ドル円は130円割れの可能性も?下落の理由とFX戦略を解説【2023年7月】

2022年7月、ドル円は約1週間で145円付近から137円台まで急落しました。年間の値幅は平均で10円程度であるため、かなり激しい動きになったと判断できます。

今回はプロトレーダーの筆者がドル円の下落の背景とFX戦略を解説します。

※本記事は2023年7月19日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. ドル円の値動きを振り返り
  2. 投機筋の日本円のショートポジションの買い戻し
  3. 日銀の金融政策見直しの可能性
  4. CPIの大幅低下
  5. ドル円のトレード戦略
  6. まとめ

1.ドル円の値動きを振り返り

ドル円
※図はTradingViewより筆者作成

上記は、2023年の年初から2023年7月現在までの、ドル円の日足チャートです。ドル円の上昇相場は2023年3月から継続しており、130円付近から145円まで15円ほど上昇しました。その後145円から137円まで下落し、2023年7月現在は、138円台後半で推移しています。

一旦は3月の高値、そして5月の高値となっていた138円付近でサポートされたものの、この水準がどこまで維持できるかは不透明です。チャートは陰線の連続となり、新規のロングポジションを構築しにくい相場です。

相場の格言に、「落ちたナイフは拾うな」とあります。一旦下落したタイミングを押し目と判断し、新規でロング(買い)ポジションを作れる雰囲気ではないでしょう。

筆者が考える、ドル円の下落の材料は以下の2つです。

ドル円の下落のポイント

  • 日銀の緩和政策変更への警戒感から、ドル円のポジション調整が加速した
  • CPIを受け、FRBのタカ派姿勢が後退するとの思惑から、ドル売りになった

項目別に解説します。

2.投機筋の日本円のショートポジションの買い戻し

円高が急速に進行した大きな理由として、日本円のショートポジションの拡大が挙げられます。投機筋の円ショートの巻き戻しが起きています。

IMM先物ポジションの日本円のポジションを確認してみましょう。
IMM先物ポジション
引用:外為どっとコム「IMMポジション

上記は外為どっとコムのIMM先物ポジションの推移です。青色の棒グラフが日本円であり、ポジションが拡大していることが分かります。

なお、7月11日までのデータのため表では確認できませんが、直近では若干減少しています。12日以降の円高部分はまだ反映されていないことに注意してください。

IMM先物ポジションから、短期筋は安心して円安方向でポジションを取っていたと判断できます。先週の1週間で、このポジションが一気に巻き戻されました。

3.日銀の金融政策見直しの可能性

なぜ投機筋は、ポジションの巻き戻しを余儀なくされたのでしょうか。

2023年7月現在、先進国の中でも日銀のみが利上げを行わず、大規模金融緩和を継続させています。金融緩和は、日本円を安心してショートにできる材料でした。

しかし黒田総裁から植田総裁に変わってから、イールドカーブコントロールを修正する可能性が徐々に高まっています。6月の金融政策決定会合では、早い段階で見直しを検討すべきとの意見がでました。

参照:ブルームバーグ「YCCのコスト大きい、早期の見直し検討を-日銀主な意見

日本の物価指数がなかなか低下せず、日銀の予測よりも物価の低下ペースが遅い点も意識されています。日銀の予測よりも物価の低下が遅いいため、日銀は金融緩和を見直す可能性があります。

日銀が7月には金融政策を見直すとの予測も出ています。日本円をショートにしている投資家が、日銀の政策変更を警戒し、ポジション調整のドル円下落が加速したと言えるでしょう。

4.CPIの大幅低下

7月に発表されたアメリカのCPIは、総合CPI、コアCPIともに予想を下回りました。アメリカの物価の低下傾向が明確になり、米ドルの下落に繋がりました。

CPIの結果は総合CPIが3.0%(予想3.1%)、コアCPI4.8%(予想5.0%)となりました。特に、コアCPIが5%を下回った影響は大きいでしょう。

エネルギー価格や中古車販売の価格も大きく下落しています。物価上昇は峠を超えたと考えていいでしょう。

CPI発表後は、主要通貨に対して米ドルは下落しています。この米ドル売りも、ドル円の下落の材料の一つです。

5.ドル円のトレード戦略

プロトレーダーの筆者としては、ドル円は、上がったタイミングでショートポジション構築していくFX戦略が、選択肢の一つとなると考えます。

チャートから、上方向の圧力は後退していると分かります。ファンダメンタルズを見ても、アメリカの利上げスタンスへの期待は強くはならないと想定されます。

ドル高材料はなく、2022年のようにドル円が150円を付ける可能性は低いでしょう。145円のレジスタンスは突破できないと考えています。

ドル円チャート
※図はTradingViewより筆者作成

チャートで見ると、最初のサポートラインは、今回反発している138円付近となっています。フィボナッチリトレースメントで見ても3分の1戻しの位置で推移しており、止まりやすい水準と言えるでしょう。

戻り売りを検討する場合は、5月下旬につけた140.90付近を目安にしてみてください。損切の目安は、145円になるでしょう。

利益確定ラインは、130円を目安としてみてください。フィボナッチリトレースメントで見る半値戻しの位置であり、サポートラインでも機能しています。

ポジションを構築する際には、相場の上昇と共に、少額ずつショートポジションを構築しましょう。

ただしドル円は下落すると仮定し、ショート(売り)ポジションを構築する場合、注意したいポイントがあります。

2023年7月現在のドル円相場は、7月の日銀の金融政策転換を意識したポジション調整の結果です。日銀が金融政策変更を否定する発言を出せば、反発しやすい地合いになります。

また日米の金利差は拡大しており、ショートポジションのスワップポイントが大きくマイナスとなります。1日2pips程度のマイナスが発生することは、知っておきましょう。ショートポジションを持ち続ける場合は、1ヶ月で60pips程度のマイナスを覚悟しなければなりません。

ドル円は、下落したタイミングでのショートカバーが入りやすい地合いです。プロトレーダーの筆者としては、下落トレンドの長続きはしないと想定しています。下落しても一旦は135円付近が意識されるでしょう。

6.まとめ

プロトレーダーの筆者がドル円の暴落の背景とFX戦略を解説しました。

相場が下落しているタイミングでは、新規の売りで下落しているのか、ポジション調整で下落しているのかをまず考えましょう。今回は、ポジション調整が原因です。

チャートは完全に下落方向で推移しており、トレンドが反転しているとも考えられます。そのため、今後は新規の売りが入りやすくなる可能性があります。FRBや日銀政策会合に注目してトレードを行いましょう。

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