自宅でサステナブルな電力を使う方法は?太陽光発電、サステナブルな電力会社についても
燃料価格の高騰により、電力価格が上昇しています。電気の利用には化石燃料が多く使われていることを改めて認識し、環境負荷が気になり始めた方もいるかもしれません。
再エネ電気プランや太陽光発電など、サステナブルな電力を利用したいけれど、種類が多い上に歴史が浅く、どうやって利用するのか、またどのように選べば良いか、戸惑う方も多いでしょう。
本記事では、具体的なサービスや選び方をご紹介します。
※本記事は2023年10月11日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 家庭からのCO2排出量の内訳1位は電気利用
- 自宅でサステナブルな電力を使うには
2-1.発電設備を設置する
2-2.再エネ電気プランへ切り替える
2-3.再エネ共同購入 - サステナブルな電力の選び方
3-1.サステナビリティに対する貢献度
3-2.手軽さ
3-3.コスト面
3-4.各社のユニークな取り組み - まとめ
1.家庭からのCO2排出量の内訳1位は電気利用
環境省が令和5年3月に発表した「家庭部門の CO2排出実態統計調査結果の概要(令和3年度)」によると、1世帯当たりの年間CO2排出量の内訳で最も多かったのは電気利用の66.4%となっています。
参考:環境省「令和3年度家庭部門の CO2排出実態統計調査 結果の概要(確報値)」
家庭の電力利用は大きな割合を占めていますが、自宅をサステナブルな発電方法の電力に変えることで、家庭からのCO2排出を大幅に減らすことができます。
2.自宅でサステナブルな電力を使うには
サステナブルな電力を活用するにはどのような方法があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
2-1.太陽光発電設備を設置する
まず一つ目の方法として、太陽光発電設備を自宅などの屋根に設置する方法があります。「屋根置き太陽光発電」と呼ばれる仕組みで、既存の住宅にも設置できる場合があるので、一戸建てにお住まいの方は検討しても良いでしょう。
メリットを見てみましょう。
- 電気代の節約になる
- 停電時も利用できる
- 自治体の補助金を活用できる場合がある
- 余った電力の売却による収入(売電収入)が得られる可能性がある
参考:環境省再エネスタート「再生可能エネルギー導入方法」
参考:東京電力エナジーパートナー「【2023年版】太陽光発電のメリット・デメリットを初心者向けにわかりやすく解説!」
一方デメリットもあります。
- 設置コストが高い(計算上では84万~140万円程度)
- メンテナンスが必要である
- 発電量が天候に左右され、想定した効果が得られない可能性がある
設置コストについては、「0円ソーラー」と呼ばれるリース契約のプランも存在します。設置時の大規模な費用がかからない代わりに、毎月数千円の月額利用料を契約期間中に(10年程度の事業者が多い)払う仕組みになっています。契約期間以降は設備が無償譲渡されます。
導入の手順としては、まずは取扱店に相談となります。その後、取扱店により現地調査・見積もりなどが行われ、導入が可能と判断されれば発注、工事を行い、利用開始という流れです。
参考:環境省再エネスタート「再生可能エネルギー導入方法」
なお、屋根の形状や、住居自体の耐久性によっては、設置できない場合があることも留意する必要があります。
2-2.再エネ電気プランへ切り替える
太陽光発電設備の設置は、集合住宅の場合は適さず、費用面や工事が必要といった理由で、導入が難しいケースが多いと思います。障壁が低く、取り入れやすい方法としては、再生可能エネルギー(以下再エネ)電気プランに切り替えることが選択肢になるでしょう。
利用の手続きはシンプルです。電力会社を切り替える時と同じ流れで、事業者を選択、申込みを行い、利用開始となります。従来の電力会社の解約作業は不要です。
再エネ電気プランを提供している電力会社は多数あるものの、今回は2つの会社を例としてプランを見ていきましょう。
みんな電力
みんな電力は、電気の生産者が明確であるという透明性がアピールポイントの、ユニークな電力会社です。
参考:みんな電力「トップページ」
同社の「プレミアム100プラン」は、再エネ発電所で作られた電気が100%となるプランです。やむを得ない場合には、再生エネ比率が100%とならないこともあるものの、再エネ指定の非化石証書によりCO2排出係数ゼロの電気を供給します。
内訳は、再エネが40%、が60%です。FIT電気とは、固定価格買取制度(FIT)によって電気事業者に買い取られた電気を指します。
なお、同社の「スタンダードプラン」は、再生可能エネルギー、FIT電気の構成比が合計80%であり、サステナブルな電力100%にはなっていません。同社に限らず、一部が再エネ由来というプランを提供している会社は多いので、切り替え時にはよく確認しておきましょう。
参考:みんな電力「電気料金プラン一覧」
ハチドリ電力
ハチドリ電力は、再エネ100%の電力のみを販売している点が特徴的な電力会社です。再エネ指定の非化石証書購入により実質的に再エネ100%の電気供給を実現しています。
電力プランは、構成比による区別はありません。大手電力会社と同額の基本・電力量料金単価を適用しており、地域ごとにプランが分かれています。馴染みのある料金体系に近いため、分かりやすく感じる方もいるでしょう。
参考:ハチドリ電力「料金プラン」
2-3.再エネ共同購入
太陽光発電設備の設置・再エネ電気プランへの切替え両方において、条件が合えば再エネ共同購入という仕組みを活用することで、通常よりも安くサステナブルな電力を導入できる場合があります。
太陽光発電設備の共同購入については、太陽光発電設備等を数量限定で一括して発注し仕入れることでスケールメリットを生み、通常よりも安い費用で設備が購入できる仕組みです。通常よりも20%程度割安になる事例もあるようです。
参考:太陽光発電共同購入キャンペーン「太陽光発電共同購入キャンペーンとは」
再エネ電気プランの共同購入は、多くの参加者が集まることで、再エネ電気プランを通常より安く利用できる仕組みです。例えば横浜市で実施されているサービスの場合、期間内に登録を行うと、事務局が選んだ最も安価な再エネ電気プランの見積もりを受け取ることができます。最終的には、内容を確認した上で正式に切替えの申し込みを行います。
参考:みんなでいっしょに自然の電気「キャンペーンの流れ」
申し込みができる期間などが限られているため、活用したい場合にはこまめに情報をチェックしておきましょう。
3.サステナブルな電力の選び方
サステナブルな電力への切替えに対しては、さまざまな選択肢があります。どんな観点で選べば良いのかを、考えるためのヒントをご紹介します。
3-1.サステナビリティに対する貢献度
「サステナブル」という観点では、切り替えることでどのくらいCO2を削減できるかが、大切なポイントになってくるでしょう。
自宅に太陽光発電設備を導入しても、100%サステナブルな電力を利用できるとは限りません。太陽光発電で生み出すことのできる電力は限界があることや、発電量が天候に左右されること、夜間は発電ができないことから、家庭での消費電力の全てを太陽光発電で賄うことは、現実的には厳しいと考えられるからです。
100%再エネを使用したい場合は、発電設備の導入と並行して、契約する電力プランも相応のものにする必要があります。自分の価値観を電力選びに取り入れることは、日々の満足感を高めてくれると思います。よく比較検討してみると良いでしょう。
また、電力会社やプランによって、再生可能エネルギーの割合は違うため、申込み前に確認をしておきましょう。前述の「みんな電力」の「スタンダードプラン」は、2割ほど再生可能エネルギーではないものを含みます。一方で、「プレミアム100プラン」や、「ハチドリ電力」の全プランは、100%再生可能エネルギーです。
「CO2削減の貢献度」とは少し観点が違うものの、実際に再生可能エネルギーで発電された電力を使いたい、という点にこだわる方は、電源構成比も確認する必要があります。その理由は、火力発電等によって作られた電気であっても、「非化石証書」という仕組みを使うことで実質的に再生可能エネルギーを利用しているとみなされている場合も多いからです。
「非化石証書」とは
まず、電力小売業者が再生可能エネルギーを提供する方法としては、次の2つがあります。
- 太陽光発電や水力発電など再生可能エネルギーの発電所から直接買い取る方法
- 非化石証書を付けて、市場から自然エネルギーの分を購入する方法
1の場合は電源構成においても再生可能エネルギーを使った電力と言えるものの、2の場合は事情が少し違います。
発電された電気の多くは、再生可能エネルギーかどうかの区別なく、市場を通して取引されています。そのため、再生可能エネルギーで発電された電力だけを市場で購入することは、通常は不可能です。
解決するための方法が、非化石証書です。再生可能エネルギーとして購入したい電気の分、非化石証書を購入して付帯させることで、区別をしているのです。
参考:ハチドリ電力「よくある質問」
例えば、オクトパスエナジーの提供する「グリーンオクトパス」の電源構成比は、8割近くがLNG火力発電です。これに「非化石証書(再エネ指定あり)」を使用することで、実質的に再生可能エネルギー100%の調達を実現していることになっています。
参考:オクトパスエナジー「電源構成及び非化石証書使用状況」
再生可能エネルギーと記載されていても、よく調べてみると実際の電源は火力発電等が多く含まれる場合があります。気になる場合は、確認してみましょう。
3-2.手軽さ
太陽光発電設備の導入は工事やメンテナンスも必要であるため、決して手軽とはいえません。再エネ共同購入については、申込み期間が決まっていることなどにより、利便性が低いと感じられるかもしれません。
最も手軽なのは、再エネ電気プランへ切り替えることでしょう。他の選択肢を検討している間、プランの切り替えだけは行っておくのも良いと思います。ただし、1年未満の解約により違約金が発生するなどのペナルティが課されるケースがあるため、事前に確認しましょう。
3-3.コスト面
環境のためとはいえ、毎日の生活に関わるため、費用も大切な要素です。
再エネ電気プランについては、各社でシミュレーションをすることができます。正確な計算のためには、現状の使用量と電気代がわかるものが必要になります。あらかじめ準備の上、シミュレーションしてみましょう。
太陽光発電設備の設置については、コストの把握が少し複雑です。まず、主な収入、コスト削減要素、支出を整理します。
収入 | 余剰電力の売電収入、自治体等からの補助金 |
コスト削減要素 | 電気代等の削減効果 (ガス利用からオール電化にする場合、電気自動車を活用する場合は、その分のコスト削減効果も期待できる) |
支出 | 設置にかかる工事費用(0円ソーラーの場合は月額利用料) メンテナンス費用(年1回程度)、故障時の修理費用、使えなくなった設備の廃棄コスト |
これらの要素全てを考慮したシミュレーションを行い、何年程度でメリットが見込まれるのかを確認する必要があります。
なお、ソーラーパネルの寿命は一般に20年〜30年と言われています。メリットが出る年数が寿命を越してしまうと損になる、ということです。
金銭的メリットを出したい場合は、設備の使用可能年数、経年による発電可能量の減少度合い等もしっかりと確認したうえで検討する必要があります。発電できる量にも大きく左右されるため、住んでいる地域の日照時間なども考慮しておくと良いでしょう。
3-4.各社のユニークな取り組み
CO2削減だけではなく、さまざまな取り組みをしている団体を支援できる仕組みを取り入れている電力会社もあります。たとえば、前述のハチドリ電力では、電気料金の1%を選んだ活動に寄付できます。
参考:ハチドリ電力「電気で頑張る人を応援する」
みんな電力では、電気料金から毎月100円を好きな発電所に届けることができる仕組みがあります。
参考:みんな電力「プランの特徴」
4.まとめ
意外かもしれませんが、自宅でサステナブルな電力を使うことは難しくありません。場合によっては、切り替えることで現状より電気代を抑えることも可能になります。
電力をサステナブルなものに切り替えることで、家庭からのCO2排出を大幅に減らすことができます。少しでも環境にやさしい生活がしたいと考える方は、ぜひ検討してみてください。
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