30年後も選ばれるアパート経営の3つのポイントは?設備需要や修繕費、今後の入居者動向も【インタビューあり】
将来の資産形成の手段として、または本業とは異なる収入源としてアパート経営を始めることを検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、1棟の建物を運用することになるアパート経営は、不動産投資の中でも投資規模が大きい投資対象です。建物の修繕を管理組合に依存する区分マンション投資と比較して事業性も高く、より慎重に物件選びをしていく必要があります。
またアパートは基本的には木造での建築になるため、22年の法定耐用年数を超えて稼働することは珍しくありません。30年を超えて長期的に入居者に選ばれるためには、クオリティの高い建物の建築、また運用していくなかでの修繕も必要になります。
そこで今回は30年後も入居者に選ばれるアパートの物件力をテーマに、アパート経営のポイントを解説します。また、新築アパートの企画・販売、管理を行うアパート経営会社「アイケンジャパン」の具体例や対策についてのインタビューも行っているので、新築アパート経営を検討している方はご参考ください。
アイケンジャパン
アイケンジャパンは、東京と福岡の二拠点を本社とする不動産会社で、アパート等の企画・販売、設計や施工・監理、不動産管理や売買仲介などを行っています。創業は2006年で、営業拠点は福岡、熊本、広島、岡山、大阪、名古屋、東京、横浜、仙台、札幌、台湾の全国10拠点、海外1拠点を有しています。
目次
- 入居者に選ばれるアパート経営の3つのポイント
1-1.立地
1-2.防音対策
1-3.防犯対策 - 実際のアパート経営における取り組み事例は?
2-1.汚れに強い外壁と屋内共用部
2-2.間取りや独自の構造を為す、防音対策
2-3.耐震に強い設計 - 【インタビュー】設備の選び方や修繕費の目安、今後の入居ターゲットはどう考えればいい?
- まとめ
1.入居者に選ばれるアパート経営の3つのポイント
長く入居者に選ばれるアパート経営を行っていくには、短期的なトレンドではない長期的な視点で入居者の賃貸ニーズを獲得できる物件選びが大切です。下記は長くアパート経営を行っていくにあたり重視していきたい3つのポイントです。
- 立地
- 防音対策
- 防犯対策
1-1.立地
アパート経営においては、物件の立地が大きな要素となります。駅や商業施設、学校などのアクセスの良さや、治安の良さ、周辺環境などが入居者にとって魅力的な条件となります。そのため、地域調査や周辺環境の把握が重要であり、物件の立地選びは慎重に行う必要があります。
また、建物の住環境についてはリフォームや付随サービスの拡充など、ある程度の対策をすることが可能ですが、立地条件についてはアパートを売却する方法以外に変更することができません。経営をスタートさせる前に、立地・エリアについては慎重に検討する必要があるのです。
地域調査を行うには、実際にアパートが位置するエリアの周辺環境を見に行くなどの物理的な方法と、家賃相場や不動産価格の推移などのデータ面から検証するという、大きく分けて2種類の方法があります。いずれの場合も賃貸経営の経験・知識を必要とするため、初心者の方であれば不動産投資会社のサポートを受けながら、いくつかのエリアを比較されていくと良いでしょう。
1-2.防音対策
アパートの住戸間においては、住人同士のトラブルを避けるためにも、防音対策が重要です。特に、木造アパートの場合は鉄骨・RC・SRC造のマンションと比較して音の響きが大きくなりやすく、騒音トラブルが発生するリスクがあります。
騒音トラブルは、管理によって改善したり対処することが難しい住民トラブルの一つです。構造の問題で通常の生活音が響いてしまっているようなアパートでは、住民側の努力で対応することも難しく、短期的に入退去が繰り返されてしまうケースもあります。
また、騒音問題については入居者からクレームが上がってこないまま退去されてしまう可能性もあります。原因が不明のまま退去が増えてしまうことで注意喚起が遅れ、収益性を大きく下げてしまう可能性もあるのです。
木造アパートの弱点である防音対策をしっかり行っておくことは、騒音トラブルによる住環境の悪化、収益性の低下を防ぐ重要なポイントになります。長期的にアパート経営を継続していく場合には、入居者目線での視点も取り入れ、物件選びをしていくことが大切です。
1-3.防犯対策
アパート経営において、入居者の安全確保は重要な課題となります。防犯対策をしっかり行い、不法侵入や盗難、暴力事件などを未然に防ぐことは入居者の安全を守るだけでなく、犯罪の起きにくい社会づくり、地域住民等の安全安心の向上につながり、地域内で取り組みが増えれば地域全体のイメージ向上にも良い影響を与えます。
侵入窃盗の侵入手口
※画像引用:警察庁「手口で見る侵入犯罪の脅威(令和2年)」
警察庁の「手口で見る侵入犯罪の脅威(令和2年)」によると、3階以下の共同住宅では、無締り、ガラス破り、合いかぎなどが主な侵入経路となっていることが分かります。これを踏まえ、アパートで出来る防犯対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- 防犯カメラ
- 電子キー
- 防犯性の高い窓の設置
- 外灯や共用部分の照明の工夫
- ホームセキュリティ
- エントランスのオートロックと宅配ボックス
これらの防犯対策には費用が掛かりますが、例えば防犯カメラや防犯性の高い窓の設置、照明の工夫などは数万円~10万円程度で設置可能で、頻繁に取り替える必要のない設備です。高い費用対効果が期待できるため、入居者の安全と大切な資産を守るという観点から導入を検討されてみると良いでしょう。
2.実際のアパート経営における長期運用のための取り組み事例は?
アパート経営は建物1棟を所有するため、室内設備だけでなく外壁や屋根などの修繕も必要になり、劣化状況によっては大きな資金を必要とすることがあります。入居者から長く選ばれるアパート経営を行うにあたって、実際にどのような工夫や取り組みの仕方があるのか、アイケンジャパンの事例をもとに見ていきましょう。
2-1.汚れに強い外壁と屋内共用部
外壁の汚れ・傷みは、クラック(外壁塗装にひび割れ)が起きるスピードを速めていきます。クラックは結露や雨漏り、シロアリなどの重大な欠陥を引き起こす原因にもなるため、長期的にアパート経営を行っていくうえでも重要なポイントになります。
アイケンジャパンでは、塗膜に汚れの付きにくいサイディングを採用しています。サイディングとは建物の外壁に使う板状の外装材のことで、耐火性や耐久性に優れているため、木製板の代わりに使用されるようになりました。
外壁に使用される資材としては、サイディング以外にもタイル張りや塗り壁工法等もありますが、サイディングは防火や劣化に比較的強い、コストが安い、そしてデザイン性が高いというメリットがあります。
また、共用廊下・共用階段を屋内に設計する構造は、高い防犯性能と雨風による共用部の傷み・入居者の不便を防ぐことにもつながります。
「1-2.防犯対策」でご紹介した侵入窃盗の侵入手口でも「無締り・合いかぎ」の事例が多く見られるため、共用部が屋内に設計されているということは防犯上の高い効果が期待できるでしょう。
さらに、アイケンジャパンのアパートは劣化対策等級3を獲得しています。劣化対策等級3は「住宅が限界状態に至るまでの期間が3世代以上となるための必要な対策」が講じられている物件のみが取得できる住宅性能評価です。
劣化対策等級3の評価基準の概要
- 「a. 外壁の軸組等」における一定の防腐・防蟻措置
- 「b.土台」における一定の防腐・防蟻措置
- 「c.浴室及び脱衣室」における一定の防水措置等
- 「d.地盤」における一定の防蟻措置
- 「f.床下」における一定の防湿・換気措置
- 「g.小屋裏」における一定の換気措置
- 「h.構造部材等」における基準法施行令規定への適合
※引用:国土交通省「評価方法基準案(劣化対策)の各等級に要求される水準の考え方」
2-2.間取りや独自の構造を為す、防音対策
アイケンジャパンのアパートの配置
多くのアパートは間取りが縦に並ぶ羊羹型構造となっており、隣の部屋と壁一枚で連なる構造になっています。このような造りは土地の面積が狭い場合でも多くの住戸を設計できるメリットがありますが、音が漏れやすく快適性に欠けるというデメリットがあります。
一方、アイケンジャパンのアパートは、各住戸間を水廻りで仕切る・全部屋角部屋にすることにより、木造アパートの弱点であった防音効果を高めているという点も特徴的です。
上下階の音に備えたSVC構造
上下階の騒音対策としても、SVC構造で上下階の音に対して高い防音・遮音性能を実現しています。住人が歩く音や椅子を引きずる音、軽量物の落下音なども、2階の床と1階の天井に防音素材を使用し、遮る構造になっています。
2-3.耐震に強い設計
長期的にアパート経営を行ううえでは、アパートの耐震性についても十分に注意する必要があります。アパートの賃貸人(オーナー)は、民法606条に基づき、賃借人に対し、賃貸建物を使用・収益に適する状態におく義務を負います。例えば、地震などの災害によってアパートが損壊した場合、賃借人が使用・収益できるように修繕しなければなりません。
アパートの耐震性が低いと、賃貸人としての管理義務を問われるリスクがあります。30年などの長期でアパート経営をしていくにつれ地震のリスクは高まるため、適切に対策をしておきたいポイントと言えます。
アイケンジャパンではアパートの耐震性能高めるために、主に以下の対策を行っています。
- キソゴムにより地震による建物の揺れを最大30%~50%軽減
- 地震時の横揺れ、台風時の横からの強風などに耐えられるように、変形に抵抗するための耐力壁を多く使用
- 建築基準法で定められている基準の約1.3倍の強度
アイケンジャパンのキソゴムによる地震対策
キソゴムとは、アパートの土台と基礎の間に設置する積層ゴムのことです。キソゴムが振動や衝撃を吸収することで新築時の剛性が維持され、建物に伝わる揺れを軽減する効果があります。これにより、地震の揺れを最大30~50%軽減する効果があります。
地震の横揺れに備えて耐力壁を採用
また、地震の横揺れに対応するためには壁の強度も重要になります。アイケンジャパンでは震や突風による水平力に備えて、耐力壁を使用しています。
耐力壁は筋交いと筋交いプレートによって構成されています。筋交いを入れることで、地震の横揺れに抵抗する力が増し、建物の倒壊や変形を防ぐ効果があります。しかし、筋交いは地震の縦揺れに弱く、大きな地震災害では筋交いが外れてしまうリスクがあるため、筋交いプレートを差し込み、柱と筋交いの両方にしっかりと固定されているのです。
3.【インタビュー】設備の選び方や修繕費の目安、今後の入居ターゲットはどう考えればいい?
3-1.「コロナ禍の前後で入居者がアパートに対して求めるものについて変化が見られる点や今後重要度が上がりそうな設備などはありますか?」
「在宅の時間の増加により、部屋の広さを重視する方やネットショッピングの需要が増し、宅配ボックスを求める方が増えています。例えば、「1Rではなく、1LDKの物件を購入したい」というオーナー様からの声も寄せられています。なかには、部屋の広さが25㎡以下だと購入しないと断言されたオーナー様もいらっしゃいました。
また、宅配ボックスの需要増についてもコロナ禍でライフスタイルが大きく変化したことによる影響かと思います。戸数に対して20%の数の宅配ボックスを配置している物件が多いなか、アイケンジャパンは戸数に対して30%〜60%の数、宅配ボックスを設置しています。宅配ボックスの数が多く便利な点は、入居者の方に支持されているポイントかと思います。」
3-2.「たとえば30年運用した場合、アパートの修繕費はどの程度見込めば良いでしょうか?」
「建物の大きさや、劣化の状況により異なりますが、6戸のアパートを想定すると、30年で約850万円程度を見込んでいただくと良いと思います。」(※下記、修繕費の計算の内訳)
- 外壁の張替工事:200万円×2回。(15年に一度)₌400万円
- 退去クリーニング費用:5万円×退去人数想定90人(30年間)₌450万円
3-3.「20年・30年後は地域の高齢化がより進むと考えられますが、現在は学生・社会人などの若い単身者をターゲットにしている物件でも、いずれは高齢者を入居者のメインターゲットとして想定したほうが良いのでしょうか?」
「現状、アイケンジャパンでは想定していません。人口が減少しても、世帯数は極端に減少しないのではという見解です。これの理由としては、未婚率の増加や核家族化の影響により、若い単身者のみならず中年層の単身者も増加しているためです。
また、決め物(賃貸仲介会社がすぐに契約を取れると考える物件)以外の物件から空室になるのではと予想しています。アイケンジャパンでは、見守りや食事のサービスがついた「シニア向け分譲マンション」のような高齢者に特化した物件ではなく、どの世代の単身者にも求められる物件を作り続けていきたいと考えています。」
まとめ
長く入居者に選ばれるアパート経営を行っていくには、短期的なトレンドではない長期的な視点で入居者の賃貸ニーズを獲得できる物件選びが重要になってきます。防音や防犯、適切な立地選びなど、入居者の目線に立った住環境にこだわることが、長期的にアパート経営を継続することに繋がります。
アパートは建築時点で防音や耐震性能の大部分が決まります。建築時にこだわった設計を行うことで30年以上の長期的な運営に耐え、長く入居者の方に入居してもらえる可能性も高まるでしょう。
また、アパート経営会社のアイケンジャパンのインタビューでは、コロナ禍を経て部屋の広さや宅配ボックスのニーズが増加していること、人口が減少して高齢化が進んでも、世帯数は極端に減少しないと見ていることから、高齢者に焦点を絞るのではなくどの世代の単身者にも求められる物件を提供したいという回答を頂きました。
アパート経営を始める際は、利回りや物件価格などの数値だけでなく、実際にアパートを利用する入居者の方のニーズについて検証することが重要です。今回の記事を参考に、購入するアパートの条件について再度検討されてみてください。
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30年後も選ばれるアパート経営の3つのポイントは?設備需要や修繕費、今後の入居者動向も【インタビューあり】