長く愛せるサステナブルな家作り・住宅選びのポイントは?日本と海外の制度の比較も
マイホーム購入は、人生で最も大きい買い物の一つと言われています。長く愛せてサステナブルな家を建てたい・選びたいと考える方もいるでしょう。
一方で、日本の住宅寿命は海外と比較して短いと言われています。戸建のマイホーム購入の話が出る時は、中古住宅の購入ではなく、新しく家を建てたと聞く機会のほうが、多いのではないでしょうか。
今回は、日本の住宅寿命が短い背景や、長持ちする家のポイントについてご紹介します。
※本記事は2023年5月29日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 日本の住宅は長持ちしないのか
1-1.住宅の寿命と日本と欧米の比較
1-2.日本で長く愛される建造物
1-3.日本の家が長持ちしない理由 - 日本の家が短命なもう一つの理由
2-1.制度上の問題
2-2.日本で開始されている取り組み - 長く愛せる家のポイント2つ
2-1.物理的な耐久性
2-2.住人のライフスタイルに対する柔軟性 - 長く愛せる家作りのポイント
3-1.構造の強さ
3-2.立地の安全性や利便性
3-3.メンテナンスのしやすさ
3-4.ライフスタイルの変化への対応のしやすさ - まとめ
1.日本の住宅は長持ちしないのか
日本の住宅は、寿命が短いと聞いたことがありませんか。一方で、日本には国宝といわれるような、何年にもわたって愛される建物も残っています。
日本の住宅は、なぜ長持ちしないといわれるのか、欧米等との比較も交えて解説します。
1-1.住宅の寿命と日本と欧米の比較
令和4年に国土交通省がまとめたデータによると、日本で取り壊される住宅の平均築後年数経過年数は約38年です。これは、米国の約56年、英国の約73年と比較し、かなり短いといえます。
また欧米諸国では、自分が住まなくなった家を別の人に受け渡す文化があり、中古住宅の取引が活発です。戸建のマイホーム購入というと、日本では新築のイメージが強いものの、欧米では中古物件が主流です。
統計にも現れており、新築物件と中古物件のシェア比較(新規住宅着工戸数が住宅売買取引全体に占める割合)をみると、米国は79.3%、英国91.4%、仏国75.0%となっています。対して日本は14.5%と、中古市場が育っていないことがうかがえます。
参考:国土交通省「令和4年度 住宅経済関連データ」
1-2.日本で長く愛される建造物
戦前よりはるか昔に建てられた日本の建造物の中には、今も残り愛されるものも存在します。
例えば世界文化遺産に指定されている法隆寺は、西暦607年に聖徳太子により創建されました。また、東大寺正倉院の起源は西暦756年で、両者とも1200年以上も美しい姿を保っています。
他にも、数多くの歴史的建造物が日本にはあります。日本の建築技術が欧米と比較して劣っているということはありません。それでは、現代の日本で住宅が長持ちしない理由はどこにあるのでしょうか?
1-3.日本の家が長持ちしない理由
その背景は諸説あるものの、戦後の住宅事情が大きいでしょう。
大戦で被害を受けた日本はとにかく住宅の数が足りず、短期間で大量の家を供給する必要がありました。更にその後も人口増加や高度経済成長により、住宅は「数」を供給することが優先されたため、安く早く建てられる家が増えたと考えられます。さらに、急激に欧米化した生活様式によって、求められる間取りやデザインの移り変わりが激しくなったこと、政府が住宅金融公庫を設立して各個人にそれぞれ家を購入してもらおうという政策を取ったことも手伝って、「丁寧に建てた家を修理しながら長く住む」という文化が育たなかったことが根本の要因であると思われます。
参考:三井住友トラスト不動産「建築の知識アドバイス 長く住める家と長く愛せる家はどうつくる」
1-4.建物評価に関する制度上の問題も
日本の住宅が短命な理由は、実はもう一つあります。それは、日本の不動産評価が中古住宅に対して不利であるという点です。
日本の戸建住宅を売却する際は、基本的に原価法(税法上の耐用年数をもとに経年減価させる手法)が元になります。一律で経年減価されてしまうため、古いというだけで価値が下がってしまうのです。
このやり方では、どんなに丁寧にメンテナンスをしても、築20年の物件が新築と同等の評価を受けることはほぼありません。
参考:国土交通省「中古住宅に係る建物評価手法の改善の方向性について」
一方米国では、中古住宅の売買を促進する仕組みが整っています。中古住宅でもしっかりつくられてメンテナンスがきちんとされていれば、新築と変わらない査定を受けることも不可能ではありません。
米国の不動産鑑定は、取引事例比較法と原価法を組み合わせて行われます。原価法は日本のような経年による一律の減価ではなく、内装や設備、建物全体の劣化やメンテナンス状況を考慮して「実質的な経過年数」が決定され、その上で経済的残存耐用年数を割り出す仕組みです。適切な修繕が施されていれば、高額の査定を受けられる可能性があります。
参考:三菱地所リアルエステートサービス「なぜ米国では住宅が何十年、百年と住み続けられるのか? 日米「中古住宅」管理の違い」
日本で開始されている取り組み
「築後20年から25年程度で一律に市場価値がゼロになる」とされる取引慣行を改善し、住宅の性能やリフォームの状況等を的確に反映した評価を行うため、平成26年3月に国土交通省では「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定しました。これに基づき、宅地建物取引業者が中古住宅の査定時に用いる「既存住宅価格査定マニュアル」が平成27年7月に改訂されました。
参考:国土交通省「公益財団法人不動産流通推進センターによる「既存住宅価格査定マニュアル」の改訂について」
参考:国土交通省「「既存住宅価格査定マニュアル」の改訂について 報道発表資料」
改訂の内容としては、住宅の性能やリフォームの状況等をある程度反映した評価を目指すものとなっています。
たとえば耐用年数については、劣化対策の状況に応じて5段階に分けられており、長期優良住宅相当であれば100年になります。減価については、建物検査結果に不具合がなければ通常より緩やかなものとする、リフォーム等が行われている場合は築年数によらず部位別の評価上の経過年数を短縮する、といった内容が盛り込まれています。
参考:国土交通省「建物評価ルールの見直し及び市場に定着させるための取組」
ルールが整備されたからといって、すぐに日本の中古住宅市場が大幅に活性化するわけではありません。このマニュアルの利用は義務ではなく、過去の取引事例なども査定の参考にされるため、築20年の物件が新築と同等の評価をされるような事例は考えにくいでしょう。
また、安く早く大量に作られていた家は数多く残っています。この改訂の趣旨を業者側が理解すること、これから家を建てる側が建物を資産として考え大切にすること、買う側が中古住宅に価値を感じられる環境が育つことで、住宅の状態を正しく踏まえた査定が一般化することが望まれます。
2.長く愛せる家作り・住宅選びのポイント
日本の住宅が短命化したのは、複雑な時代背景と高度経済成長を経て、住宅にも大量生産・大量消費のサイクルが根付いたと言えるでしょう。
しかし、環境問題などが深刻になっている今、そのような考え方を見直す必要が出てきています。長く愛せる家について、改めて考える必要があります。
以下では、実際に長く愛せる家を作る・選ぶために押さえるべきポイントをご紹介します。
2-1.構造の強さ
言うまでもなく、構造的に強い家をつくることは大前提です。
耐震性など物理的に強いだけでなく、湿気や温度変化に対する強さ、風雨に対する耐久性も大事です。他にも、壁の内側が結露しやすいとカビや腐食の原因になり、耐久性が低下するなど、注意すべき点は多くあります。さまざまな観点で、老朽化への対策がされているか確認することが重要です。
ただ、十分な耐久性を有しているかどうかは、素人目には判断がつきにくいでしょう。現在は、長く住める家であるかどうかの一つの基準となる「長期優良住宅」の制度が確立しています。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいた基準を満たす設計をしてもらい、認定を受けてから着工することで、一定の基準を満たした住宅を建てることができます。
参考:e-GOV 法令検索「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」
2-2.立地の安全性や利便性
長く住み続けるためには、立地も重要です。押さえたいポイントは以下の3点です。
- ハザードマップの確認
- 地盤の状態の確認
- 老後の住みやすさ
ハザードマップでは、水害・土砂災害・津波などのリスクの確認をします。リスクの高い場所は避けた方が無難です。
地盤の強さ、地震発生時の揺れやすさなどを調べ、なるべく地盤が強く揺れにくい場所を選ぶことも大切です。ジャパンホームシールドが提供する、「地盤サポートマップ」などを活用すると良いでしょう。
参考:ジャパンホームシールド「地盤サポートマップ」
高齢になると車の運転ができなくなる可能性もあります。駅までのルートや、周辺の坂や階段の多さ、周辺の治安なども考慮しておくと良いでしょう。
2-3.メンテナンスのしやすさ
同じ家を何世代・何世帯も受け継ぎながら住む文化のある欧米では、DIYが盛んです。壁の塗り替えや補修、水回りの手入れなどをこまめに行うことで、長く住み続けられるだけでなく、家自体の資産価値も高める考え方が根付いているようです。
メンテナンス性は、素材や作りに左右されます。素材については、たとえば床は、無垢材にすると傷がつきやすいと言われるものの、お手入れをすれば長く使えます。一方、新建材といわれるビニールコーティングなどを施された床材は、一度傷むと修復が難しく、張り替えが必要になるケースが多くなります。外壁は、タイル貼りが一般的に耐久性・メンテナンス性に優れているといわれます。
作りに関しては、前述の「長期優良住宅」の認定基準を満たしているかどうかが一つの指標になるでしょう。建てる時の費用だけではなく、長期的なメンテナンス費用を考慮して家づくりの計画をすることも長く住むためのポイントです。
2-4.ライフスタイルの変化への対応のしやすさ
子供の成長・独立や、自分自身の高齢化などにより、ライフスタイルは変化します。起こりうる変化を想定し、変化に対応しやすい設計にすると、長く住むことができます。
子供の成長や独立、自分が高齢になるなど、人生には変化がつきものです。小さい子供が1人の時、子供が高校生になった時、子供が独立し、自分が80歳になった時では、使いやすい間取りも違うはずです。
また、次の世代に譲る、他人に売り渡すとなると、新しい持ち主に合った間取りもまた違います。
耐久性にまだ問題が起きていない家であっても、間取りの問題で壊され建て替えられるケースは多くあります。これから建てる家を長持ちさせるためには、住む側の変化に対応できる柔軟な設計をするという点も重要なポイントになります。
そのためには、リフォームを前提に間取りを工夫すると良いでしょう。また、大規模なリフォームをしなくても間取りの変更が可能な設計を選ぶのも方法です。たとえば「無印良品の家」は、家の間仕切りを自由に組み替えることで、ライフスタイルにあわせた間取りに自分で変えていけるようになっています。
参考:無印良品の家「永く使える理由」
5.まとめ
長く愛せる家を選ぶ人が増え、建物を受け継ぐ文化が根づくことは、環境保全の観点から見ても大切です。そのためには、将来を見据えた家をつくることと、建物を資産として大切にメンテナンスすること、さらに、中古住宅を適正価格で取引する慣行が根付くことが必要でしょう。
長年大切にしてきた自分の家が、遠い将来美しい街並みの一部になったら、素敵だと思いませんか。これからの家づくりをワクワクしながら楽しめる人が増えれば、日本の状況も変わってくるでしょう。
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