中国発、ブロックチェーンユニコーン企業「杭州趣链科技(Hyper Chain)」の成長と今後の展望

今回は、杭州趣链科技(Hyper Chain)について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 杭州趣链科技(Hyper Chain)とは何か
    1-1. 杭州趣链科技(Hyper Chain)の全貌
    1-2. 中国のブロックチェーン業界初のユニコーン企業
  2. 杭州趣链科技(Hyper Chain)の製品
  3. 杭州趣链科技(Hyper Chain)のソリューション
  4. 杭州趣链科技(Hyper Chain)の最新情報
    4-1. 香港国際革新技術展示会への参加
  5. まとめ

スタートアップの分野で使用される用語「ユニコーン企業」がありますが、創業10年以内で評価額10億ドル以上、また未上場且つテクノロジー企業であるという条件をすべて満たした企業のことを言います。2022年9月時点における世界のユニコーン企業数は1,404社、 このうちアメリカには703社、中国には243社が存在すると報告されています。

その中でも今、脚光を浴びているのが、中国ブロックチェーン業界の初ユニコーン企業、「杭州趣链科技(Hyper Chain)」です。杭州趣链科技は技術力の高さから業界のリーダー的存在となり、ブロックチェーン技術を軸にした各種のプロダクトやソリューションを提供しています。

今回は、注目の「杭州趣链科技(Hyper Chain)」について、その全貌と事業内容を掘り下げてみたいと思います。

①杭州趣链科技(Hyper Chain)とは何か

1-1. 杭州趣链科技(Hyper Chain)の全貌

Hyper Chain

「杭州趣链科技(Hyper Chain)」とは、2016年に設立され、中国の杭州に本社を置くブロックチェーン技術とソリューションのグローバルプロバイダーを指します。杭州趣链科技はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を信条とし、各クライアントに最適なソリューションを提供することを目指しています。

DXとは、社会全体がデジタル技術を活用し、生活の質を向上させるための取り組みです。具体的には、企業がビッグデータなどの情報やAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などのデジタル技術を用いて業務を改善するだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革します。それにより組織文化や風土も更新し、競争力を維持・強化することをDXと言います。

杭州趣链科技は、クライアントがDXの取り組みを進める一助となるよう、豊富な知識と卓越した技術力を生かしたサービスとソリューションを提供しています。

1-2. 中国のブロックチェーン業界初のユニコーン企業

杭州趣链科技は、中国のブロックチェーン業界で初めてユニコーン企業となったことでも知られています。杭州趣链科技は、その高い技術力を武器に短期間で急成長を遂げ、設立からわずか5年後の2021年には、数億元規模のCラウンド資金調達を成し遂げました。これにより、ブロックチェーン業界で初めての中国ユニコーン企業となりました。

ユニコーン企業が特にアメリカや中国に集中している理由は、ベンチャーキャピタルからの積極的な投資があるからです。その結果、スタートアップ企業は自社の事業に取り組むための財源を確保し、新たなチャレンジを行うことが可能となっています。その一方で、我々日本のユニコーン企業の数は、アメリカと比べると約54分の1にとどまっているのが現状です。これは、日本のベンチャーキャピタルからの投資額が他国に比べて少ないこと、起業家の数が世界的に見て少ないこと、人材の確保が困難な状況が続いていることなどが要因となっています。アメリカや中国では、ベンチャーキャピタルや個人投資家からの投資が積極的に行われており、それが企業の資金調達と成長を後押ししています。しかし、日本では大量の資金を調達することが一般的には困難で、このような環境がユニコーン企業の出現を阻んでいると言えるでしょう。

②杭州趣链科技(Hyper Chain)の製品

Hyper Chain

杭州趣链科技が提供する製品の一つに「Hyper Chain」というブロックチェーンプラットフォームがあります。Hyper Chainは、アプリケーション数と事業規模が世界最大級のアライアンスチェーンとして、信頼性の高さと価値の相互接続が可能な分散型エンタープライズ向けインフラを構築しています。

具体的には、その高性能でスケーラビリティが高く、汎用性があり、操作やメンテナンスも比較的容易であるため、政府を含む様々な業界で広く活用されています。

BaaSプラットフォーム「BlocFace」

杭州趣链科技は、BaaS(Banking as a Service)プラットフォーム「BlocFace」を提供しています。

BaaSは「Banking as a Service」の略で、銀行の機能やサービスをモジュール化し、さまざまな企業がこれらを自社サービスに組み込んで利用できるようにするための仕組みです。従来のシステムでは、金融機関以外の企業が決済、送金、融資などの金融サービスを提供することは難しいとされてきました。しかし、APIを介して銀行システムに接続することで、これらのサービスを自社のサービスの一部として提供することが可能になります。

BlocFaceはBaaSのプラットフォームとして、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行など、30以上の大手および中規模の金融機関や大企業にサービスを提供しています。BlocFaceはプロセスを簡素化し、BaaSプラットフォームをワンストップで構築し、企業が簡単に自社サービスに組み込むことができるようにサポートしています。さらに、BaaSプラットフォームを構築するだけでなく、それらを視覚化することで、より便利に管理および活用することが可能となります。

データプラットフォーム「BitXMesh」

杭州趣链科技は、「BitXMesh」というデータプラットフォームを提供しています。BitXMeshはブロックチェーンとマルチパーティ・コンピューティングの技術を用いて杭州趣链科技が独自に開発したプラットフォームで、新たなデータ共有ソリューションとして活用されています。

ブロックチェーンの持つ偽造や改ざんが困難な特性を利用し、データの循環プロセスにおける信頼性の問題を解決しています。また、高性能のアルゴリズムと組み合わせて、オンチェーンおよびオフチェーンのデータを安全な状態で共有できる環境を実現しています。

BitXMeshでは、ブロックチェーンとマルチパーティ・コンピューティングの技術を組み合わせることで、データのプライバシーを保ちながら、透明性と信頼性を兼ね備えたプラットフォームを提供しています。

飞洛印(Feiluoyin)

杭州趣链科技は、「飞洛印(Feiluoyin)」というデータの価値を保護するプラットフォームを提供しています。

飞洛印は、ビジネスのトレーサビリティ、データ資産、著作権、ブランド権利などを保護する目的で開発されたワンストップのデータ保護プラットフォームです。このプラットフォームでは、公証役場、裁判所、知的財産センターなどの権威ある機関と連携し、司法サービス関連のアライアンスを構築します。これにより、企業や個人に対して、効果的なデータ証拠の寄託、侵害証拠の収集、オンライン公証などのサービスを提供します。

クロスチェーンプラットフォーム「BitXHub」

杭州趣链科技は、「BitXHub」というクロスチェーンプラットフォームを提供しています。BitXHubは、同社が自ら開発したオープンソースのクロスチェーン技術プラットフォームで、異なるブロックチェーン間の価値移動を可能にし、新世代のクロスチェーン基盤の構築を目指しています。

BitXHubは、「リレーチェーン」など杭州趣链科技の先進技術を用いて、異なるブロックチェーン間でのトランザクションの捉え方や送信、検証といった課題に取り組み、安全かつ効率的なクロスチェーンサービスを提供します。

さらに、相互運用性を確保することで、様々なサービスへの導入を可能にします。なお、2022年には中国の著名なICTシンクタンク「中国情報通信研究院」の「信頼できるブロックチェーン評価」で、評価を全て通過した初めてのクロスチェーンプラットフォームとして、高い評価を得ています。

③杭州趣链科技(Hyper Chain)のソリューション

スマートシティ

杭州趣链科技は、ブロックチェーン技術を活用して、都市管理の知性化と精度向上を推進しています。ブロックチェーンの基盤となるインフラに着目し、スマートコントラクトやデジタルID、データ共有、プライバシー計算といった多次元ブロックチェーンのコア機能を提供することで、スマートシティの実現を目指しています。

さらに、デジタルIDサービスを提供し、個人や企業が自分たちのデータを収集し、電子ポートフォリオを作成するためのサポートも行っています。

デジタルファイナンス

杭州趣链科技は、ブロックチェーン技術を活用して、一層完璧な金融ネットワークを構築し、デジタルファイナンスの質向上を支えています。具体的には、金融業界での情報共有、データプライバシーの保護、金融業務の監視といった課題を解決すべく、ブロックチェーンやマルチパーティ計算などの先端技術を導入し、データの価値を最大化しています。

さらに、中国人民銀行を始めとした様々な金融機関や政府と提携し、データのプライバシーを効率的に守り、データ利用の効率を高めるシステムを作り上げています。

行政のデジタル化

杭州趣链科技は、ブロックチェーン技術の最大の特性である高い信頼性を活かし、政治や法律の分野でのデジタル化を推進しています。具体的には、公安、検察、司法部門の連携による「アライアンスチェーン」を構築し、「ブロックチェーン+データ共有」のモデルを確立。これにより、行政機関間で各種情報をリアルタイムに共有できる環境を整えています。

ダブルカーボンの推進

杭州趣链科技は、ブロックチェーン技術を駆使してエネルギー産業の変革に寄与し、「ダブルカーボン」の目標達成に向けたソリューションを提供しています。

「ダブルカーボン」とは、中国が2020年から取り組んでいる脱炭素政策を指す言葉です。具体的には、2030年までに温室効果ガス排出を減らし始める「カーボンピークアウト」と、2060年までには温室効果ガス排出をゼロにする「カーボンニュートラル」の二つの目標を設定しています。

ダブルカーボンの目標達成を支援するため、杭州趣链科技はカーボンマネジメント企業、コンサルティングエージェンシー、カーボンアセットマネジメント企業向けのプラットフォームを開発。より効率的で精度の高い炭素資産管理サービスを提供しています。

企業のデジタル化

杭州趣链科技は、ブロックチェーン技術を駆使して企業のデジタル化を推進し、新しいビジネスモデルへの適応をサポートしています。公証人や裁判所などと協力し、トレーサビリティ認証アライアンスを構築。製品の追跡可能性、偽造防止認証、クロスセル管理、デジタルマーケティングなどのソリューションを提供しています。

デジタルビレッジ

杭州趣链科技は、農村の再生戦略に取り組みながら、農業開発でブロックチェーン技術の活用を促進。デジタル化された村落の構築を支援しています。具体的には、「農産物追跡プラットフォーム」の開発により、各製品の追跡性を確保。商品の偽造防止や政府監督、農業と農村地域、農家の設備管理の効率化を実現しています。

デジタル著作権

杭州趣链科技は、ブロックチェーン技術を活用して、信頼性の高い安全なデジタル著作権システムを構築。データ価値保護プラットフォーム「飛洛印(Feiluoyin)」などを通じて、各データの価値を徹底的に保護しています。

④杭州趣链科技(Hyper Chain)の最新情報

4-1. 香港国際革新技術展示会への参加

2023年4月12日から15日にかけて開催された「香港国際革新技術展示会(香港国际创科展)」。この会場では、デジタルビジネス、AI(人工知能)、科学技術分野の主要企業が最新の技術ソリューションを発表しました。

杭州趣链科技もこの重要な会議に参加。その場で海外展開への意欲を表明しました。展示会を新たな機会と位置づけ、ブロックチェーンの技術進化を海外に発信し、グローバルなデジタル時代の発展に貢献したいという意志を述べています。中国国内で既に大きな影響力を持つ杭州趣链科技が、これから海外への展開を進めるとのことで、その展開策に大きな注目が集まっています。

⑤まとめ

中国のブロックチェーン業界で初めてユニコーン企業の称号を獲得した杭州趣链科技は、中国国内の関連業界をリードしています。その優れた技術力により、多様な製品やソリューションを展開しています。杭州趣链科技が提供する製品やソリューションは、企業だけでなく政府機関でも導入され、国全体のデジタル変革(DX)を推進する力となっています。
また、今後は国内だけでなく海外へのビジネス展開を積極的に進めるとのこと。これからの動きがますます注目されます。

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