経団連、金融庁「インパクト投資等に関する検討会」報告書に対する意見を公表。コンソーシアムの役割に期待
一般社団法人日本経済団体連合会は7月10日、「金融庁『インパクト投資等に関する検討会』報告書に対する意見」を公表した。金融庁が今年6月にとりまとめた「インパクト投資等に関する検討会」の報告書に対し、経団連の金融・資本市場委員会建設的対話促進ワーキンググループがサステナブルな資本主義を実現する手段の一つとして、インパクト投資の拡大を目指す観点から意見を述べている。
金融庁は、報告書でインパクト投資の基本的指針とともに、多様なステークホルダーが参画する対話の場(コンソーシアム)の設置による各種施策の推進をうたっている。経団連はこれに対する意見を①基本的理解の醸成②データや指標の整理・整備③測定・管理に係る標準手法の開発と推進④官民によるリスク分担⑤企業によるパーパス経営の後押し⑥インパクト投資に係るインベストメント・チェーンの強化の6項目にまとめている。
筆頭の基本的理解の醸成については、「インパクト投資の普及には、その基本的理解の醸成が必要不可欠だが、現状では、ESG投資との違いが明確でない、あるいは誤った理解が広まっている」と指摘。金融庁が提唱するコンソーシアムに「基本的理解の醸成に向け、報告書の基本的指針に沿って実行されたインパクト投資の事例の共有」を求めた。
さらに、後段で「同じ議論のなかで異なるインパクト投資が想定されたり、混同されたりした状況で議論がなされているケースがある」として、コンソーシアムではインパクト投資に関する基本的理解の醸成と並行して、議論の対象とするインパクト投資を明確に切り分けたうえで検討を進めるよう要望した。
データや指標の整理・整備についても「データや指標の不足は企業や投資家がインパクト投資に取り組む際の障壁になっている。とくに地域活性化や少子高齢化対応等につながる日本固有のデータが整備されていない。また、投資判断に有用なデータや指標が、投資家側・企業側の双方で分からないことも課題」として、改善のためコンソーシアムが積極的に機能することを要望。「まずはインパクト投資に携わる企業や投資家への丁寧なヒアリングを行い、インパクト投資の実行に重要なデータや指標の種類、既存の枠組みではカバーできていないデータの範囲、IRIS+等と連携するために必要なデータの形式を洗い出すべき」とコンソーシアムの検討に期待した。
インパクト投資に係るインベストメント・チェーンの強化では、「インパクト投資のさらなる拡大には、アセットオーナーが重要な役割を果たす。特に上場株式に対するインパクト投資拡大には、ユニバーサルオーナー、とりわけGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるインパクト投資への参入が不可欠。コンソーシアムにおいて、インパクト投資の拡大策として、GPIFをはじめアセットオーナーがインパクト投資に資金を振り分けるための方策を検討することが期待される」と述べた。
また、インパクト投資の実行には、投資家に対する企業側の価値創造ストーリーの説明と的確な測定・管理が重要として、投資家側の人材、時間といったリソースの不足、対話を行うインセンティブの欠如といった問題を解決するため、コンソーシアムでインパクト投資に係るエンゲージメントの課題を整理するとともに、投資家へのインパクト投資に係るトレーニングやリソースの提供について検討すべきとしている。
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