米製鉄スタートアップのボストン・メタル、シリーズCで380億円調達。製鉄の脱炭素化と鉄鋼業界の変革目指す
製鉄スタートアップ企業ボストン・メタルは9月6日、シリーズC(資金調達ラウンド)で2億6,200万ドル(約380億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、製鉄の脱炭素化と鉄鋼業界の変革に向けた取り組みを加速させる。
今回の資金調達ラウンドでは、サウジアラビアの石油大手サウジアラムコのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるアラムコベンチャーズや、英資産運用会社ベイリー・ギフォードなどが新たに加わった。
ビル・ゲイツ氏やジェフ・ベゾス氏らが支援するブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズやマイクロソフトの気候イノベーションファンド、BHPベンチャーズといった既存投資家も今回のラウンドに加わっている。23年5月には、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)も同社に2,000万ドルの資金を拠出した。
ボストン・メタルは調達資金を活用し、高付加価値金属事業の展開を加速させ、鉄鋼業界の脱炭素化のための溶融酸化物電解(MOE)プラットフォームを商業的に実証する計画だ。
鉄鋼生産における従来からの高炉法は、鉄鉱石と石炭を原料とし、複数のプロセスを経て大量の二酸化炭素(CO2)を排出する。また、直接水素還元法はCO2の排出量が相対的に少ないものの、複数の生産プロセスを踏み、高品位なグレード(等級)の鉄鉱石を必要とする。
それに対し、ボストン・メタルは、MOEと呼ばれる手法を用いる。これは、再生可能電力を使用し、埋蔵量が多い低・中品位を含むあらゆるグレードの鉄鋼石を利用でき、エネルギー効率が高いワンステップのプロセスで、CO2を排出しないグリーンスチールを生産する。処理水、危険な化学物質、貴金属の触媒を必要としないため、環境負荷を低減させ、なおかつ従来よりも低コストで生産できる。
鉱山会社にとっては、現在廃棄物と見なされている低品位鉱から高品質な金属を生み出せるようになり、新たな収益源の確保が可能だ。
また、ボストン・メタルが採用するMOEのリアクターはスクールバスほどの大きさであり、モジュラー型のため、世界中で鉄鋼の生産量を数千トンから数百万トンまで拡大できるテイラーメイドのソリューションとなる。
鉄鋼は自動車やオフィスビルなど、我々の世界の基礎を成している。毎年、約20億トンの鉄鋼が生産されており、これはエッフェル塔28万5,714基に必要な鉄鋼に相当するという(*2)。
一方、製鉄は極めて炭素集約型の産業であり、毎年約32億トンのCO2を排出し、世界のCO2排出量の約10%を占めている。国であれば、世界で5番目に大きなCO2排出源となっている。
世界が2050年ネットゼロ社会の実現を目指す中、鉄鋼業界は収益性と効率性を高めると共に、脱炭素化に向けた取り組みの加速が求められている状況だ。そのような中、大規模に鉄鋼生産を脱炭素化できるボストン・メタルに関心が高まっている。
同社は、24年に最初の高付加価値金属を出荷し、26年までにMOEを鉄鋼市場に投入することで、2050年ネットゼロ目標達成への貢献を目指す。
【参照記事】*1 ボストン・メタル「Boston Metal Closes $262M Series C Funding Round to Decarbonize Steelmaking and Disrupt the Metals Industry」
【参照記事】*2 ボストン・メタル「Transforming Steel Production」
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米製鉄スタートアップのボストン・メタル、シリーズCで380億円調達。製鉄の脱炭素化と鉄鋼業界の変革目指す