重要性を増すエネルギー問題、個人にできることは?自治体の取り組み事例も

「国連持続可能な開発サミット」でSDGsの目標として「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」という目標が掲げられ、エネルギー問題がますます重要性を増しています。

加えて、2022年2月に起きたウクライナ侵攻により各国のエネルギー情勢に影響を与えています。世界的にエネルギー価格の高騰が続く中、エネルギーの課題をどのように解決していくのか気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、エネルギー問題の解決に向けてどのようなことができるのか、自治体で始まっている最先端の取り組みについても取り上げていきます。

目次

  1. 持続可能な開発のための2030アジェンダ
    1-1.目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」
    1-2.目標7が掲げられた理由
  2. エネルギー問題解決のために個人ができること
    2-1.省エネ家電や建材などを使用する
    2-2.再生可能エネルギーを利用する
    2-3.省エネの移動手段を選ぶ
    2-4.生活の中で節電を心がける
    2-5.再生可能エネルギープロジェクトに参加・支援する
  3. 自治体の取り組み事例
    3-1.ゼロカーボン市区町村協議会
    3-2.デジタルインフラの100%再エネ化・石狩市
    3-3.砂防堰堤を利用した水力発電・黒石市
    3-4.バイオマスを利用したエネルギー化・豊橋市
  4. まとめ

1.持続可能な開発のための2030アジェンダ

2015年9月、ニューヨーク国連本部にて「国連持続可能な開発サミット」が開催され、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。

そのアジェンダの中に掲げられた17の目標のうち、目標7に当たるものが「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」という目標になります。

1-1.目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」

「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」とは、手頃な価格で、信頼できる持続可能な現代的エネルギーをすべての人が利用できるようにすることです。

アジェンダにおける目標7では、そのために、2030年までに達成すべき具体的な目標が掲げられています。たとえば、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やしたり、エネルギー効率の改善率を倍増させたりするなどの目標が設定されています。

1-2.目標7が掲げられた理由

私たちの日常生活は、信頼できる手頃な価格のエネルギーによって支えられており、エネルギーの供給は人間開発や経済発展に不可欠のものです。しかし一方では、世界には安定した電力供給のない生活を送っている人々が、5人に1人存在しています。(※国際連合広報センター:「手ごろな価格のクリーン・エネルギーの普及はなぜ大切か」)

また、現在は電力の供給を安定的に享受できている人々も、そのような生活を将来的に持続できるとは限りません。電力共有の主力である化石燃料を用いた発電方法は、大量の温室効果ガスを発生させ、気候変動を引き起こしたり、人間の福祉と環境に悪影響を及ぼすからです。

持続可能なエネルギーに移行するには、クリーンで効率性のよい再生可能なエネルギーへの投資・利用や省エネの実践が必要といえます。

2.エネルギー問題解決のために個人ができること

エネルギー問題解決のため、個人ができることとして、次のようなことが挙げられます。

  • 省エネ家電や建材などを使用する
  • 再生可能エネルギーを利用する
  • 省エネの移動手段を選ぶ
  • 生活の中で節電を心がける
  • 再生可能エネルギープロジェクトに参加・支援する

以下、順を追ってみていきましょう。

2-1.省エネ家電や建材などを使用する

エネルギー問題解決に向けて個人ができることとして、省エネ家電や省エネ建材などをできる限り使用することが挙げられます。

家電は、個人が日常生活するうえで、最も電気を消費する場面と言ってよいでしょう。省エネ家電を使用することで、日常的に消費するエネルギーを大幅に減らすことができます。また、省エネ建材などを選択することで、市場社会における生産活動の過程でエネルギー消費量を減らすことにつながるでしょう。

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2-2.再生可能エネルギーを利用する

再生可能エネルギーの割合を高めていくことは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のSDGs目標7においても言及されています。個人でも、再生可能エネルギーの利用頻度を高めることが求められています。

具体的には、個人で太陽光パネルを設置し、太陽光発電を積極的に利用するという方法や、電力の供給を再生可能エネルギーの割合の高い電力会社に切り替えるという方法があります。

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2-3.省エネの移動手段を選ぶ

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のSDGs目標7では、クリーンで効率性のよいエネルギーの利用が推奨されています。

例えば、移動手段の選択場面において、ガソリン不要で二酸化炭素(CO2)を排出せずに走行することができる電気自動車へ変更したり、公共交通手段を選ぶことで、エネルギー消費量を減らすことにも貢献できます。

2-4.生活の中で節電を心がける

個人が日常生活において、節電を心がけることもわずかな努力の積み重ねではありますが、エネルギー問題の解決に有効といえるでしょう。

たとえば、こまめに電灯のスイッチを切ったり、冷暖房の設定温度を1度緩めに設定したり、といった小さな節電も、積み重なれば大きな電気の節約になります。そのような節電を習慣化して効果的な節電につなげていきましょう。

2-5.再生可能エネルギープロジェクトに参加・支援する

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のSDGs目標7では、再生可能エネルギーへの投資を増やすことも重視されています。再生可能エネルギーの技術は、まだ発展途上段階にあるものも多く、信頼できる手頃な価格のエネルギーとして利用できるようになるには、技術開発のための投資も必要です。

個人であっても、再生可能エネルギープロジェクトに参加したり、支援したりすることで、再生可能エネルギーの技術開発・発展に貢献することができます。

3.自治体の取り組み事例

わが国の地方自治体においても、数多くのエネルギー問題に対する取り組みがおこなわれています。その中でも、次のような取り組みを紹介します。

  • ゼロカーボン市区町村協議会
  • デジタルインフラの100%再エネ化・石狩市
  • 砂防堰堤を利用した水力発電・黒石市
  • バイオマスを利用したエネルギー化・豊橋市

3-1.ゼロカーボン市区町村協議会

日本政府は、2050年までに脱炭素化を進めることを表明していますが、こうした国の取り組みは、国を構成する各地方自治体の協力なしには実現し得ません。

そこで、2020年に、横浜市が先頭に立ち、2050年二酸化炭素排出実質ゼロを表明している全国の市区町村に呼びかけ、脱炭素社会の実現に向けた政策研究や国に提言を行うことを目的とした「ゼロカーボン市区町村協議会」を設立しました。

協議会では、脱炭素社会の実現に向け、様々な地域特性や背景を持つ市町村と知見を共有し、議論を進めています。2021年3月以降、たびたび、議論の結果を取りまとめ国へ政策提言などをおこなっています。

3-2.デジタルインフラの100%再エネ化・石狩市

北海道石狩市では、日本で初めて、再生可能エネルギー100%でデータセンターの運営を行う取り組みを進めています。(※参照:石狩市「北海道石狩市における再生可能エネルギー100%で運営するデータセンター事業化の基本合意書締結について」)

石狩湾新港地域にREゾーンと称する再エネ100%供給エリアを設定し、隣接地に大規模な太陽光発電設備と大容量の蓄電池を設置して、大量のデータ処理を行うデータセンターの運営にかかる電力を賄っています。

3-3.砂防堰堤を利用した水力発電・黒石市

青森県黒石市では、八甲田山系の豊富な水資源を基に、再生可能エネルギーによる収益事業を立ち上げることを目指し、砂防堰堤を利用した小水力発電事業に取組んでいます。(※参照:資源エネルギー庁「既設砂防堰堤を利用した小水力発電事業

砂防堰堤による小水力発電を導入は、全国的にも事例が少なく、先例を参考として検討を進めることが難しいことから、事業性の調査を進めている段階であるが、実現すれば、地域の自立及び二酸化炭素削減が可能になります。

3-4.バイオマスを利用したエネルギー化・豊橋市

愛知県豊橋市では、地域バイオマスである下水汚泥、し尿・浄化槽汚泥および生ごみを市内の下水処理場に集約し、メタン発酵により再生可能エネルギーであるバイオガスを取り出してエネルギーに変えています。(※参照:豊橋市上下水道局「豊橋市バイオマス資源利活用施設整備・運営事業」)

バイオガスはガス発電により電気エネルギーとし、発酵後に残った汚泥も炭化燃料に加工し、エネルギー化しています。これによって、二酸化炭素の排出を抑えることができ、その効果は、年間でスギの木約100万本分の植樹と同様の効果であるとしています。

まとめ

すべての人が手頃な価格で信頼できる持続可能な現代的エネルギーを利用できるようにするために、エネルギー問題の解決が求められています。

個人ができることとしては、日常生活や消費活動において省エネを心がけること、再生可能エネルギーを選択することが挙げられます。

自治体でも、エネルギー問題に対しては様々な取り組みがおこなわれています。自治体の取り組みを学んだり支援したりする一方、私たち個人でも、できる範囲のことをおこなっていくことを検討しましょう。

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