Move to Earnと脱炭素を掛け合わせたWheelcoinとは
今回は、Fracton Ventures株式会社の村上和哉 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
2022年、STEPNの登場により大きく話題となった「Move to Earn(以下、M2E)と脱炭素を掛け合わせた「Wheelcoin」について紹介します。
WheelCoin概要
WheelCoinはいわゆるM2Eのプロジェクトですが、環境にやさしい(持続可能な)移動方法の場合のみ $WHL トークンを報酬として得ることができます。
通常、M2Eでは価格のついたトークンを報酬として得ることができるという経済的インセンティブのもとでなりたっています。一方でWheelcoinの場合は、現状 $WHL 自体は価格がついておらず直接的な経済的インセンティブとして機能していないものの、脱炭素活動という環境に優しい行動を行うという社会的インセンティブが機能していると言えます。
環境にやさしい移動方法とは、徒歩、自転車、電車での移動が該当しており、温室効果ガスを排出する自動車での移動はカウントされない仕組みになっています。仕組みとしては、スマートフォンのGPSセンサーで移動速度を検出することによって、移動方法を判別しています。その他のM2Eアプリでは、自転車、電車などでの移動をカウントしないことがほとんどですが、Wheelcoinの場合はそれらの移動をカウントすることがユニークな点です。
一方で、GPSセンサーに頼ってしまうことでの懸念点として、温室効果ガスを排出しない電気自動車などの環境にやさしい自動車での移動をカウントできない問題があります。まだ電気自動車の普及率が高くないとはいえ、今後電気自動車が主流になるであろう社会を見据える上での対策が必要になります。
WheelCoinアプリの使用方法
Wheelcoinはその他のM2Eアプリとは異なり、靴のNFTなどを用意する必要がありません。これにより誰でもすぐに気軽に始めることができます。アプリをインストールしてGPSを常に許可しておくだけで、始めることができます。
実際に歩いたりすると $WHL という独自トークンを報酬として得ることができます。$WHLは前述の通り、価格がついておらず現在のユーティリティは配車サービスやシェアサイクルなどのサービスのクーポンと引き換えることが可能になっています。現状、日本で使用可能なサービスにクーポンと引き換えることはできません。
また、 $WHLのもう1つのユーティリティとしては、Mystery Boxと交換することができます。Mystery BoxにはNFT Collectiblesが1つ入っており、1 $WHL で交換することができます。現在は「First WheelCoin Collection」ということで、世界各国の主要都市などの駅のNFTコレクションのようなものが入手可能です。こちらは日本の駅も対象になっており、東京の他に大阪の駅などもあります。
そして、 $WHL を報酬として獲得できるロジックは、環境に優しい移動手段を利用することで自動車で移動した場合に比べて、1Kg CO2を削減することが実現したら 1 $WHL 獲得できることになっています。また、上記の実際のアプリ画像のように、自動車での移動はカウントされません。
ユースケース
具体的にWheelCoinは自治体や企業に対して、どのようなメリットを与えることが想定されているか具体的に見ていきます。
自治体向けのソリューション
自治体にとっては、自治体内での交通データを取得することができ、都市計画やモビリティインフラについて検討する際の重要なデータになることが予想されます。そのためにはWheelCoinが自治体と提携して、住民にWheelCoinを利用することを促す必要があります。そのようにすることで、多くの自治体内での多くのデータが集まるとともに、環境にやさしい移動手段を奨励することに繋がります。現状、上記に取り組む自治体パートナーを募集中です。
企業向けのソリューション
企業にとってのWheelCoinは従業員の通勤・出張における二酸化炭素の排出量の特定のためのツールとして機能します。具体的にはサプライチェーン排出量算定におけるScope3のカテゴリー6と7のデータを算出するツールとして機能します。またそれらのデータをカテゴリーごとに自動で区別し、ダッシュボードで管理することができるようです。こちらはfor Businessは別のアプリが用意されているようで、Webからデモを予約することができます。
これまでこれらの情報を集めるためには、コストがかかるとともに情報の正確さの問題がありましたが、WheelCoin for Businessを使用することでコストも削減することも可能になり、数値で管理することで目標値を設定し、より環境に優しい移動を従業員に促すことが可能になりえます。またこれらのデータは排出量を測定することに役立ちますが、匿名化されたデータとなるので従業員のプライバシーは守られます。すでにMento Labs、Vanagon Ventures(Climate Tech ReFi Fund)などがWheelCoin for Businessを利用することを発表しています。
Celoチェーンを選択した理由
WheelCoinは、Celoチェーン上に構築されたアプリケーションですが、Celoを選定した理由(基準)として下記の5つが挙げられています。
- カーボンニュートラルもしくはネガティブなブロックチェーン
- ReFiコミュニティとしての活気があるか
- Ethereumとの互換性
- モバイルに対応していて、スケーラブルで手数料が低い
- サポート体制
上記の5基準を検討した上で、WheelCoinはCeloを選択しましたが、候補としてCelo, Hedera, Cosmos, Near, Polygonの5つで検討したようです。特に判断基準として最も重要になったのは「サポート体制」で、Celoの創業者と連絡をとるとすぐ戦略パートナーシップ担当者とともに仕事ができる体制を整えてくれて、Celoのエコシステム内にも積極的に働きかけてくれたことが決め手になったとのことです。
現在、報酬として獲得できる $WHL やNFTはアプリ内のみでオフチェーンですが、今後はこれらをオンチェーンで扱う際にはCelo上で利用することになります。また、今後発行されることが予定されているガバナンストークン $WFT も同様になります。
まとめ
Move to Earnと脱炭素の取り組みを掛け合わせた「WheelCoin」は、社会的インセンティブを備えた新しい形のM2Eであるといえます。今後はガバナンストークンの発行も含めた本格的なトークノミクスが始動することで経済的インセンティブも実装していくことが予想されます。また、WheelCoin for Businessなどが実際に企業に採用され、排出量を特定するツールとして、どのような成果をもたらすのかも注目です。
【参照記事】WheelCoin
【参照記事】Why we chose Celo to deploy WheelCoin
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Move to Earnと脱炭素を掛け合わせたWheelcoinとは