日本とアメリカの不動産取引の違いは?流れやポイントを徹底比較

海外の不動産を所有することには、資産分散や外貨獲得などのメリットがあります。また、日本の不動産と違って、アメリカの不動産市場には築年数が数十年以上経過している物件も数多く流通しているため、運用次第で転売益を獲得することも可能です。

しかし、アメリカの不動産取引には日本国内の不動産取引と異なるポイントが複数あるほか、日本とは反対の考え方に基づく特徴もあります。

この記事では、アメリカ不動産の取引に関する流れや、日本国内の不動産取引と比較して異なるポイントについて解説します。

目次

  1. アメリカにおける不動産取引の流れ
    1-1.エリア選定
    1-2.不動産エージェントを探す
    1-3.候補物件を探す
    1-4.購入申込とローンの申込
    1-5.エスクロー開設
    1-6.インスペクション
    1-7.購入決済と引渡し処理
  2. アメリカと日本の不動産取引の違い、注意したいポイント
    2-1.不動産エージェントについて
    2-2.手付金の割合
    2-3.契約不適合責任の有無
  3. まとめ

1.アメリカにおける不動産取引の流れ

1-1.エリア選定

アメリカの不動産を購入するにあたっては、日本の不動産を購入する場合と同じくエリア選定から始めます。

なお、日本で不動産取引について定められた宅地建物取引業法は、どこの都道府県で不動産取引をする場合でも共通です。しかし、アメリカでは不動産取引に関する規制が州によって異なっています。このため、アメリカでは不動産エージェントが自ら活動する州とは別の州で不動産取引を取扱うことは基本的にありません。

アメリカ不動産を購入する上では、不動産エージェントを探す前の段階でどこの州にするか判断することが必要です。また、日本の都道府県と比較するとアメリカの州は広いので、州を決めたら都市についても決めておくことが望ましいと言えます。

1-2.不動産エージェントを探す

不動産購入先の都市に当たりをつけたら、その都市で活動している不動産エージェントを探します。あるいは、物件から探してその物件取引を扱えるエージェントを探しても問題ありません。

例えばRedfinzillowなどのアメリカ不動産ポータルサイトでは、その物件取引を取扱える不動産エージェントが、物件ごとに一覧で表示されます。各不動産エージェントには評価や口コミがついているため、評価を参考にしながら探すのも1つの方法です。

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あるいは、選んだ都市に日本の不動産会社が進出している場合は、その不動産会社宛に問い合わせても良いでしょう。日本語でコミュニケーションを取れるので、情報収集などをスムーズに進められます。

例えば、アメリカ不動産の販売・管理・売却などで国内トップクラスの実績がある不動産会社に「オープンハウス」があります。購入後も管理を丸ごと代行できるので、言葉の壁や時差、現地の慣習によるトラブル対応も依頼でき、初心者の方や日本国内から遠隔で運用していきたい方も検討しやすい不動産会社と言えるでしょう。

また、購入時にはグループ会社のアイビーネットの融資プランを活用することで、購入する不動産を担保として最大で70%まで融資を受けられるという点もメリットです。

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1-3.候補物件を探す

購入物件の候補は上述したRedfinやzillowなどの不動産ポータルサイトを利用すれば探せます。または不動産エージェントから物件情報をもらうことも可能です。

なお、Redfinやzillowは、日本で言うところのSUUMOやアットホームなど、一般ユーザー向けに公開されている不動産ポータルサイトです。日本にはレインズという不動産業者専用の不動産サイトがありますが、アメリカにもMLS(Multiple Listing Service)という不動産業者専用のサイトがあり、こちらは州ごとの不動産協会が管理しています。

MLSにはRedfinやzillowに掲載されていない物件の情報が登録されていることも少なくありません。このため、不動産エージェントがMLSで検索した物件情報の中には、貴重なものが含まれている場合もあるでしょう。

なお、日本で不動産を購入する場合と同じく、アメリカ不動産を購入する場合も事前に現地を見に行く方が望ましいと言えます。現地の雰囲気や都市の特徴など、日本から調べるだけではわからない情報は多いものです。

また、海を跨いで現地まで足を運ぶことで物件選びにかける熱意が不動産エージェントに伝わり、よりよい物件を紹介してくれる可能性もあります。

1-4.購入申込とローンの申込

購入する物件を選んだら、不動産エージェントを通じて購入申込書を出します。これは日本で言うところの申込書または買付証明書と同じようなものです。購入申込書の提出にあたって、売主側と値引き交渉もできます。

ただし、売主は複数の申込書を受け取った場合に買手を選別することがあるので、あまり無理な交渉はしない方が無難です。交渉内容については不動産エージェントと相談して決める方が良いでしょう。

また、物件購入に当たってローンを利用する場合は事前審査の手続きをします。なお、アメリカ現地で継続的な収入を得ていない限り、アメリカ現地の金融機関から融資を受けられる可能性はとても低いのが実態です。

ローンを利用するならば、基本的に日本の金融機関を利用することになるでしょう。また、例えばハワイ不動産であれば融資するなど、日本の金融機関は融資対象を州ごとに決めています。最初にエリアを選定する段階で、ローンの利用可否についても確認しておく方が良いでしょう。

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1-5.エスクロー開設

購入価格や引き渡し時期など、物件の購入条件に関する交渉がまとまったらエスクローの開設に移ります。エスクローとは、不動産エージェントとは別にアメリカ不動産の取引を仲介する第三者です。

アメリカでは、取引条件などに関与しないエスクローを間に挟むことで、不動産取引の公正さを保つ仕組みが採用されています。購入資金の入金はエスクローの口座宛に行い、売買契約書のやり取りもエスクローを介して行われます。

エスクローを開設したら手付金をエスクロー口座に送金し、売買契約書にサインします。アメリカには印鑑が無いため売買契約書に関する手続きはサインのみです。

なお、1度売買契約書にサインすると、後で買手に不利な内容が見つかったとしても修正できません。アメリカ不動産の売買契約書は全て英語で書かれていますが、サインする前には契約内容をしっかりと確認し、疑問点については積極的に質問して解消することが大切です。

1-6.インスペクション

手付金の送金と売買契約の締結が完了したら、インスペクションを実施します。日本でも、2018年4月1日から宅建業者に建物状況調査(インスペクション)の告知・斡旋が義務化されており、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

インスペクションとは事前の物件調査のことです。購入する不動産の設備に不具合はないか、木造住宅などであれば特に、シロアリ被害などはないかといった点について、専門家による調査を行います。

売買条件の交渉で売主から認められている場合は、売買契約を締結してから一定期間は購入のキャンセルも可能です。インスペクションによって重大な欠陥などが見つかった場合は、物件購入自体をキャンセルするのも1つの選択肢です。キャンセルしない場合は、売主負担による修繕について交渉します。

なお、アメリカにおいてインスペクションは実施を義務付けられているものではなく、買主の任意で行うものとされています。このため、インスペクションの実施費用は買主負担となります。

日本のインスペクションにおいても告知・斡旋が義務付けとなりますが、実施義務はなく、費用についても買主負担となるケースが大半です。2023年時点、アメリカのようにインスペクションの文化が根付いている状況とはいえないものの、法改正を機に徐々に認知されつつある状況であるといえます。

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1-7.購入決済と引渡し処理

特に建物の不備が見つからなかった場合は、引渡し日に向けた購入決済に移ります。なお、購入決済にあたっては指定金額よりも多めに送金するのが無難です。

日本人がアメリカ不動産を購入する場合は、日本の銀行から円で資金を送金し、アメリカの銀行口座にドルで着金することになります。着金額は着金日付の為替レートによって変わるため、資金が着金するまでの間に大幅な為替変動があった場合は、決済資金が不足することも起こり得ます。資金が不足すると決済が完了しないため、資金不足にならないよう注意しましょう。

決済資金の着金が確認されると、所有権移転登記の手続きに移ります。登記済証がエスクローから発行されたら、内容を確認してから紛失しないように保管することが重要です。

2.アメリカと日本の不動産取引の違い、注意したいポイント

既に解説したエスクローの存在以外にも、アメリカの不動産取引には日本と違う点がいくつかあります。不動産エージェントの選び方に関わる点などもあるので、安全に取引を完了させるためには、各ポイントを把握しておくことが必要です。

2-1.不動産エージェントについて

アメリカの不動産エージェントは、日本の不動産営業と違って個人事業主がその大半を占めています。不動産会社に属しているエージェントでも、その会社が持っているシステムを利用しているだけで、個々に独自の活動をしているというケースは少なくありません。

このため、ウェブでアメリカ人の不動産エージェントについて調べると、個人のホームページしかヒットしないということも多いものです。

また、アメリカの不動産エージェント資格には「ブローカー」と「セールスパーソン」の2種類があります。ブローカーは不動産会社を経営して他のエージェントを雇用できる資格です。一方で、セールスパーソンは自ら経営者となって他のエージェントを雇用することができません。

日系の不動産会社を利用するのならば、エージェントの保有資格はそれほど気にしなくても良いでしょう。しかし、アメリカ人の不動産エージェントを頼る場合は、保有資格について確認することが、その不動産エージェントの質を見極めることにつながります。

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2-2.手付金の割合

日本の不動産取引では、手付金は売買価格の10%に設定することが大半です。しかし、アメリカ不動産の取引では売買価格の3%~5%が相場となっています。5%より高い割合の手付金を要求された場合は、割引について交渉するのも1つの選択肢です。

2-3.契約不適合責任の有無

日本では、売買する物件の状態と契約書(附属書類)に掲載されている物件の状態とを一致させることが売主に義務付けられており、これを契約不適合責任と言います。

一方で、アメリカでは契約不適合責任の考え方がありません。引渡し後に物件の不具合が見つかったとしても、引渡し前に物件の状態を確認しなかった買主の責任となるため要注意です。

このため、インスペクションの実施は任意ですが、後のトラブルを防止するためには実施することが推奨されます。

まとめ

日本の不動産取引とアメリカの不動産取引で異なるポイントは複数ありますが、最も注意すべきポイントは不動産エージェントと契約不適合責任に関するものです。

日本では、不動産会社の規模や会社単位での取り扱い取引件数などを確認することが不動産会社の質を見極めることにつながります。しかし、アメリカ人の不動産エージェントを頼る場合は、個人ごとに実績を確認することが必要です。

また、物件の引渡し後に見つかった不具合は買主の責任となる点にも要注意です。契約不適合責任の有無について把握できていないと、引渡し後に大きなトラブルとなる可能性があります。

日本国内からアメリカ不動産の情報収集を行う場合には、時差や言語の壁、またエリアごとの実際の雰囲気が分からないなど、いくつかのハードルがあります。初心者の方や、アメリカの不動産取引においてトラブルをできるだけ回避したい方であれば、まずは現地に進出している日系不動産会社を検討されてみると良いでしょう。

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