【THE 事例集】製造業×ブロックチェーン – 自動車業界編 part.1 –
はじめに
ブロックチェーンのテクノロジーが徐々に社会に浸透してきました。金融・ゲーム・医療・不動産・電気などなど、様々な分野でのユースケースが増え続けています。
今まで数多くの事例を紹介してきましたが、今回は「製造業」という業界にスポットライトを当て、その中でどんな活用事例があるのか、今後いくつかに分けてご紹介します。
自動車×ブロックチェーン
日本の産業で最も重要な一つである自動車ですが、この業界では数年前から様々なユースケースが出てきています。事例の多くは海外のものですが、主にデータの管理方法の一つとしてブロックチェーンを利用している企業が多いようです。
将来、自動運転が当たり前になる世の中で、ブロックチェーンはどのような役割を果たしていくのでしょうか。IoTデバイスやセンサーから送られるデータの管理であったり、決済の自動化であったり、色々な方面で利用が検討されているようですが、いくつか事例を見ていきましょう。
コンソーシアム:MOBI
ブロックチェーンのビジネス利用を考えた場合「いかに多くの企業をコンソーシアムに巻き込めるか」は一種の課題ですが、自動車業界においては既に「MOBI (mobility open blockchain initiative) 」という巨大なブロックチェーン コンソーシアムが存在します。
MOBIは「ブロックチェーンと関連技術を使用して、モビリティをより安全で、 環境に優しく、より安く、よりアクセスしやすくする」という目的の元集まった企業や団体によって構成されています。
公式ホームページによると、参加しているコミュニティメンバーは80社を超え、BMW、GM、Ford、Hondaといった自動車会社を始め、ボッシュやデンソーなどの部品メーカー、Consensys、VeChain、Hyperledgerなどのブロックチェーン関連企業(団体)も参加しています。詳細は公式HPをご覧ください。
事例:VID (Vehicle Identity)
MOBIの取り組みの事例として、ルノーやフォードを中心に行ったブロックチェーンを利用したVID(車両ID)の標準化 があります。
現在の車両識別システムで主に利用されるのが、車両識別番号(VIN – Vehicle Identification Number)というもので、個々の車両を識別するためのIDとして利用されています。ですがVINは、自動車業界で将来必要になってくるサービス、例えばメンテナンス履歴、従量性の自動車保険、マイクロトランザクション(ペイメント)、最終的には車両のデジタルツインの存在など、多くのモビリティユースケースのデジタル化には非効率です。
VIDはブロックチェーンベースで管理されるので、データの改ざんが起こりにくく、接続された自動車両と将来の自動車両、及びそれらをサポートするIoTインフラストラクチャで使用することが可能です。
事例:自動決済
MOBIによるその他の事例として、ホンダ、ルノー、 BMW、GM、フォードら5社による自動決済の実証実験があります。
高速道路の自動決済において、ETCなどの専用ハードウェアが必要なのは、我々にとって当たり前のように受け入れていると思います。
今回の実験ではそういった専用ハードウェア無しで、駐車場や高速道路料金、さらに軽食の支払いまでも自動で決済する、といった興味深い内容になります。 自動車運転時の様々な情報をブロックチェーンに記録し、上記のVIDと組み合わせることで実現を目指しています。
事例: デジタル メンテナンスブック (履歴管理)
少し古い2017年の事例ですが、ルノーは、Microsoft、Viseoと協力して 、デジタル カー メンテナンスブック のプロトタイプを作成しました。
現在、顧客とその車両に関する情報は、自動車メーカー、保険会社、修理店などが管理する複数の情報システムに広がっています。この新しいデジタルメンテナンスブックにより、顧客がアクセスできる場所にすべての重要な情報を集約します。
たとえば、所有者が車両を販売したい場合、潜在的な購入者にデジタル自動車メンテナンスブックのすべてのデータへのアクセスを許可することで、車両の履歴に関する情報をより透明性が高い状態で共有できます。ルノーはこのメンテナンスブックを利用することで、保険会社やディーラーとともにエコシステムで新しいサービスを顧客に提供することが可能になります。
参考:Renault creates digital maintenance book
事例:排気ガスのデータ保全
フォードはドイツのケルンなどで、ジオフェンシングとブロックチェーンを利用し、排気ガス対策を行う実証実験を行っています。
ドイツでは、空気汚染度の高い車両の運転ができない「排気ガス規制区域」という区画が設定されています。この区域に入ったフォードのプラグインハイブリット電気自動車(PHEV)が、自動で「電気駆動モード」に切り替わり、ブロックチェーンに排出量や時間などのデータが安全に保存され、市当局や車両または車両所有者などの関係者間で共有される、といった実験内容になります。
排出量データの安全性、信頼性、透明性は、このプロジェクトのすべての利害関係者にとって最も重要であり、都市の空気をきれいにするというビジョンのキーとなります。ブロックチェーン技術により、車両排出記録の安全で改ざん防止の追跡と記録が可能になります。
自動車部品メーカー
自動車部品の業界においては、上記で紹介したMOBIのメンバーであるBoschやDENSOを中心に、いくつか実験を行っています。
事例:センサーデバイスとIOTAを接続
上記の動画にあるBosch XDK(クロスドメイン開発キット)を利用すると、 センサベース製品およびアプリケーションのプロトタイプをすばやく作成できます。
Boschはこれらのセンサーデバイスから受け取ったデータをリアルタイムで IOTA Tangleに接続するソリューションを提供しています。また、これらの収集したデータは暗号化され、 IOTA Data Marketplaceで売買が可能です。
BoschはXDKとIOTAの組み合わせで、将来的に以下の3つのユースケースを考えているようです。
- 車などの機器をレンタルした際、顧客が使用した正確な時間を測定し、それに応じてIOTAで請求
- 特定の機器が適切な条件下で動作していることを確認し、オペレーターとサプライヤーの両方が見ることができるように、これらのデータトランザクションをTangleに設定
- 同様の概念で、監査証跡に使用。特定の条件下でデータを転送する必要がある場合、XDKはこれを監視し、IOTA Tangleはすべての関係者が追跡できるペーパーレスの記録を作成する
参考:Everything you need to know about IOTA, XDK2MAM and Bosch XDK
Source: 仮想通貨ニュースサイト
【THE 事例集】製造業×ブロックチェーン – 自動車業界編 part.1 –