気候変動枠組条約締約国会議(COP)という会議の歴史と変遷
一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12))に解説していただきました。
目次
- 「COP」とは
1-1.「COP」の概要
1-2.「COP」立ち上げの背景 - 「COP」の歴史
2-1.地球サミット
2-2.京都議定書が採択された「COP3」
2-3.先進国と発展途上国の対立が激化した「COP15」
2-4.パリ協定が採択された「COP21」 - 2022年11月に行われた「COP27」
3-1.「COP27」の概要
3-2.シャルム・エル・シェイク実施計画 - まとめ
「COP(Conference of the Parties)」は、国連が主催する気候変動に関する国際会議です。最近では2022年11月6日から11月18日まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクで「COP27」が開かれました。
地球温暖化や気候変動が急速に進行している現状を考慮すると、COPが果たす役割はますます重要になっています。この記事では、COPの基本的な概要とその歴史について詳しく解説します。
①「COP」とは
1-1.「COP」の概要
「COP」とは、「Conference of the Parties」の略称で、日本語では「締約国会議」とも呼ばれます。年一回開催されるこの会議は、「気候変動枠組条約」(UNFCCC)の加盟国が集まり、気候変動対策について話し合います。
具体的には、温室効果ガスの削減を主眼に、各国がどのような手段を取るべきかを協議します。1995年にドイツのベルリンで第1回目が開催されて以来、この会議は既に27回も開かれています。
COPは、気候変動枠組条約の最高意思決定機関とされています。政府代表はもちろん、産業界や環境保護団体の代表も参加して、国際的な基準やルールの策定について議論されます。
1-2.「COP」立ち上げの背景
COPは、地球温暖化とその他の気候変動問題に対処するために設立されました。これらの問題は既に生態系や天候に影響を与えており、食糧供給にも影響を及ぼしています。
例えば、猛暑日や豪雨が増え、北極の氷が減少することで生態系が破壊されています。また、農作物の収量低下も懸念されています。
さらに、2050年には日本の真夏日が年間50日以上に増加するとの推測があり、2100年までには地球の平均気温が最悪の場合6〜7度上昇する可能性があると言われています。
このような課題に対処するため、COPが設立されました。元々は1992年の「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)で取り決められた「気候変動枠組条約(UNBFCCC)」に基づいています。この条約には、温室効果ガス排出量を1990年の水準に抑制するという目標が設けられました。
COPに参加する各国は、この目標に沿った具体的な計画を策定し、実施状況を報告することが求められています。
②「COP」の歴史
2-1.地球サミット
COPの起源は、1992年のブラジル・リオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」、通称「地球サミット」にさかのぼります。この会議には、当時172カ国の代表が参加。気候変動問題を中心に議論されました。
この結果、「気候変動枠組条約(UNBFCCC)」が締結され、1994年3月に発効。この条約の目的は、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化することで、それを受けて1995年から毎年、COPが開催されています。
2-2.京都議定書が採択された「COP3」
1997年の第3回「COP3」では、先進国に対し、1990年比での温室効果ガスの5%の排出量削減を目指す「京都議定書」が採択されました。この取り決めにより、2008年~2012年の「第一約束期間」中、日本は6%、米国は7%、EUは8%という具体的な数値目標が設定されました。
先進国が温室効果ガスを多く排出しているとの認識の下、彼らに削減の責任が課せられましたが、発展途上国には義務が与えられませんでした。この方針は、気候変動枠組条約の「共通だが差異ある責任」という原則を体現したものです。
さらに、「クリーン開発メカニズム(CDM)」が導入され、先進国が発展途上国の排出量削減活動を支援し、その成果を共有することが可能となりました。
2-3.先進国と発展途上国の対立が激化した「COP15」
2009年の「COP15」は、デンマーク・コペンハーゲンで開催され、先進国と発展途上国の間の排出削減責任に関する対立が前面に出ました。この会議では、京都議定書の第一約束期間の後の取り組み、すなわち「第二の枠組み」が中心テーマでした。
190カ国以上の代表が参加し、約3万人が集まるなど、非常に大規模な会議となりました。しかし、具体的な削減レベルに関する合意は困難で、会議は混乱し、延長されました。結局、「コペンハーゲン合意」が採択され、その内容は以下の通りです:
- 地球の気温上昇を2℃以内に抑える。
- 先進国と発展途上国は、削減目標と行動を2010年1月末までに決定。
- 温室効果ガスの削減成果は、COPのガイドラインに基づいて確認される。
- 先進国は、発展途上国の対策支援として、2020年までに年間1000億ドルを目指して提供する。
しかしその一方で、アメリカと中国はCOP15およびコペンハーゲン合意に参加しておらず、参加した日本やEUなどの基準が厳しくなったに留まったことなどが課題として残る結果となりました。
2-4.パリ協定が採択された「COP21」
2015年11月30日から12月12日までフランスのパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で、2020年以降に適用される新たな地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」が採択されました。
この協定は、先進国だけでなく途上国も含めた全参加国が温室効果ガスの排出削減に取り組むと合意した点で、過去の気候協定とは一線を画すものとなりました。
パリ協定の主な内容は以下のとおりです:
- 産業革命前と比較して、全球の平均気温の上昇を2℃以下に抑える。さらに、1.5℃以下に抑える努力を行う。
- 各国が5年ごとに排出削減の目標を更新する。
- 実施状況は共通かつ柔軟な基準で報告し、評価を受ける。
- 長期的な目標設定や、適応計画の策定とその定期的な更新。
- イノベーションの推進。
- 5年ごとに実施状況を総合的に評価する仕組み(グローバル・ストックテイク)を設ける。
- 先進国からの資金提供と、途上国も自主的な資金提供。
- 市場メカニズム(例:二国間クレジット制度(JCM))の活用。
これにより、パリ協定は2020年以降の新しい気候対策の国際的枠組みとして、すべての国が公平に参加する形となりました。
③2022年11月に行われた「COP27」
3-1.「COP27」の概要
COP27は、2022年11月6日から18日にかけてエジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれました。
この会議で、各国は気候変動対策を強化するための「シャルム・エル・シェイク実施計画」を採択しました。また、2030年を見据えて、温室効果ガス排出の削減に関する「緩和作業計画」が合意されました。
さらに、気候変動による「ロス&ダメージ(損失と損害)」への対策として、特定の基金を設立することが決定されました。
加えて、資金関連の運用手段について、次回のCOP28に向けて具体的な方針を決定するため、移行委員会が設置されることも合意されました。
3-2. シャルム・エル・シェイク実施計画
COP27で注目されたシャルム・エル・シェイク実施計画の主要なテーマについて、詳しく解説します。
・緩和
2030年までの緩和の取り組みを強化する「緩和作業計画」が策定されました。この計画の中心は、21世紀末の世界平均気温を産業革命前と比べて1.5℃の上昇に抑える目標の重要性です。また、2026年までの計画期間中、進捗状況を毎年確認することが決まりました。少なくとも年に2回のワークショップを開催し、その結果を報告する取り決めや、成果を毎年閣僚級ラウンドテーブルで討論することも盛り込まれています。
・適応
COP26で合意された「適応に関する世界全体の目標(GGA)に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」の進捗確認と、最終年の作業進め方が取り決められました。また、横断的課題や優先テーマのフレームワーク設置の議論が始まり、各国の適応方針や他国のサポート方法が定められました。
・気候資金
気候変動の影響に関する長期気候資金や「ロス&ダメージ」基金の設置が決定されました。特にロス&ダメージの資金に関しては、脆弱な国への支援の新たな措置と「ロス&ダメージ基金(仮称)」の設立が決まりました。さらに、長期気候資金の進捗は隔年で報告されることとなりました。
④まとめ
COPは、気候変動問題を討論する国際的な枠組みで、例として昨年開催された「COP27」があります。歴史的に、COPでは京都議定書やパリ協定などの国際的な協定が成立しています。COP27では、現状の削減状況を考慮した新しいロードマップが決定されました。温室効果ガスの削減は今後の産業のキーワードとして注目され、新しいビジネスの機会も増えています。この流れを逃さないためにも、COPに関する知識を深めることをおすすめします。
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