送電網の準備度がネットゼロのカギに。TAQAとブルームバーグが「公益事業の未来」に関するレポート

欧州、中東、アフリカで最大級の上場統合公益企業であるアブダビ国営エネルギー会社PJSC(TAQA)と、ブルームバーグ・メディアは1月16日、公益事業セクターの未来に焦点をあてたグローバル調査「公益事業の未来」を発表した。世界各国約600人の業界専門家による知見を取り入れたレポートで、ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)の前夜に発表された。

回答者の50%以上が、電力会社がネットゼロ目標を達成する上での障害として、送電網のインフラを挙げた。さらに90%以上が、公益事業会社にとって「大規模な変革期が必要であり、かつそれは差し迫っている」と感じていることがわかった。

レポートは、調査の結果を「再生可能エネルギー送電網の統合」「公益事業セクターにおける差し迫った変革」「顧客中心モデルへのシフト」「2030年排出削減目標達成への自信の低さ」「意識とコラボレーションのギャップによって阻害されるイノベーション」の5項目にまとめ解説している。

このうち、再生可能エネルギー送電網の統合では、調査における回答者の半数以上が、ネットゼロ目標を達成する上で、サプライ・チェーンや資本の問題以上に、送電網が最も大きなハードルであると指摘、これがレポートの主題となっている。

公益事業セクターにおける差し迫った変革とは、回答者が、公益事業セクターが「大きな変化の時代」に突入していると指摘しており、加えて内部関係者の93%が、より高いレベルの変革を支持していたことによる。こうした変革には、進化するオペレーティング・モデルやカスタマー・リレーション、イノベーションの重点化などが含まれるとしている。

顧客中心モデルへのシフトは、消費者自らが使用するエネルギーを発電することに期待が高まる中、顧客のエンパワーメントに向けた決定的な動きを指す。この傾向について、レポートは「公益事業がネットゼロ目標を達成するための極めて重要な一歩を意味しており、エネルギー生産への顧客の関与を促進するための事業モデルの再評価が必要となる」との見解を示した。

一方で、2030年排出削減目標達成へ自信を示す同セクターの専門家は44%に留まり、強固な政策と革新的なアプローチが急務であることが浮き彫りになった。地域によって自信のレベルは異なり、インドやドイツに比べ、サウジアラビアとアラブ首長国連邦は楽観的な見方を示していた。

意識とコラボレーションのギャップによって阻害されるイノベーションについて、レポートは、公益事業セクターにおける革新的技術の採用が遅れているのは、認識の不足と、技術とイノベーション・コミュニティの連携不足が主な原因だと指摘している。

ブルームバーグNEFによると、世界の電力システムを拡大・修繕するには、2050年までに21兆ドルの送電網投資が必要。さらに「エネルギー転換投資動向2023」では、23年から30年にかけ、電化輸送、再生可能エネルギー、そして送電網が投資の大部分を占め、年間合計シェアの72%を占めると予想している。

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