NFTとDAOが地域を変える クリプトヴィレッジのLocal DAO候補地解説

地方では人口減少が叫ばれている中で、Web3技術を使った地方創生への取り組みが注目されています。それらの取り組みには、関係人口を増やすためのデジタル住民票などがあり、例えば発行されたNFTを保有することで、地域外にいながら、ネット上で地方創生の取り組みに参加したり応援したりすることができる仕組みがあります。

クリプトヴィレッジは、旧山古志村に続く新たなLocal DAOの地域候補地として「長野県天龍峡」と「宮崎県椎葉村」を選定したことを4月30日発表しました。これらの地域ではNFTやDAOを使って地域の活性化を図っています。ここでは、クリプトヴィレッジのLocal DAOや、旧山古志村の「Nishikigoi NFT」について、Web3を使った地方創生への具体的な取り組みについて詳しく解説します。

目次

  1. 新たなLocal DAO候補地:天龍峡と椎葉村
    1-1.クリプトヴィレッジとは
    1-2.Local DAOとは
    1-3.Local DAOの第一弾は「山古志DAO」
  2. 旧山古志村の「Nishikigoi NFT」とは
    2-1.取り組みのきっかけ
    2-2.山古志住民にNFTを無償配布
    2-3.山古志DAOで使われるツール「Discord」
    2-4.Nishikigoi NFT保有で各Local DAOにアクセスできる
  3. デジタル住民による関係人口創出とは
    3-1.NFTを村民票にしたデジタル村民
  4. まとめ

①新たなLocal DAO候補地:天龍峡と椎葉村

クリプトヴィレッジは、旧山古志村に続く新たなLocal DAOの地域候補地として「長野県天龍峡」と「宮崎県椎葉村」を選定したことを4月30日に発表しました。発表によれば、今回選定された「長野県天龍峡」と「宮崎県椎葉村」が正式なLocal DAOの拠点となるかどうかを決めるため、「Nishikigoi NFT」保有者を対象としたコミュニティ投票が開始されました。

この投票により、これらの地域が新たなLocal DAOの拠点となった場合、地域住民と「Nishikigoi NFT」保有者が協力して、地域をLocal DAOとして運営していくことになります。投票は、分散型投票プラットフォーム「Snapshot」にて行われ、投票権は4月24日以前に「Nishikigoi NFT」を保有していた者のみに付与されます。

投票期間は4月30日から6月10日まで行われ、結果は6月11日に発表される予定です。クリプトヴィレッジによれば、Local DAOはデジタル村民によって自律的に運営される共同体であり、地域住民とデジタル村民が協力して地域の課題解決や新たな価値創造に取り組むことで、持続可能な発展を目指しています。現在は旧山古志村がモデル地域としてLocal DAOを推進しています。

1-1.クリプトヴィレッジとは

クリプトヴィレッジは、新潟県長岡市山古志を拠点とするweb3企業です。閉鎖形のコミュニティであった “Local” を拡張することで、より多くの人がLocalに参画し、個人の多様な生き方と世界中のLocalがつながり、継続する未来をつくることを理念に掲げています。

そのために、デジタル関係人口を増加させることを目的とした「Nishikigoi NFT」の発行や、Local DAO構想の推進を通じて、テクノロジーとローカルをつなぎ、各地に残る多様なコミュニティと文化を支えていく活動を行っています。

主な事業内容

・Local DAOの立ち上げ & マーケティング支援
国内外問わず、各地域におけるLocal DAOの構想、立ち上げ、マーケティング支援を行います。

・地域 / 企業 / 行政/ 支援者のマッチング・共創支援
Nishikigoi NFT立ち上げの知見とネットワークを活かし、各地域や企業のコーディネートをすることで、新たな価値創造へとつなげていきます。

・ブロックチェーンの技術的支援
ブロックチェーンを活用した事業開発、人材育成など技術・教育的な支援を行います。

1-2.Local DAOとは

Local DAOは、デジタル村民によって自律的に運営される共同体です。地域住民とデジタル村民が協力し、地域の課題解決や新たな価値創造に取り組むことで、持続可能な発展を目指します。現在は、旧山古志村をモデル地域として推進しています。

NFTとローカルの組み合わせによって生まれた新たな共同体の形を「Local DAO」と定義し、その概念を確立するために活動が行われています。旧山古志村での第一弾Local DAOの開始から2年が経過し、その間、Local DAOが今後、地域コミュニティの在り方として、社会に定着するか否かが考えられてきました。

Local DAOが単なる「ファーストペンギン」の特殊解にとどまらず、日本や世界中のローカルコミュニティで、応用可能な汎用解となり得るかを実証するため、次のステップに進もうとしています。

1-3.Local DAOの第一弾は「山古志DAO」

Nishikigoi NFTのプロジェクトによって生み出されたデジタル村民たちの共同体が「山古志DAO」です。そしてCrypto x Localによって生まれた新たな共同体の形を「Local DAO」と定義し、このあり方を確立すべく活動が行われています

Local DAOは、デジタル村民によって自律的に運営される共同体であり、独自の自治圏であるとも言えます。現実空間に紐づいた新たなアイデンティティとしてのデジタル村民によって、地域の未来を共に考え動く仲間と、その活動資金を集めることを可能にしました。

②旧山古志村の「Nishikigoi NFT」とは

「山古志(やまこし)」とは、新潟県中越地方の長岡市の山間に位置する地域のことを指し、日本の原風景と称される美しい山あいの村として知られています。2005年4月1日に長岡市に編入合併されましたが、1000年続く牛の角突きや、錦鯉発祥の地であることからも、「山古志」という名で人々に広く親しまれています。

そんな山古志は、21年12月に「電子住民票」という意味合いを含むデジタルアート「Nishikigoi NFT」を発行し、話題となりました。地域のシンボルとして親しまれている錦鯉をモチーフにしたこのNFTは、地元自治体の長岡市を公式パートナーとする自治体公認のNFTプロジェクトとなっています。第一弾セールにおいて1,500点がミントされ、発売からたった二ヶ月で約600万円の資金調達に成功しました。山古志はこのNFTを「共感と仲間の証」としており、NFTのホルダーを「デジタル村民」と呼んでいます。

公式ウェブサイトによると、山古志は人口800人という小さな村にも関わらず、そのデジタル村民の数は現在すでに約950名を突破しています。リアルな山古志とデジタル村民がともに地域課題の解決や関係人口の創出など、山古志の未来をつくるための挑戦を始めています。

また、22年3月には第二弾となるデジタルアート作品が発売されました。NFTを通して、国や性別、地位、物理的制約に関係なく、自分自身の想いや信念ともいえるモノの帰属先を自らが選択できるということを世界に伝えています。

2-1.取り組みのきっかけ

山古志村は、2,200人以上いた町が約800人ほどまでに減少し、高齢化率は55%と存続の危機となっている状況にあり、隣町の長岡市に合併されました。

2004年の新潟中越地震をきっかけに山古志村と関わりができ、山古志村を好きになった竹内春華氏がいます。彼は後に山古志DAOの発起人になります。山古志村は長岡市と合併しましたが、山古志村のアイデンティティを存続させるため、「山古志を疑似体験できる仮想空間を作り、価値観を共有する人と共同体を作って山古志を存続させる」という構想が立てられました。

竹内氏はエストニアの電子住民票「e-Residency(電子国民プログラム)」からインスピレーションを受け、山古志にいなくても、山古志村の一員であるような証明書として、NFTをデジタル住民票として活用することで、保有している世界中の人がデジタル上で山古志村の村民になれる世界(DAO)をスタートさせました。

2-2.山古志住民にNFTを無償配布

プロジェクトを進めていく中で、山古志村の住民によって維持されてきた村を、関係人口だけでプロジェクトを進めるのは違うのではないかという考えから、リアルの山古志住民への無償のNFT配布が企画されました。発行されたNishikigoi NFTの保有者が投票に参加できるアプリを活用し、アンケートを行ったところ、NFT無償配布の賛成が100%の結果が出て、住民への無償配布が決定されました。NFTを保有するためのウォレットMetamaskの開設などのサポートを徹底したそうです。

同プロジェクトの最も規模が大きい取り組みとして「山古志デジタル村民 総選挙」が挙げられています。NFTの売上の30%(約3ETH)をデジタル総選挙の予算として開催されました。デジタル総選挙では、NFTを持っているデジタル関係人口全員が自分のプランを考え、提案できるようになっており、最終的に4つのプランを選出するようになっています。挙げられたプランの中でディスカッションが行われ、投票をする形で選挙が行われました。

選ばれたプランには報酬が用意されており、プランをデジタル関係人口が考えるインセンティブとなっています。またイーサリアム払いによる報酬があることでよりDAOらしい活動にもなり、保有者がプロジェクトに積極的に参加しやすい仕組みとなっています。

2-3.山古志DAOで使われるツール「Discord」

山古志DAOではコミュニケーションツールとしてDiscordが使われています。チャット形式で会話ができ、音声通話もできます。全国各地に散在する、関係人口と地域住民が集まれる空間を運営していくことができます。またDiscordは誰でも参加ができるので、鍵付きのチャンネルを用意することもでき、例えば NFT保有者限定のトークルームを作成し、より密度の高い会話を行うこともできます。

2-4.Nishikigoi NFT保有で各Local DAOにアクセスできる

Nishikigoi NFTと山古志DAOは一体の関係であり、Local DAOへのパスポートとしての役割も担っています。それは、Nishikigoi NFTを持っていることで、各Local DAOに優先的にアクセスできるだけでなく、Local DAO同士の協力も活発になるとされています。さらに、山古志デジタル住民票としての機能を保持し続けることで、多くの人々が山古志DAOを通じて、多様な世界を体験することになるでしょう。

新たなLocal DAOの地域として「長野県天龍峡」と「宮崎県椎葉村」が候補として挙がっており、今後は国内だけでなく、さらにヨーロッパやアジア諸国などにも広げていく予定です。プレスリリースによると、既に海外からの問い合わせがきているとのことです。

③デジタル住民による関係人口創出とは

Local DAOの候補地域として挙がっている「長野県天龍峡」と「宮崎県椎葉村」は、どちらも慈善豊かな自然と文化を持つ魅力的な地域です。

長野県天龍峡は、長野県の南部に位置する飯田市のさらなる最南端の観光地です。東に南アルプス、西に中央アルプスがそびえ、南北に天竜川が貫く日本一の谷地形が広がり、豊かな自然と優れた景観、四季の変化に富み、動植物の南北限という気候風土に恵まれています。

九州山地に位置する宮崎県椎葉村は、日本三代秘境ともいわれる村で、日本のマチュピチュとも呼ばれる風景「仙人の棚田」があります。また、国の重要無形民俗文化財である「椎葉神楽」は、五穀豊穣を願い神々に舞を捧げる神事として、村のアイデンティティを象徴しています。しかしどちらも人口減少が課題となっており、村の存続に関わっています。

こうした地域が日本の各地に存在しており、文化を伝えて残していくためには、地域と関わりたいと思う人を増やすことが重要になってきます。しかし移住となるとハードルが高く、それですぐに問題解決するわけではありません。そこで地方創生業界では「関係人口」の創出が注目されています。関係人口とは、その地域に住んではないけれど、関わりを持つ人たちのことです。

3-1.NFTを村民票にしたデジタル村民

移住はできないけれどこの地域と関わりたい、地域創生の取り組みに参加したいという、仲間になってくれる人に、デジタル村民の証としてNFTの活用が各地で採用されています。NFTがその地域でのデジタル村民票の代わりとなります。

NFT保有者は、地域おこしのための取り組みに参加できたり、村民で何かを決める投票にも参加できたりと、デジタル上でコミュニケーションをとりながら、活動を応援することも可能になります。そして実際に旅行に訪れたり、短期滞在してみたりと、より深く興味を持つ切っ掛けにもなります。

実際に、旧山古志村は21年12月に「電子住民票」という意味合いを含むデジタルアート「Nishikigoi NFT」を発行しました。地域のシンボルとして親しまれている錦鯉をモチーフにしたこのNFTは、地元自治体の長岡市を公式パートナーとする自治体公認のNFTプロジェクトとなっています。

同NFT、つまり電子住民票を保有しているホルダーは、村のガバナンスに参加することが可能となってます。地域活性化のプロジェクト会議への出席や、「デジタル村民選挙」への投票などを行う権利を得ることができます。

④まとめ

NFTを使った地方創生への取り組みは地方自治体だけでなく、Web3技術に特化した企業も参画し、地域を盛り上げようとしています。昨今では、国内のNFTプロジェクトと自治体がコラボレーションし、地元の特色を取り入れたデジタルアートが作成されています。この取り組みは、地域のイメージアップにつながり、観光客の誘致にも期待されています。Web3を使った地域活性化の取り組みは、同じ志を持った人たちによるコミュニティを形成させ、物理的な距離を超えた新しい社会作りになると言えるでしょう。

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