2020年、タイ不動産に固定資産税(土地家屋税)が発生。投資への影響は?

好調な経済成長を背景に「アジアのデトロイト」と言われるタイでは、2020年1月1日から新たに「土地家屋税」が施行される予定です。これまでも土地家屋税自体はあったものの、新しい土地家屋税はその内容が変わり、日本の固定資産税に近い内容となりました。

そこで、この記事では新しい土地家屋税の内容や、施行後のタイ不動産投資に与える影響について詳しく説明します。タイ不動産の購入を検討している方は参考にしてみてください。

目次

  1. 2020年施行の土地家屋税とは
    1-1.従来の土地家屋税
    1-2.タイの新土地家屋税の税率について
  2. タイ不動産投資への影響は?
    2-1.タイ不動産の平均的なモデルケースで比較
    2-2.新土地家屋税の導入は負担減になる場合もある
  3. タイ不動産投資にかかるその他の税金
    3-1.移転登記手数料
    3-2.印紙税
    3-3.キャピタルゲイン税
    3-4.相続税・贈与税
    3-5.所得税
  4. まとめ

1 2020年施行の土地家屋税とは

これまでのタイ不動産投資は、固定資産税がない点が税制上のメリットでもありました。しかし、2019年3月13日に新土地家屋法が施行され、2020年1月1日から不動産の評価額に応じて「土地家屋税」が課税されます。

不動産の所有者は毎年1月1日時点での納税義務を負うことになり、同年4月末日までに納税する必要があります。

1-1 従来の土地家屋税

新しく施行される土地家屋税がタイの不動産投資にどのように影響するのかを考えるうえで、従来の土地家屋税がどのような内容だったのかを知っておく必要があります。

従来の土地家屋税は、不動産を賃貸に出して得られる賃料に対して課税されるという内容で、日本の不動産所得税に相当するものでした。税率は、資産の賃貸価格(実額または評価額)を課税標準として、年率12.5%でした。

1-2 新土地家屋税の税率

日本の固定資産税は不動産の評価額に対して1.4%の税率となっています。
一方、タイの固定資産税に相当する新しい土地家屋税は、評価額によって税率が変わる累進課税方式となっています。

具体的には用途によって違いがあり、おもに「1.農業用の不動産」「1.居住用の不動産」「1および2以外の不動産」「空き家(空き地)、使用されていない不動産」の4つに分けられます。さらに同じ居住用の不動産でも自宅用か賃貸用(投資用)かによっても税率は異なります。

不動産投資用として保有するコンドミニアムの場合、税率は以下の通りです。(1バーツ=3.6円で計算、2019年12月3日時点)

不動産の評価額 税率
5,000万バーツ以下
(約1億7,900万円)
0.02%
5,000万バーツ超〜7,500万バーツ
(約1億8,000万円超〜約2億6,900万円)
0.03%
7,500万バーツ超〜1億バーツ
(約2億6,900万円超〜約3億6,000万円)
0.05%
1億バーツ超
(約3億6,000万円超)
0.10%

不動産の評価額が5,000万バーツ(約1億8,000万円)までは、税率0.02%となります。タイのコンドミニアムは大体5,000万バーツ以下で購入できるので、新しい土地家屋税の税率は0.02%と見ておいて問題はないでしょう。例えば保有するコンドミニアムの評価額が2,000万円程度であれば、土地家屋税は約4,000円になります。

なお建物のみを居住用として所有している場合、1,000万バーツ(約3,600万円)までは課税されないので、留意しておきましょう。

また非居住者である外国人には関係ありませんが、資産価値が5,000万バーツを超えない建物の主たる所有者(住居登録のあるもの)も課税対象外となっています。つまり、自宅として居住する場合には、新しい土地家屋税は課税されません。

2 タイ不動産投資への影響は?

固定資産税がなかったタイ不動産投資に新土地家屋税が導入されることで、どのような影響を受けるのかを気にする方もおられるでしょう。新たな土地家屋税と従来の土地家屋税は性質が異なるので、モデルケースを使って比較してみます。

2-1 タイ不動産の平均的なモデルケースで比較

首都バンコクの日本人街として人気の「スクンビット」エリアにおける平均的なコンドミニアムの購入価格は335,561ドル(約3,600万円)で、月額賃料は1,373ドル(約14万9,000円)となっています(Global Property Guideより)。この例で従来の土地家屋税と新しい土地家屋税を計算してみます。

まず、タイで従来課税されていた土地家屋税は賃貸価格(年額)の12.5%なので、年間では以下の金額になります。

月額賃料1,373ドル×12ヶ月×0.125=2,059.5ドル(約22万3,000円)

一方、2020年から課税される土地家屋税は評価額に対しての課税なので、購入価格ではない点に注意が必要です。つまりコンドミニアム価格が上昇すれば、購入時よりも評価額は高くなるため、それだけ税金も増えることになります。ここでは評価額の計算はできないので、購入価格を参考に計算してみます。

上記の平均的な価格(3,600万円)のコンドミニアムを購入した場合、土地家屋税は次の通りです。

335,561×0.0002=67.1ドル(約7,200円)

ケースにもよりますが、タイ当局に決められる「評価額」は、売主によって決められる「購入価格」を大きく下回る可能性もあります。そうなれば土地家屋税もさらに安くなるでしょう。

2-2 新土地家屋税の導入は負担減になる場合もある

上記の計算結果では、旧土地家屋税よりも新土地家屋税のほうがかなり安くなりました。日本の固定資産税に相当する土地家屋税は新たに導入されるものの、日本の不動産所得税に相当する旧土地家屋税が廃止されるため、ケースによっては負担が少なくなる場合もあるでしょう。

新土地家屋税が適用されるのは毎年1月1日に所有する不動産に対してなので、2019年のうちに5,000万バーツ以下のコンドミニアムを購入しておけば、2020年からは新しい土地家屋税を納付することになります。1,000万バーツ以下(約3,600万円以下)のコンドミニアムなら免税となるため、負担はさらに軽減されます。

3 タイ不動産投資にかかるその他の税金

タイ不動産投資をするにあたり、土地家屋税のほかにどのような税金がかかるのかを確認しておきます。

3-1 移転登記手数料

登記を移転する際に発生する税金です。売買代金または土地局による資産評価額のいずれか大きいほうの2%が課税されます。

プレビルドで購入するコンドミニアムの場合、建設前に契約した売買代金よりも登記時の資産評価額のほうが大きくなる可能性があります。デベロッパーがコンドミニアムを売り出してから完成するまでに数年かかる場合もあるので、大企業の移転や鉄道開通などによりその付近の人口が増加すれば、不動産価格も上昇するためキャピタルゲイン(売却益)が狙えます。

このようにプレビルド販売価格よりも完成後の販売価格が高くなれば、資産評価額もそのぶん高くなり、併せて登記手数料も高くなる可能性があります。

3-2 印紙税

タイ不動産の売買時に契約書を作成する際、印紙税が発生します。課税対象は売買代金または土地局による資産評価額のいずれか大きいほうで、税率は0.5%です。

なお、前述した通り、実際の購入金額とタイ当局が算出する評価額に異なるため、印紙税が多くなることもあれば小さくなる可能性もある点に留意しておきましょう。

3-3 キャピタルゲイン税

物件の売却でかかるキャピタルゲイン税は、100万バーツまでなら税率15%となります。

なお、課税方法は「贈与の場合」と「贈与以外の場合」とで異なります。タイ不動産投資は「贈与による取得」ではないので、贈与以外のケースに当てはまります。

さらにタイのキャピタルゲイン税は、譲渡益に対してではなく譲渡金額に対して課税される点に注意しましょう。さらに譲渡金額に対してそのまま課税されるのではなく、控除された金額に対して課税されることになります。

控除率は「1年保有した場合の8%」から「8年以上保有した場合の50%」までと幅があります。そして譲渡により得た取得金額から控除額を引いて、その正味の取得金額÷所有期間×個人所得税率が単年度あたりの税額となります。

この単年度あたりの税額に所有期間を乗じた金額がキャピタルゲイン税として支払う税金となります。ただし個人所得税額は譲渡金額の20%が上限です。

仮にタイ不動産を譲渡によって取得している場合、控除率は一律50%となります。そして譲渡金額から控除金額を引いた正味の所得金額を保有年数で割り、その所得金額に該当する所得税率を掛けたうえで、保有年数を乗じて支払う税金を算出します。

3-4 相続税・贈与税

2016年2月1日より相続税・贈与税が導入されましたが、対象となるのは1億バーツ超の資産です。タイのコンドミニアムでは1億バーツを超える物件はほとんどないので、相続税や贈与税に関しては特に気にする必要はないでしょう。

3-5 所得税

賃貸による家賃収入を得た場合、所得税が課せられます。税率は収入額により以下のとおり異なります。

  • 150,000バーツまで:0%
  • 15,001~300,000バーツ:5%
  • 300,001~500,000バーツ:10%
  • 500,001~750,000バーツ:15%
  • 750,001~1,000,000バーツ:20%
  • 1,000,001~2,000,000バーツ:25%
  • 2,000,001~5,000,000バーツ:30%
  • 5,000,001バーツ超:35%

なお、賃貸する資産の種類によって家賃収入の10~30%を経費として控除できます。さらに納税者本人の人的所得控除として60,000バーツを控除することもできます。

4 まとめ

タイの新しい土地家屋税は日本の固定資産税に相当するものですが、日本と比べると税率はかなり低くなっています。さらに従来の土地家屋税よりも実質的に安く、1,000万バーツ以下の物件なら免税となるため、これからタイ不動産投資を始める方にとっては追い風になる場合もあるでしょう。

ただし、土地家屋税以外にも購入時や売却時にかかる税金はあるため、物件を検討する際は全体でいくらの税金がかかるかを計算することが大切です。

Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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