光発電を用いて投資を行う場合、下記のようなメリットがあります。
- 売電収入を得ることができる
- 比較的簡単に管理ができる
- 税負担を軽減することができる
- 出口戦略が複数考えられる
- 社会貢献ができる
上記の5つのメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 売電収入を得ることができる
太陽光発電投資のビジネスモデルは、発電した電力を電力会社に買取してもらい収入を得ることです。買取基準価格はFIT制度(固定価格買取制度)のもとで設定されており、稼働を開始した年からFIT適用期間中(10年間および20年間)は同じ価格で売電することができます。
1kWhあたりの買取価格は2023年度に開始した場合、下記の通りになっています。
発電量 | 1kWhあたりの買取価格 | 買取期間 |
---|---|---|
10kWh 未満 | 16円 | 10年間 |
10kWh以上〜50kWh未満 | 10円 | 20年間 |
50kWh以上 | 9.5円 | 20年間 |
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「FIT・FIP制度」より抜粋
2-2 比較的簡単に管理ができる
太陽光発電は年に数回程度の清掃や定期点検で管理することが可能です。また、固定買取制度によって経営上の手間が少ないという点もメリットです。
例えば、不動産を賃貸に出す不動産投資の場合、入居者を確保したり、建物の状態を把握する必要があります。これらの作業の大部分は管理会社に管理を委託することが可能ですが、家賃の設定や売却時期などの重要な経営判断はオーナーが行う必要があります。
太陽光発電投資は、発電したエネルギーを固定買取制度によって売却するシンプルなスキームになっているため、このような経営判断を行うポイントが少なく、運営の手間が非常に少ないという点も特徴的と言えるでしょう。
2-3 太陽光発電の設備は減価償却できる
太陽光発電設備は償却資産となるため、毎年減価償却費として経費計上ができます。太陽光発電設備は法定耐用年数が17年ですので、設備投資として1,000万円の費用がかかった場合、単純計算になりますが、毎年約60万円を減価償却費として計上することができます。
※参照:国税庁「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」
また太陽光発電は、下記の表のように規模によって売電方法が異なります。
太陽光発電の区分 | 売電方法 |
---|---|
住宅用太陽光発電(〜10kWh未満) | 余剰売電 |
産業用太陽光発電(10kWh以上〜50kWh未満) | 余剰売電 |
産業用太陽光発電(50kWh以上〜250kWh未満) | 全量売電 |
例えば余剰売電の場合、下記のような税制優遇制度の対象になる可能性があります。
- 中小企業経営強化税制…設備取得額の即時償却、または10%(7%)の税額控除ができる
- 生産性向上特別措置法…固定資産税の課税標準が3年間ゼロから1/2の間に軽減される
これらの税制優遇制度が適用になると、税負担をさらに軽減することができます。
2-4 出口戦略が複数考えられる
太陽光発電投資は、FIT制度の適用期間が10年間および20年間となっていることから、その後にどのような戦略を立てるのかも重要です。具体的に下記のような方法が考えられます。
- FIT適用期間中に太陽光発電設備を売却する
- FIT適用期間終了後も新電力会社などに売電する
- 太陽光発電設備を撤去し、土地を売却する
- 設備撤去後の土地を活用して駐車場にする
- 設備撤去後に賃貸用のアパートを建てる、など
太陽光発電設備の法定耐用年数は17年ですが、寿命自体はもっと長く30年前後は稼働すると考えられます。そのためFIT適用期間終了後も、太陽光発電設備を中古として売却することができ、設備撤去後の土地を活用することでさまざまな事業を行える可能性があります。
2-5 社会貢献ができる
前述したように、使用する電気を化石燃料由来から再生可能エネルギーに換えると、CO2の排出量を削減することができます。
産業革命以降、化石燃料の消費が増えることで大気中のCO2濃度も上昇しており、これが地球温暖化の大きな要因になっています。そのため太陽光発電による投資を行うことで、CO2の削減に貢献することができ、結果として地球温暖化抑制にもつなげることができるのです。
オーナーとして利益を得るのに加えて、社会貢献ができるというのがこの太陽光発電投資の側面の一つでもあります。
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3 太陽光発電投資のデメリット
一方、太陽光発電投資には、下記のようなデメリットやリスクがあります。
- 天候によって発電量が左右される
- 災害リスクがある
- 発電量を制限される可能性がある
- 想定外の費用がかかることもある
- 設備の製造・破棄時にCO2が排出される
注意点とともに、それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 天候によって発電量が左右される
太陽光発電は、太陽光パネルで受けた太陽光によって発電する仕組みとなっているため、天候の影響を受けやすい事業です。晴れの日であれば発電量は100%が見込めますが、雨であれば10%〜20%前後、曇りでは40%〜80%前後と考えられます。
特に梅雨や台風が続くシーズンであれば、発電量が極端に少なくなってしまい、収益に大きな影響が出ることが懸念されます。
3-2 災害リスクがある
太陽光発電は、太陽光を受けて発電するため、屋外での設置が必須です。そのため台風や大雨時には、太陽光発電設備が浸水被害を受けることがあります。また地震の場合は、架台が倒れて太陽光パネルが破損したりするケースもあります。
対策として、エリアのハザードマップで想定される災害を的確に把握しておくようにしましょう。また、資産を損失しないために損害保険に加入することも検討しておきましょう。
3-3 発電量を制限される可能性もある
電気には需要と供給があり、十分に電力が作れていても、電力会社が買取しないケースがあります。それが出力制御です。出力制御が行われると売電収益が得られないことになるため、注意する必要があります。
出力制御には、需給バランスを起因とするものを含めて下記の2つがあります。
- 需給バランス制約による出力制御…電気が需要以上に発電され、余った場合に発生
- 系統容量による出力制御…送電線や変圧器の上限量の電気を接続した場合に発生
出力制御は、北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力で行えることになっています。各電力会社のサイトでは、出力制限の見通しや実績などを公表しています。太陽光発電投資を検討される場合は、エリア内でどの程度の出力制御が実施されているのか確認されると良いでしょう。
3-4 想定外の費用がかかることもある
比較的簡単な管理で運営ができる太陽光発電ですが、想定外の費用が必要になることもあります。
例えば、雑草対策です。敷地内の雑草が伸びてしまい太陽光パネルを覆うことで発電量が減少してしまい、敷地内の雑草の手入れに費用が発生する可能性があります。その他、鳥獣被害なども考えられ、想定外の費用がかかることもあるので注意が必要です。
また、運営途中だけでなく、初期投資の段階でも大きな費用を必要とします。設備を導入する際の費用としては、下記のような費用がかかることがあります。
- 電力負担金…電力を送る送電網と太陽光発電をつなぐための費用
- 農地転用費用…土地が農地の場合、農地転用のための費用
- 採石・伐採費用…敷地内に岩や木の根などが埋まっている場合の撤去費用
設備を導入する際には設備費や土地代のほか、このような費用がかかることもあるので留意しておきましょう。
また、大規模な資金投入が難しい場合には太陽光関連のファンドへ投資する方法もあります。比較的に少額資金で投資することが可能で、上場ファンドであれば売却も容易なため、実物を購入する場合と比べて気軽に投資を検討することが可能です。
【関連記事】太陽光発電投資ファンドに投資する方法は?メリット・デメリットも
3-5 設備の製造・破棄時にCO2が排出される
太陽光発電を行うには太陽光パネルなどの設備が必要で、これらが寿命を迎えた際には廃棄する必要があります。産業廃棄物として処分しなければならないため、廃棄費用の捻出まで見据えた運用が必須なのです。
また中古品やリユース品としての市場がそれほど大きくないことも課題となっており、太陽光パネルの廃棄が増えるとCO2排出が増えるといったことも懸念されています。
一方、廃棄時のほか、太陽光パネルを製造する際にもCO2を排出することが問題になっています。製造時のCO2排出量が相殺されるまでの時間をエネルギーペイバックタイム(EPT)と言いますが、通常の設備であれば2年程度かかるとされます。いずれは相殺されますが、それでも製造時から一定期間はCO2を多く排出することになってしまうのです。
このような環境側面から見たデメリットについては、リサイクル効率を上げたりなどの対策が急務であるとして、環境省では「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」を作成し、リユース・リサイクル・埋没処分の体制構築に努めています。今後の技術革新も含めた課題解決が期待されています。
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まとめ
今回のコラムでは、太陽光発電投資のメリットとデメリットを紹介しました。FIT制度による買取価格が年々低下していますが、買取期間終了後も売電ができる可能性があり、長期間にわたって運用することができます。
太陽光発電投資は、景気に左右されない投資をしたい、管理を手軽に行いたいなどといった意向を持った方に適した投資対象と言えます。脱炭素化が全世界的な課題となっており、電気料金が高騰する中、社会への貢献ができる投資の方法として検討されてみるのも良いでしょう。
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