独身の人が備えておきたいリスクと、リスクに対応する保険は?他の金融商品との比較も

保険というと「一家の大黒柱が死亡したときに遺族の生活を支えるもの」というイメージがあり、独身の人には必要ないと思う方も多いのではないでしょうか。

しかし、保険で備えられるリスクは死亡保障だけではありません。独身の人が自分のために保険の加入を検討したり、また加入のメリットが大きいケースもあるのです。

この記事では独身の人のリスクや、それに対して検討しておきたい保険などについて解説します。

※2023年5月24日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 独身の人が備えておきたいリスクとは?
    1-1.死亡保障はほとんど必要ない
    1-2.病気やけがのリスク
    1-3.働けなくなったときのリスク
    1-4.年金生活でのリスク
  2. 独身の人が備えておきたいリスクに対応する保険は?
    2-1.医療保険
    2-2.がん保険
    2-3.就業不能保険
    2-4.個人年金保険
    2-5.変額保険
  3. 独身の人に変額保険と投資信託はどちらがいい?
    3-1.変額保険と投資信託のリターンを比較
    3-2.保険が必要なケースは?
    3-3.投資信託の積立はiDeCoやNISAでも可能
  4. まとめ

1.独身の人が備えておきたいリスクとは?

最初に、独身の人が対策すべきリスクには何があるかを解説します。

1-1.死亡保障はほとんど必要ない

独身の人には、基本的に死亡保障は必要ありません。独身の人の死亡保険の受取人は両親のどちらかになるケースが大半ですが、子どもの死亡によって経済的に困窮してしまう状況でない限り、加入のメリットは少ないと言えるでしょう。

1-2.病気やけがのリスク

病気やけがで入院したときの経済的リスクについて確認しておきましょう。入院したときの損失補填が預貯金では間に合わない場合、保険の活用を検討しましょう。ここでは、生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」のデータを紹介します。

過去5年間の入院経験と入院日数

過去5年間の年代別の入院経験のある人の割合は以下のとおりです。

  • 20歳代:9.9%
  • 30歳代:8.9%
  • 40歳代:10.9%
  • 50歳代:15.0%

過去5年以内に入院した経験のある人の、直近の入院日数の平均は以下のとおりです。

  • 20歳代:18.0日
  • 30歳代:12.1日
  • 40歳代:15.1日
  • 50歳代:14.7日

40歳代以下で入院する人の割合は10%前後、50歳代になると15%と高くなることがわかります。また、入院日数はどの年代も20日以内となっています。

直近の入院時に高額療養費制度を利用したか

高額療養費とは同一月にかかった医療費の自己負担額が限度を超えた場合、超えた分が払い戻される健康保険の制度です。直近の入院時の高額療養費制度を利用した人の割合は以下のとおりです。

  • 20歳代:29.6%
  • 30歳代:48.8%
  • 40歳代:64.5%
  • 50歳代:70.2%

高額療養費制度は、年齢が上がるほど利用する割合が増えることが確認できました。つまり、年齢が高くなるとかかる医療費が高額になる、ということが言えます。

直近の入院時の自己負担

直近の入院時の自己負担の平均は19万8,000円で、1日あたりの自己負担の平均は2万700円でした。

逸失収入の有無と金額

逸失収入とは、入院がなければ得られたはずの収入のことです。入院による逸失収入があった人の割合は以下のとおりです。

  • 20歳代:9.1%
  • 30歳代:15.8%
  • 40歳代:26.3%
  • 50歳代:22.3%

逸失収入がある人のうち、直近の入院時の逸失収入の平均は30万円2,000円、1日あたりの逸失収入の平均は2万1,000円です。

1-3.働けなくなったときのリスク

病気やけがによる入院後も自宅療養などで仕事を休まなければならない場合、収入減少や収入が途絶える可能性があります。会社員であれば、仕事を長期で休んでも健康保険の傷病手当金が受けられます。

しかし、自営業・フリーランスの人にはそのようなセーフティネットがありません。つまり、働けなくなったときの経済的なダメージは、職業によって異なるというわけです。

1-4.年金生活でのリスク

頼る人のいない独身の人にとって、老後資金の準備の必要性は高いといえます。厚生年金に加入している会社員でも、年金だけで就労中と同程度の生活水準を保つことが出来ないケースは多々あると考えられるためです。

2.独身の人が備えておきたいリスクに対応する保険は?

上記のようなリスクを踏まえ、そのリスク対応する保険について解説します。

2-1.医療保険

医療保険とは、病気やけがで入院した場合に入院給付金や手術給付金を受け取れる保険です。医療保険で受け取れる主な給付金には以下のような種類があります。

  • 入院給付金:入院したときに「1日あたり1万円」のように1日あたりの給付金額が日数に応じて受け取れる。1入院ごとと通算での支払限度日数が設定されている。
  • 手術給付金:保険会社ごとに定められた手術を受けたとき受け取れる。定額を支払うタイプや手術の種類によって入院日額に倍率を乗じた金額を支払うタイプがある。
  • 先進医療給付金:厚生労働大臣が定める先進医療を受けた場合に、自己負担した治療費を受け取れる給付金。通常、通算2,000万円などの上限がある。

入院リスクがあっても蓄えが十分ある人は、無理に医療保険に加入する必要はありません。いざというときの余裕資金がない人は、最低限の医療保険に加入しておいてもよいでしょう。

2-2.がん保険

がん保険は、がんと診断されたときに一時金や入院給付金が受け取れる、がん治療専門の保険です。医療保険との主な違いは、がんと診断されたときに使い道自由な一時金である診断給付金が受け取れる点や、入院給付金の支払日数に限度がない点などです。

がんの治療は他の病気より長期化してしまうこともあるため、治療費以外に収入減少にも備えるべきケースもあります。その場合、がん保険加入を前向きに考えてもよいでしょう。

2-3.就業不能保険

就業不能保険とは病気やけがで長期間働けなくなり、収入がなくなるリスクに備えられる保険です。自営業などで働けなくなると収入がなくなってしまう人は、加入を検討したい保険といえます。

就業不能保険の保障内容は保険会社によって異なるため、複数を比較検討することが大切です。給付金は給料のように毎月受け取れるタイプや一時金タイプなどがあります。

また、給付金が受け取れる条件も、保険会社によって差がある点には十分注意しましょう。保険期間は一定期間を保障する定期タイプが主流です。

2-4.個人年金保険

個人年金保険とは支払った保険料を積立て、年金として一定期間、または一生涯受け取れる貯蓄タイプの保険です。

ただし、途中で解約するとほとんどの場合、支払った保険よりも少ない解約返戻金しか受け取れないデメリットがあります。公的年金だけでは不足してしまう方や、投資のリスクが気になる方に適した金融商品です。

2-5.変額保険

変額保険とは保険料を投資信託などの特別勘定で運用し、その成果によって保険金や解約返戻金が増減する保険のことです。

運用を保険会社が行うタイプと契約者が行うタイプがありますが、いずれも運用成果は契約者が負います。被保険者が死亡したときには、基本保険金額が保証され、さらに変動保険金のプラス分を受け取れます。

これに対し、解約返戻金には最低保証はなく、運用実績次第で支払った保険料を下回る可能性がある点に注意が必要です。

3.独身の人に変額保険と投資信託はどちらがいい?

変額保険で提供されている投資信託は、ほとんどが金融機関で購入可能です。そこで、変額保険と投資信託のパフォーマンスを比較してみましょう。

3-1.変額保険と投資信託のリターンを比較

以下は、ある保険会社の実際に販売されている変額保険の一例です。

  • 契約年齢・性別:30歳・男性
  • 月額保険料:2万円
  • 保険金額:931万円
  • 保険期間・保険料払込期間:30年

この契約内容で、年6%で運用できた場合の30年後の満期保険金は1,589万円です。この保険金を一括で受け取る場合、以下の金額が一時所得として給与所得などと合算されて所得税・住民税がかかります。

一時所得 =(満期保険金 - 払込保険料- 50万円)× 1/2
=(1,589万円 - 720万円 - 50万円)× 1/2 =409万5,000円

投資信託を月2万円、年6%で30年積立てた場合

上記の変額保険と同様に投資信託を毎月2万円、年6%で30年積立てた場合の運用結果は以下のとおりです。

  • 元本:720万円
  • 運用益:1,289万円
  • 元利合計:2,009万円

投資信託のほうが、同じ6%の運用でも420万円(2,009万円-1,589万円)多い結果となりました。

なお、運用益の1,289万円には特定口座などでは約262万円(1,289万円×20.315%)の税金がかかりますが、NISA口座であればかかりません。

3-2.保険が必要なケースは?

変額保険と投資信託のリターンの単純比較では、保険料がかからず、またNISA枠が活用できる投資信託のメリットが大きいと言えます。

一方、変額保険には被保険者の死亡時に死亡保険金が支払われます。そのため、上記の420万円の差額は、変額保険における保険の費用に相当すると考えられます。

そこで、以下のような条件の定期保険に加入した場合の保険料と比較してみましょう。

  • 契約年齢・性別:30歳・男性
  • 月額保険料:2,031円
  • 保険金額:1,000万円
  • 保険期間・保険料払込期間:30年

上記の保険の30年分の保険料は73万1,160円(2,031円×12カ月×30年)となり、変額保険の保険費用に相当する420万円より約347万円安い結果となりました。

この結果はあくまで一例ではありますが、両者の差は100万円単位と決して少ないとはいえません。教育資金の準備で保護者の死亡保障も必要な場合などは、投資信託の積立と定期保険の組み合わせのほうが合理的といえます。

【関連記事】変額保険と投資信託のメリット・デメリットを比較、使い分けのケースも

3-3.投資信託の積立はiDeCoやNISAでも可能

投資信託の積立は金融期間によっては100円から始められるため、投資経験のない初心者でも取り組みやすい方法です。

さらに、iDeCoやNISAなどの制度でも投資対象に投資信託が提供されており、税制優遇が受けられます。iDeCoとNISAは併用が可能なため、老後資金の準備を厚めにしておきたいという方は積極的に活用するとよいでしょう。

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まとめ

独身の人には死亡保障の必要性は低いものの、病気やけがのリスクや年金生活でのリスクなどについてはあらかじめ備えておけると良いでしょう。

いずれも十分な蓄えがあれば保険が不可欠とはいえません。一方で、医療保険やがん保険、就業不能保険などはそれぞれの状況に合わせて独身の方でも加入のメリットがある保険商品と言えます。

なお、変額保険はリターンが期待できる金融商品である反面、投資元本を下回ってしまうリスクもあります。投資信託などと併用する、または比較するなどして、加入や投資の判断を行っていくことも大切です。

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