ヒューリックのESG・サステナビリティの取組実績と今後の方針は?株主優待や配当推移も
ヒューリック株式会社(3003)は、東京都心を中心に不動産賃貸事業を手がける不動産会社で、銀行店舗ビルをはじめ、オフィスビル、商業施設、ホテル・旅館、高齢者施設など幅広く展開し、高齢者施設の保有数では国内トップクラスです。また、CO2排出量ネットゼロに向けた日本初となるサステナビリティ・リンク・ボンドを発行したことでも知られています。
この記事では、ヒューリックのESG・サステナビリティの取り組みや実績を紹介していきます。なお、株価動向や株主優待、配当情報なども解説しているので、ESG投資に興味のある方は、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
本記事は2023年3月14日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- ヒューリックの特徴
- ヒューリックのESG・サステナビリティの取り組み
2-1.環境への取り組み
2-2.社会への取り組み
2-3.コーポレート・ガバナンスへの取り組み
2-4.ヒューリックのESG・サステナビリティに関する外部評価 - ヒューリックの業績・株価動向
- ヒューリックの株主優待・配当推移
- まとめ
1 ヒューリックの特徴
ヒューリックは、銀行店舗ビルの管理を起源に持つ不動産会社です。東京23区を中心とした好立地の物件を多数保有し、都心・駅近・低い空室率を強みとしています。
物件の大規模リニューアルやビルの建替などで、資産価値の最大化と収益力の向上を図っているほか、保有する既存ビルには、新耐震基準(※震度6強、7程度の地震でも倒壊しない水準)を上回る耐震補強が施されており、安心・安全なビルを提供しています。
ヒューリックの注力事業には、高齢者・健康関連ビジネス、観光ビジネス、環境ビジネスからなる「3Kビジネス」があります。高齢者・健康関連ビジネスでは、高齢者施設や病院開発、会員制ラウンジの「ヒューリックプレミアムクラブ日本橋」をはじめとするアクティブシニア層向け事業を展開しています。
観光ビジネスでは、外国人観光客やシニア層の需要に合わせた自社ブランドホテル「ザ・ゲートホテル」シリーズや、高級温泉旅館「ふふ」シリーズの開発・運営を行い、環境ビジネスでは、太陽光発電所や小水力発電所、環境に配慮した耐火木造建築ビルの開発に取り組んでいます。
今後は、共働き世代の増加や子育て支援策に伴う教育費の増加を背景に、新たに「教育事業」を加えることが検討されています。
2 ヒューリックのESG・サステナビリティの取り組み
ヒューリックでは、環境・社会・ガバナンスを意識した事業運営により、脱炭素社会・循環型社会の実現や働きやすい環境づくりの推進、社会貢献活動、スポーツ・芸術・文化支援などを行っています。
それでは以下でヒューリックのESG・サステナビリティの取り組みを詳しく見ていきましょう。
2-1 環境への取り組み
ヒューリックの環境への取り組みは、大きく分けて3つあります。1つ目は、「全保有物件の使用電力の100%再生可能エネルギー化」です。ヒューリックは、2030年までに全保有物件に自社の再エネ電源から電力を賄うことを目指しており、すでにヒューリック本社ビルやグループ企業入居ビルでは、再エネ電力の供給を開始しています。
使用する再エネ電力は、主に自社で開発・保有する太陽光発電設備からの供給になりますが、太陽光発電は天候に左右されやすいほか、夜間に発電されないため、不足が生じた際に自社で開発・保有する小水力発電設備で補う方針です。
2つ目は、「建物の長寿命化」です。ヒューリックは、2011年に「ヒューリック長寿命化建物ガイドライン」を策定しており、それ以降の竣工・着工した全ての物件において、長寿命化設計を標準仕様として、100年以上安全に使い続けられるグレードを確保しています。
従来の仕様では、40年毎に建替えを行う必要があり、建替工事に伴う廃棄物発生量や資源投入量が課題となっていましたが、長寿命化建物仕様の場合、従来の仕様と比べ廃棄物発生量と資源投入量を各50%以上削減する効果がある上、ライフサイクルのCO2を6%削減することができます。
3つ目は、「建物の木造・木質化」です。ヒューリックは、製造・加工に要するエネルギー・CO2排出量が少ない木材を利用した耐火木造建築の開発を行っています。実際、注力エリアである銀座において、日本初の耐火木造12階建商業施設の「HULIC&New GINZA 8」が2021年10月に竣工しています。
また、木材として伐採時期を迎えた木は、CO2を吸収する能力が低下しているため、建物の木材の使用量と同等の植木活動を行うなど森の循環を推進することで、CO2削減に貢献しています。
2-2 社会への取り組み
ヒューリックの社会への取り組みは、大きく分けて4つあります。1つ目は、「安全性・環境性・利便性に優れた建物の提供」です。入居者が安心して社会活動を行えるよう、震度7クラスの地震が発生しても、補修により継続して建物を使用することが可能なレベルの社内耐震基準を定めており、開発・建替を行うすべての建物に適用しています。
行政が発行する液状化マップに該当する位置にある保有物件に関しては、すべて敷地の地盤に応じた適切な建設基礎計画により液状化対策が施されているほか、水害対策においても、水害による電力設備等が損傷した場合に備え、保有ビルの現状調査、必要な浸水対策を実施しています。
また、健康的で快適な物件を提供するための取り組みとして、動力を使用することなく効率的に太陽光を取り入れることのできる自然採光システムや、機械空調に頼らず自然の換気だけで空調することのできる自然換気システムの導入を進めています。
2つ目は、「取引先との連携」です。取引先とは、緊密なコミュニケーションを図り、相互に企業価値を高め合える関係構築に努めています。管理会社とは、緊急時における連絡網が整備されており、被害状況の迅速な確認が可能になっているほか、ビル施工会社とは、有事協定を締結することで、災害時には迅速な復旧対応が可能になります。
3つ目は、「働きやすい職場環境づくり」です。ヒューリックでは、育児特別休業、短時間勤務制度、在宅勤務制度、保育所利用補助金制度、仕事と介護の両立支援制度など、従業員とその家族を支える様々な制度が用意されており、働きやすく能力が十分に発揮できる職場環境が用意されています。
また、ヒューリック本社ビル内に、事業所内保育園「大伝馬ふれあい保育園」を開設しており、子育てをする従業員をはじめ、近隣住民の子供にも一部開放しています。
4つ目は、「社会貢献活動」です。環境保護や社会福祉への支援・寄付をはじめ、「ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦」の主催や「ヒューリック杯棋聖戦」への特別協賛等の文化・芸術支援、「日本パラバドミントン連盟」の選手専用の練習用体育館の無償貸与を行うなど、スポーツ支援にも力を入れています。
また、学生が都市や建築について提案しやすい環境を作るため、「ヒューリック学生アイデアコンペ」を開催するなど、学術・研究分野の支援にも積極的に取り組んでいます。
2-3 コーポレート・ガバナンスへの取り組み
ヒューリックのコーポレート・ガバナンスでは、取締役を中心に「内部統制」「リスク管理」「コンプライアンス」「開示統制」が十分に機能した自律的統治システムを堅持し、企業価値向上・社会的存在意義を高めることを基本的な考え方としています。
「取締役会」を頂点として、その下にオペレーショナルリスクを管理する「リスク管理委員会」、市場・流動性・信用リスクを管理する「資金ALM委員会」、気候変動に関する事項を監督する「サステナビリティ委員会」があり、取締役会および各委員会を「監査役会」と「監査部」が監査する管理体制が整備されています。
ガバナンス強化の取り組みでは、腐敗防止を目的とした通報制度「コンプライアンス・ホットライン」の設置や、災害等の緊急事態に備えたBCP「事業継続計画」の策定、また、投資家の投資判断に影響を与える重要な会社情報に関しては、迅速・正確かつ公平な開示に取り組んでいます。
2-4 ヒューリックのESG・サステナビリティに関する外部評価
ヒューリックのESG・サステナビリティの取り組みは、外部から高い評価を受けています。以下では、同社が構成銘柄として選定されているESG指数と受賞実績などの一部を紹介していきます。
ESG指数/受賞実績 | 概要 |
---|---|
FTSE4Good Index Series | FTSE Russell社が提供するESGについて優れた対応を行っている企業を選定するESG指数 |
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 | MSCI社が提供するESG評価に優れた日本企業を選別して構成しているESG指数 |
S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数 | S&Pダウ・ジョーンズ社と日本証券取引所グループが共同で開発した環境情報の開示、炭素効率性の水準により、構成銘柄のウエイトを決定するESG指数 |
日経「SDGs経営」調査で星4を獲得 | 日本経済新聞社が提供する「SDGs戦略・経済価値」「社会価値」「環境価値」「ガバナンス」の4分野に関する質問で構成される調査 |
DBJ Green Building認証の取得 | 日本政策投資銀行がビルの環境性に加え、防犯・防災、使用者の快適性・利便性、ステークホルダーとの協働などを総合評価する認証制度 |
GRESB調査において「3スター」・「Green Star」評価を取得 | ESG評価機関GRESBが提供する不動産セクターのサステナビリティ・パフォーマンスを測るベンチマーク |
3 ヒューリックの業績・株価動向
ヒューリック(3003)は不動産セクターに該当する銘柄なので、業績が景気や物価の影響を受けやすく、住宅需要を左右する金利動向にも注意を払うことが大切です。
2020年度は、コロナ禍の影響により、ホテルや飲食ビルの業績が低迷しましたが、主力であるオフィス賃貸は堅調で、「Go To トラベル」の効果により高級旅館も好調だった結果、純利益は前期比8.1%増の最高益を更新しています。一方、株価は2020年3月の急落から戻しきれず、1年を通じて-13.9%で終えています。
2021年度は、緊急事態宣言の発令などを受けて、ホテル事業が低迷したものの、オフィス賃貸収入は底堅く、投資用物件の売却も利益を押し上げる形となりました。この結果、純利益は前期比9.3%増の最高益を更新しています。株価は2021年8月までは順調に推移していたものの、9月に失速し、1年を通じて-3.6%で終えています。
2022年度は、昨年に続きホテル事業が低迷しているものの、堅調なオフィス賃貸や投資用物件の売却が順調に進んだことにより、純利益は前期比13.8%増の過去最高を更新しています。株価は長らく横ばいが続いていましたが、年末に急落し、1年を通じて-4.7%で終えています。
2023年度は、オフィス賃貸や投資用物件の売却益に加えて、不振だったホテル事業の回復が見込まれているとから、10期連続の最高益が予想されています。
また、業績が好調であったにも関わらず、株価が割安な理由は、2021年に発表した公募増資の影響や、世界的な金利上昇などマクロ要因が背景にあると考えられます。2023年3月14日時点の株価は1,074円台で推移しています。
4 ヒューリックの株主優待・配当推移
ヒューリックでは、ヒューリック株式会社(3003)の株式を300株以上保有している株主に対して、年1回の株主優待を実施しています。優待内容の詳細は以下の通りです。
保有枚数 | 保有年数 | 優待内容 |
---|---|---|
300株以上 | 3年未満 | 3,000円相当のグルメカタログギフト |
3年以上継続保有 | 3,000円相当のグルメカタログギフト2点(6,000円相当) |
また、ヒューリックの株主になると優待に加えて、配当を受けられるメリットもあります。ヒューリックの配当推移は以下の通りです。
項目 | 1株当たり配当金(円) | 配当金総額(年間) | 配当性向 | 純資産配当率 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第1四半期末 | 第2四半期末 | 第3四半期末 | 期末 | 年間 | (百万円) | (%) | (%) | |
2018年12月期 | – | 11.50 | – | 14.00 | 25.5 | 16876 | 33.9 | 4.3 |
2019年12月期 | – | 14.00 | – | 17.50 | 31.5 | 21037 | 35.4 | 4.8 |
2020年12月期 | – | 17.50 | – | 18.50 | 36 | 24215 | 37.8 | 5 |
2021年12月期 | – | 19.00 | – | 20.00 | 39 | 28113 | 38.5 | 4.9 |
2022年12月期 | – | 20.00 | – | 22.00 | 42 | 32199 | 40.3 | 4.8 |
2023年12月期は、引き続き堅調な業績が予想されており、前期比4円増の46円になる見通しです。
まとめ
ヒューリックは、環境・社会課題に対応した「3Kビジネス」など、サステナビリティを重視した環境経営を実施しており、日本初となる「耐火木造12階建商業施設」の開発や全保有物件の100%再エネ化を進めるなど、スピード感のある先進的な取り組みを行っています。また、業績においても、好立地に所有する不動産を背景に、増益・増配を継続していいます。
ただし、投資にはリスクも伴うので、リスクを十分に理解した上で、慎重に検討ください。
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