欧州議会、自然再生法を採択。50年までに劣悪な状態にある生態系の90%回復求める
欧州議会が、欧州連合(EU)地域の生態系を回復するための「自然再生法(Nature Restoration Law)」を採択した(*1)。EU加盟国は、2030年までに状態の悪い生態系の少なくとも30%、40年までに60%、50年までに90%を回復させなければならない。
加盟国と合意した欧州自然再生法は、全ての加盟国で劣化した生態系を回復させると共に、EUの気候変動と生物多様性の目標達成を支援し、食料安全保障を強化する。
EU全体の目標を達成するために、加盟国は新法の対象となる生態系(森林、草原、湿地帯、河川、湖沼、サンゴ礁)の少なくとも30%を、30年までに劣悪な状態から良好な状態に回復させる必要がある。この割合は40年に60%、50年には90%へ引き上げられる。現状、欧州の生息地の80%以上が劣悪な状態にある。
EU加盟国は、議会の見解に沿って、30年までナチューラ2000(EU規模の自然保護区ネットワーク)の地域を優先的に保全し、一旦良好な状態になっても、著しく悪化しないようにしなければならない。また、これらの目標をどのように達成するかを詳述した国家回復計画を採択する必要もある。
農業生態系における生物多様性を向上させるための対策も求められている。具体的には、EU加盟国は草原蝶指数(the grassland butterfly index)、多様性の高い景観特徴を持つ農地の割合、耕作地鉱物質土壌中の有機炭素蓄積量の3つの指標のうち、少なくとも2つにおいて進捗させなければならない。
排水された泥炭地を回復させることは、農業部門の排出量を削減する最も費用対効果の高い方法の1つである。EU諸国は、30年までに排水された泥炭地の少なくとも30%(少なくとも4分の1は再湿潤化)、40年までに40%、2050年までに50%(少なくとも3分の1は再湿潤化)を回復させなければならない。
新法は、議会の要請に応じて緊急ブレーキをかけることを定めている。EUの消費に十分な食糧生産に必要な土地を著しく減少させるような場合には、例外的に農業生態系の目標達成に向けた取り組みを一時停止することができる。
その他にも、30億本の木を植え、少なくとも25,000kmの河川を淀みなく流れる河川に回復させ、都市緑地面積と都市樹冠被覆面積の純減させないことが求められている。
加盟国と合意した新法は、EU官報に掲載され20日後に発効する前に、理事会でも採択されなければならない。
【参照記事】*1 欧州議会「Nature restoration: Parliament adopts law to restore 20% of EU’s land and sea」
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