明治HDのESG・サステナビリティの取組実績と今後の方針は?株主優待や配当推移も

明治HDは「明治ミルクチョコレート」などでお馴染みの大手食料品メーカーです。ESGやサステナビリティに関する課題に対して、食料品メーカーという立場から人や社会、環境に配慮したエシカル消費を積極的に推進しており、その取組実績は外部機関からも高く評価されています。

この記事では、明治HDの特徴、ESG・サステナビリティの取組実績と今後の方針、業績・株価動向、株主優待・配当推移について詳しくご紹介します。ESG投資などにご興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年3月16日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 明治HDの特徴
  2. 明治HDのESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.エシカル消費の促進
    2-2.その他の取組実績と今後の方針
    2-3.明治HDのESG・サステナビリティに関する外部評価
  3. 明治HDの業績・株価動向
    3-1.過去5期の業績
    3-2.過去5年間の株価動向
  4. 明治HDの株主優待・配当推移
    4-1.株主優待
    4-2.配当推移
  5. まとめ

1 明治HDの特徴

明治ホールディングス株式会社(2269)は、東証プライム市場に上場している企業です。売上高では1兆円を超えるため、食料品業界でも国内有数の大企業ですが、もともとは1916年に設立された東京菓子株式会社という小さな菓子メーカーが発祥となっています。

当時、戦前の国際情勢の変化によって洋菓子の輸入が中止されていましたが、輸入に頼らず高品質で栄養価の高いお菓子を提供することが設立目的でした。その後、会社の新設や合併などを経て、チョコレートやアイスクリームなどを扱う明治製菓株式会社および、牛乳やヨーグルトなどを扱う明治乳業株式会社が誕生し、2009年4月1日に両社は共同持株会社を設立する形で経営統合した会社が現在の明治HDです。

明治グループは、100年近くロングセラーとなっている「明治ミルクチョコレート」をはじめ、「明治ブルガリアヨーグルト」など数々のヒット商品を生み出しています。国内のシェアはチョコレート24.8%、ヨーグルト38.6%と食品部門でトップクラスです(2021年度)。

明治HDの食品事業は売上高の約8割を占めていますが、残りの2割は医薬品の開発や販売などを行う医薬品事業を営んでいます。統合前の明治製菓では戦後から抗菌薬の「ペニシリン」などを販売しており、同社の2022年の統合報告書によれば、インフルエンザワクチンの国内シェア35.5%とトップです(2021年度)。

最近は、持株会社体制の下で発足したMeiji Seikaファルマ株式会社が抗菌剤やワクチン、うつ病など医薬品の開発・供給も行っています。

以上のように、国内では菓子メーカーとして地位を確立しているものの、海外売上比率は1割弱と低く、売上比率の低い海外食品事業の拡大などは今後の成長に向けた課題となっています。

2 明治HDのESG・サステナビリティの取り組み

明治HDはESGやサステナビリティに対する様々な取り組みを実践している企業です。こちらでは、大手食品メーカーならではの目線で実施しているエシカル消費の推進、具体的な取組実績や今後の方針についてご紹介します。

2-1 エシカル消費の促進

明治HDは、サステナブルな社会を実現するためエシカル消費(倫理的消費)を推進しています。エシカル消費とは、地域の活性化や雇用なども含む人や社会、環境に配慮した消費行動を指す言葉で、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)では「持続可能な生産・消費形態の確保」として目標に掲げられている項目です。

明治HDは、買い物の基準に味や値段以外の判断要素として人や社会、環境を思う商品選びを加えることで生活者と共にサステナブルな社会の実現を目指しており、社会や環境などに優しい製品作りを進めています。

代表的な事例はチョコレートの原料を作るカカオ農場での取り組みです。ガーナなど西アフリカで問題となっている児童労働や強制労働撲滅のためのNPOに日本企業として初参加し、活動中です。

また、カカオ農家を支援する「メイジ・カカオ・サポート」を通じ、井戸の寄贈や苗木の配布、営農指導なども行っています。カカオ農家を収益面や生産面でサポートすることによって持続可能なカカオの調達に向けて取り組むと共に、カカオを使用した「明治ミルクチョコレート」などをエシカル消費の選択肢として製造・販売しています。

この他にも、環境負荷低減の農場で生産した「オーガニック牛乳」や再生資源などを使用したFSC認証紙でなどでパッケージを作った「きのこの山」、プラスチックごみ削減のためにラベルレスにした「明治プロビオヨーグルトR-1ドリンク(6本入り)」など多くのエシカル消費の選択肢となる製品を製造・販売しています。

2-2 その他の取組実績と今後の方針

明治HDは上記の他にも様々なESG課題に対して積極的な取り組みを行っている企業です。こちらでは、同社の環境、社会、ガバナンスにおける主な取組実績と今後の方針などをご紹介します。

明治HDは環境問題についてグループ全体で長期ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」を定め、2050年までにカーボンニュートラルの達成などパリ協定の努力目標にチャレンジする姿勢を明確に示しています。脱炭素社会や水資源、生物多様性などの分野で取り組みを進めており、主な取組実績と今後の目標は以下の通りです。

分野 主な取組実績 今後の目標
脱炭素社会 ・省エネ製造設備の導入
・車両積載率工場や他メーカーとの共同配送などで配送車の生産性向上
・太陽光発電など再生可能エネルギー設備の導入
・2050年までにカーボンニュートラルの達成
・2050年までに自社拠点における再生利用可能エネルギー使用比率100%
水資源 ・節水に配慮した製造設備の導入
・法令より厳しい自主基準を設けることで排水による水質汚濁防止に努める
・2050年までに自社拠点での売上高原単位あたりの水使用量の半減など
生物多様性 生産拠点における生物多様性保全活動の実施など ・2023年までに生物多様性保全活動の実施率100%など

社会に対する課題についても「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」で掲げられた「豊かな社会づくり」などのテーマに沿って取り組みを進めており、主な取組内容や今後の目標は以下の通りです。

分野 主な取組実績 今後の目標
女性の活躍推進 ・2017年度に2.6%だった女性管理職比率を2021年度までに4.7%へ拡大など ・女性管理職比率を2026年度までに10%など
健康な食生活への貢献と超高齢社会への対応 ・健康志向商品、付加価値型栄養商品などの売上伸長に関する試み ・2023年度までに関連商品の売上を2020年度比で10%以上増加
医薬品の安定供給 ・感染症に造詣が深い5学会の選定した安定供給が不可欠な薬剤(Key drug)のシェアを拡大 ・2021年度に30%ほどの国内シェアを2023年度までに50%まで拡大
人権の尊重 ・国内外グループの従業員に対する人権教育の実施など ・2023年度までに全従業員に対する年1回以上の人権教育を実施

また、コーポレートガバナンス体制の充実などにも努めており、コーポレートガバナンス方針を定めた上で2009年度には2名だった独立社外取締役を2022年度には4名まで増員するなど、取締役会の実効性や検証性を高めるための取り組みが実践されています。

また、災害等のリスクに対しては事業継続計画(BCP)を強化し、食と健康にかかわる企業グループとして早期の事業復旧と必要な医薬品・食料品の供給ができるよう設備の耐震強化や生産拠点の複数化にも取り組んでいます。

2-3 明治HDのESG・サステナビリティに関する外部評価

明治HDのESGやサステナビリティに対する取り組みは、社外からも高く評価されています。例えば、ESG投資の重要指標となる以下のESG指数に採用されており、中には190兆円もの金額を運用する世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が投資判断の基準として採用している指数などもあります。

指数算定会社 指数
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(米国) Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index
S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数
FTSE Russell(英国) FTSE Blossom Japan Sector Relative Index
MSCI(米国) MSCI ESG Leaders Indexes
MSCI ジャパン ESG セレクトリーダーズ指数
SOMPOリスクマネジメント(日本) SOMPOサステナビリティ・インデックス

このほか、明治HDはESG投資において世界的に影響力が大きい英国の国際環境NGO「CDP」から気候変動と水セキュリティの部門で最高評価の「A」を獲得しています。

オランダの非政府組織「ATNF」が栄養に関するグローバルな取り組みなどを評価する「Access to Nutrition Index」においても世界的な大企業を含む25社の中から12位にランクインしています。

日本でも従業員の健康などに配慮した企業を選出する経済産業省の健康経営優良法人認定制度において、大規模法人の中から上位500社が認定される「ホワイト500」に6年連続で認定されるなど、国内でも高い評価を受けています。

3 明治HDの業績・株価動向

ここからは、最近の明治HDの業績と株価動向についてご紹介します。

3-1 過去5期の業績

以下の表は過去5期分の明治HDの売上高と営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益(グループ企業の親会社持ち分利益などを加算した利益)をまとめたものです。

(単位:百万円)

決算期 2018年3月 2019年3月 2020年3月 2021年3月 2022年3月
売上高 1,240,860 1,254,380 1,252,706 1,191,765 1,013,092
営業利益 94,673 98,383 102,710 106,061 92,922
当期利益 61,278 61,868 67,318 65,655 87,497

2018年3月期~2021年3月期は売上高が1兆2千億円前後で推移していましたが、2022年3月期は大きく落ち込んでいます。これは2021年4月から適用した新しい収益認識基準を適用したことが原因で、表示上は約1,800億円の売上高減ですが、その影響を除いた実質的な売上高は食品事業が横ばいで医薬品事業は増収となっています。

営業利益は過去5期を通じ1千億円前後で推移していますが、2022年3月期は食品事業の原材料価格が上昇したことなどを受けて前期比減益です。

当期純利益についても過去5期は600億円超の水準をキープしており、2022年3月期は関係会社株式や投資有価証券の売却などがあったため、前期から大幅増の870億円となっています。

2023年3月期は売上高1兆580億円、営業利益775億円、当期利益620億円の増収減益見込みとなっており、前期に引き続き原材料価格高騰の影響などを受ける可能性があります。

3-2 過去5年間の株価動向

続いて、明治HDの株価動向です。以下の表は同社の過去5年間の株価推移を四半期ごとの終値ベースでまとめたものです。

項目 期末(3月末) 6月末 9月末 12月末
2018年 8,100円 9,340円 7,630円 8,960円
2019年 8,990円 7,700円 7,880円 7,380円
2020年 7,680円 8,580円 8,040円 7,260円
2021年 7,120円 6,650円 7,210円 6,860円
2022年 6,610円 6,660円 6,430円 6,740円

明治HDの株価は2012年の年末まで2千円を下回る水準でしたが、2016年にかけて1万円超まで急上昇し、2015年10月1日には1株を2株にする株式分割を実施しました。その後は上表の通り一進一退を繰り返しながら緩やかに下落する展開です。

2018年6月末に9,340円だった株価は、2022年9月末に6,430円まで下落しており、急上昇の調整に加えて最近は業績の伸び悩みなどもあって下落傾向が続いています。

今後は、2023年3月31日を基準日に1株を2株にする株式分割の実施が予定されており、更なる流動性の高まりなどを期待する声もありますが、当面はコスト高などの影響を受けている業績とのにらみ合いが続く可能性もあります。

なお、2024年3月期までに配当金などの株主還元を強化するとの発表もあったため、今後は以下の配当推移などにも注目しながら株価動向を見ていく必要があります。

4 明治HDの株主優待・配当推移

最後に明治HDの株主優待や配当推移についても確認しておきましょう。

4-1 株主優待

明治HDでは、毎年3月31日時点で100株以上保有している株主を対象に株主優待を実施しており、優待品としてグループ製品の詰合せを贈呈しています。

現行(2023年3月31日まで) 所有株式数 100株以上 500株以上 1,000株以上
優待品 2,000円相当 3,500円相当 5,000円相当
株式分割後(2024年3月31日以降) 所有株式数 100株以上 200株以上 500株以上
優待品 1,500円相当 2,500円相当 5,500円相当

2023年3月31日時点の株主に対しては、100株以上の保有で同社のチョコレートやスナック菓子などの詰合せ2,000円相当が贈呈され、500株以上で3,500円相当、1,000株以上で5,000円相当と、保有株式数に応じて詰合せの内容が異なります。

なお、明治HDは2023年3月31日を基準日に株式分割を発表しており、これに合わせて優待内容の変更も発表されています。株式分割後は100株(現50株)で1,500円相当、200株(現100株)で2,500円相当、500株以上で5,500円相当となっています。

4-2 配当推移

以下の表は明治HDの過去5期分の配当状況をまとめたものです。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2018年3月期 130円 57.5円 72.5円 30.8%
2019年3月期 140円 65円 75円 32.8%
2020年3月期 150円 70円 80円 32.3%
2021年3月期 160円 75円 85円 35.4%
2022年3月期 170円 80円 90円 28.0%

明治HDは過去5期にわたって毎期増配となっています。過去5期の配当性向は概ね30~35%の水準となっていますが、今後は2024年3月期までに40%の水準に引き上げることを発表しており、今後も数年は増配傾向が続く見込みです。

2023年3月期は年間配当が170円(中間85円、期末85円)の予定です(この配当予測は株式分割の効力発生日が2023年4月1日のため、株式分割前の株数を基準にした配当金となります)。

まとめ

明治HDは国内有数の規模である大手の食料品メーカーです。エシカル消費の推進などESGやサステナビリティに対する取り組みにも積極的な銘柄の一つとなっています。最近は業績の伸び悩みなどから株価が下落基調となっていますが、増配や株主優待の充実など株主還元を積極的に行っています。

明治HDのESGやサステナビリティの取り組み内容に関心のある方は、この記事を参考にご自身でもお調べになった上で検討してみてください。

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