ドル円は急落し130円台に突入するか?アメリカCPIとFOMCも解説【2023年12月】
2023年12月現在、アメリカではCPIとFOMCの内容が発表されました。先に発表された雇用統計が強い数字であったため、注目が集まりました。
本稿ではプロトレーダーの筆者が、アメリカのCPIとFOMCの内容や、市場の反応、トレード戦略を解説します。是非参考にしてみてください。
※本記事は2023年12月18日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
1.アメリカのCPI
指標 | 結果 | 予想 | 前月 |
---|---|---|---|
総合CPI(前月比) | 0.1% | 0.0% | 0.0% |
総合CPI(前年同月比) | 3.1% | 3.1% | 3.2% |
コアCPI(前月比) | 0.3% | 0.3% | 0.2% |
コアCPI(前年同月比) | 4.0% | 4.0% | 4.0% |
アメリカのCPIは、ほぼ予想通りの結果となりました。ポイントは、前月から若干上昇している点です。
仮にサービス価格が低下すれば、労働市場の軟化が確認できたものの、CPIではサービス価格が上昇しており、強い結果であった雇用統計と合致する動きとなりました。2024年1月以降の雇用統計では、労働市場の賃金が低下するのかがポイントになるでしょう。
一方で、家賃は低下しています。強弱混在となり、インフレが低下してきているとは言えない数字となりました。
2.FOMC
FOMCでは、政策金利は据え置きとなりました。予想通りであり、サプライズはありませんでした。
政策金利の据え置きは3会合連続となり、2024年には複数回金利を引き下げる見通しを示し、今後は利上げではなく利下げを行うことを明確に発信しました。利上げ期待は、ほぼなくなりました。
パウエル議長は会見のコメントで「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した。」と述べており、市場参加者を驚かせました。FOMCで公表されるステートメントでも、文言でハト派の姿勢を示しており、総じて今回のFOMCは、市場に利下げを織り込ませたいFRBの意図が見える内容となりました。
インフレに関しても、「この1年で緩和したが、依然として高い水準にある」と述べており、まだまだインフレ率は高いという認識を示しつつも、2023年12月現在の政策金利水準は、概ね均衡が取れていると判断しているのでしょう。
参照:ブルームバーグ「FOMC、3会合連続で金利据え置き-24年に複数回利下げを予想」
FRBは2025年年末のFF金利を3.6%としており、金利低下を予想していることが分かります。FOMCを受けて、短期金利の先物市場では3月の利下げ観測が再度強まっており、雇用統計後に一旦3月の利下げはないと考えていた投資家も、再度利下げを織り込む動きとなっています。
2024年は、年間に6回の利下げが織り込まれているという状況です。利下げを6回すると、合計で1.25%の利下げになります。
出典:CME「FedWatchツール」
利下げの織り込みが行き過ぎかどうかは、今後の経済指標やインフレ鈍化のペースがどのように変化するか次第です。2023年12月時点では、FRBはハト派に転換したと考えるのが自然でしょう。
3.市場の反応
市場の反応をチェックしましょう。ローソク足がドル円、オレンジが米国債10年金利、青色がS&P500指数です。
※図はTradingView[PR]より筆者作成
ハト派となったFOMCを受けて金利が急低下し、ドルが売られる中でドル円は下落する動きとなりました。株式市場はFRBを好感して株高となっており、金利低下と株高が継続しています。
ただしプロトレーダーの筆者としては、どこかで金利低下・株高から、金利低下・株安への変化が見られる可能性があると考えており、金利が低下しているから株式市場はこれからも強くなるとは言えないでしょう。
また、仮想通貨やゴールドも上昇しています。セオリーとしては、ゴールドは通常株安・ドル安の時に上昇するものの、FOMCでは株高とドル安が同時に発生したため、ゴールドが株式市場に反応しなかったと言えます。
4.トレード戦略
4-1.ドル円
FOMCが予想外にハト派のスタンスになったため、ドル売りのトレードを検討している方は多いでしょう。ドル円は141円台まで下落してきており、ドル安の動きが継続していると言えます。また日銀は、そろそろマイナス金利脱却に向けて、何かしらの金融政策が行われる可能性があり、その布石として植田総裁からコメントが出る可能性があります。
一方で日米金利差が拡大しており、ショートポジションではスワップポイントがマイナスになるため、日本円を短期で売ってドルを買うポジションは構築しにくい環境です。ドル円は、戻り売りの戦略を取ることも選択肢の一つでしょう。
プロトレーダーの筆者としては、2023年12月現在のドル円の下落の主因を、ポジション調整と考えており、投資家が新たにドル円のショートポジションを構築しているのではなく、年初から積み上がっていた日本円ショートのポジションの巻き戻しだと考えています。年末やクリスマスを控えて、新たに下落方向でのドル円のポジションを作る機関投資家は少なく、調整が入る可能性もあるため、ドル円は140円付近では底堅くなる可能性があるものの、日銀政策会合の内容次第では130円台後半が視野に入る水準です。
4-2.ユーロドル・ポンドドル
またドルストレートの通貨ペアでは、欧州の景気が悪化している中で、ユーロは弱い地合いとなる可能性があるものの、利下げスピードがアメリカよりも若干遅くなる可能性があります。ユーロドルが大きく反発してきており、アメリカで利下げバイアスが弱まる場合にはユーロドルの反転下落の可能性もあるため、ロングポジションを構築する際には、押し目を待ってエントリーしましょう。
イギリスでは減税措置も行われ、景気刺激策を取りつつインフレもまだまだ高い水準が継続していることから、ポンドドルやユーロドルのロングポジションの構築は戦略の一つとして検討できるでしょう。
5.まとめ
本稿では、アメリカのCPIとFOMC、市場の動きや今後の戦略についてまとめました。アメリカでは大きく金融政策が大きくハト派に傾きつつあり、明確な変更の転換期になる可能性があります。
12月は海外投資家がクリスマス休暇に入るため、相場が急変しやすい傾向があります。焦らず無理のない、余裕を持ったトレードを行いましょう。
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