東京オリンピック開催が決定されて以降、都心の不動産価格は上昇してきました。都心で投資用ワンルームマンションを所有している人の中には、「今売れば利益が出そうだ」と考えて売却を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
売却をする際には不動産会社に相談をして話を進めると思いますが、相談する際には注意が必要です。売却の方法は1種類だけではありませんし、仲介する不動産会社によって査定価格が違ってくるからです。
今回は、投資用ワンルームマンションの売却をより効率的に行っていただけるように、ワンルームマンションの価格動向や価格の試算の仕方を確認した上で、投資用ワンルームマンションを売却する際に知っておきたいことを7つ解説したいと思います。
目次
- 投資用ワンルームマンション価格推移
- 売却価格の試算の方法
2-1.収益還元法の価格の算出の仕方
2-2.原価法の価格の算出の仕方
2-3.取引事例法の価格の算出の仕方 - 投資用ワンルームマンション売却時の7つのポイント
3-1.売却の際の査定は複数の不動産会社にしてもらう
3-2.仲介で売却する際のメリットとデメリット
3-3.買取で売却する際のメリットとデメリット
3-4.高く売却するには購入時の出口戦略がポイント
3-5.見積もりを取るには一括査定サイトが便利
3-6.売却の際にかかる税金
3-7.ローンの残債と売却益の差額に注意 - まとめ
1.投資用ワンルームマンション価格推移
東京オリンピックの開催が決まって不動産価格は上がったと言われていますが、本当に上がっているのでしょうか?
まずはワンルームマンションの価格推移がどのようになっているのかを見てみましょう。以下のグラフは東京カンテイが発表している、首都圏の新築と中古マンションの平均価格、平均専有面積、平均坪単価の推移です。調査対象のマンションには実需のマンションも入っていますからワンルームだけの価格ではありませんが、推移と坪単価は参考になるでしょう。
*東京カンテイ「マンションデータ白書 2017」発表のプレスリリース資料内から引用
このグラフから、中古マンションの平均価格は2007年から2017年の10年間で2,675万円から3,257万円に約500万円上がったことがわかります。また、坪単価も145万2,000円から179万1,000円に約34万円上がっています。このことから、10年以上前に購入した物件は一般的には上がっていることが考えられます。そういった物件を所有されている方は利益が出る可能性がありますので、売却のチャンスだと言えるでしょう。
2 売却価格の試算の方法
売却価格を査定する方法は簡易査定と訪問査定の2種類あります。簡易査定は机上で試算する方法で、インターネットで査定を申し込んだ場合など、検討段階でとりあえずいくらくらいになるのかを試算したい場合に使われます。その後、本格的に売却を考える段階で現地に行き、立地や物件の状態を見る査定の仕方が訪問査定になります。
簡易査定の段階で使われる価格の算出法は収益還元法、原価法、取引事例法の3種類があります。それぞれの算出方法を見てみましょう。なお、今回は詳しい計算式は割愛します。
2-1.収益還元法の価格の算出の仕方
収益還元法とは不動産が将来どれくらいの収益を出すのかを算出して価格を決める方法です。利回りと家賃収入から物件価格を算出する直接還元法と、将来得られる利益と将来の物件価格から現在の物件価格を割り出すDCF法があります。ここでは計算式は割愛しますが、収益をもとに物件価格を割り出す方法があるということを知っておきましょう。
2-2.原価法の価格の算出の仕方
原価法とは売却したい不動産をもう一度建築した場合にいくらかかるか(再調達額)をもとに物件の価格を算出する方法です。再調達額に物件の耐用年数から築年数を引いた残存年数などを勘案し割り出します。この計算で算出された価格を積算価格と言います。
2-3.取引事例法の価格の算出の仕方
売却する不動産と条件が近い不動産の取引事例をもとに価格を算出する方法です。条件が近い不動産の成約事例から坪単価を割り出し、それを売却する不動産の広さに換算し算出します。一般的には算出された価格に、立地条件や部屋の状態などを加えて価格を決定するやり方です。取引事例法は主には実需の物件の売却の際に使われる方法です。
売却価格はこのように3種類の決め方があります。ただ、この方法で試算された価格で売却されるわけではありません。算出された価格に、駅からの距離や日当たりの状態など、具体的な物件の状態も計算に加えて価格を決定します。また、不動産は個別の取引になるため、売り主と買い主の間の交渉で、さらに上下する可能性があります。
3.投資用ワンルームマンションを売却する際に知っておきたい7つのこと
ここまでの流れで、中古マンションの価格が上がっていることと、価格の決め方には3種類あることがわかりました。次に実際に売却をする時の流れと、売却する際に知っておきたいことを解説いたします。
3-1.売却の際の査定は複数の不動産会社にしてもらう
価格を決める方法のところで触れましたが、売却価格の決め方は複数あり、更に個別の取引になるため、不動産会社によって査定価格が違ってきます。不動産会社1社だけに査定を依頼することは、その価格が本当に見合った価格かどうかの判断ができません。査定を依頼する場合は複数社に依頼することが重要になります。
3-2.仲介で売却する際のメリットとデメリット
査定後の売却方法には仲介と買取の2種類あり、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらの方法で売却をするのかを確認して取り組むことが大切です。以下は仲介と買取で売却する場合のメリットとデメリットの比較表です。
比較項目 | 仲介 | 買取 |
---|---|---|
買い主 | 個人 | 不動産会社 |
価格帯 | 高い | 安い |
売却までの時間 | 長期 | 短期 |
瑕疵担保責任 | 有り | 無し |
リフォーム代 | 有り | 無し |
仲介手数料 | 有り | 無し |
秘匿性 | 無し | 有り |
まずは仲介で売却する際のメリット、デメリットについて解説します。
【仲介のメリット①】市場の相場価格かそれ以上の価格でも売却できる
仲介で売却する際のメリットは、市場の相場価格か、あるいは相場より高い価格で売却できる可能性があるという点です。一般的な方法としては不動産会社が売却する広告を出し募集をし、買主を募るという方法になります。売却までの時間がかかっても問題がない場合は、高い価格のまま募集することができます。
また、募集中でも周りの相場を見て、まだ高くても売れそうであれば価格を上げますし、割高感があれば価格を下げるなどして調整することも可能です。その場合は買主の思惑も取り入れながら売却をしますので、その時の相場で価格が決まる可能性が高いと言えます。
先に少し触れたように売却までに時間がかかるという点と、瑕疵担保責任を負わなければならない点、仲介手数料がかかる、リフォーム代がかかる点の4点がデメリットとして考えられます。これらのデメリットについても詳しく見ていきましょう。
【仲介のデメリット①】仲介は売却までに時間がかかる
不動産会社は色々なところに告知を出して買い主を募集しますが、すぐに買い手がつかないこともあります。仲介での売却にはいつ買主が現れるかわからない、というデメリットがあります。そういった意味で、長期間かかる可能性も考慮して売却の計画を立てることになります。
【仲介のデメリット②】瑕疵担保責任を負わなければならない
仲介では買い主、売り主ともに個人になります。この場合、売り主は瑕疵担保責任を負わなければなりません。瑕疵とは目に見えない欠陥のことです。排水管の詰まりや、建物の腐りなど、仮に売り主が知らなった場合でも指摘された場合は責任を負わなければなりません。
ただ、通例で瑕疵担保責任の期間が3ヵ月くらいだったり、契約上なくしたりすることもできます(※)ので、 実質的には売り主にとってはコントロールしやすいデメリットと言えます。
※参考:経済産業省「瑕疵保証のあり方に関する研究会 報告書」
【仲介のデメリット③】仲介手数料がかかる
仲介で売却する際は、不動産会社に仲介手数料を支払わなければなりません。手数料の額は価格によって違ってきますが、一般的には不動産価格の3%プラス6万円で考えると良いでしょう。2,000万円の時に66万円は手数料を支払わなければならない計算になります。
【仲介のデメリット④】リフォーム代がかかる
不動産会社は仲介をするだけですので、物件のリフォームは売り主が負担することになります。大規模なリフォームが必要な場合、費用も大きくなる点がデメリットになります。
3-3.買取で売却する際のメリットとデメリット
買取で売却する際のメリットは時間がかからない点とそれに付随してすぐに現金化できる点、瑕疵担保責任を負わなくて良い点、リフォームをしなくて良い点、第三者に売却を知られない点が考えられます。それぞれ解説いたします。
【買取のメリット①】買取は不動産会社が買い取るため時間がかからない
買取の場合、不動産会社が買い取るので、広告を出して買い主を募集する手間が省けます。その期間分早く売却できるという点がメリットです。それに付随して、売却することで即現金化できる、というメリットも享受できます。
【買取のメリット②】買取の場合は瑕疵担保責任を負わなくて良い
買取の場合は個人と不動産会社の取引になります。この場合、売り主は瑕疵担保責任を負う必要はありません。不動産会社は買い取った後リフォームなどをして付加価値をつけ、再販して利益を上げますので、瑕疵はあってもその時点で修復することになりますし、再販後の瑕疵担保責任は不動産会社が負うことになります。
【買取のメリット③】リフォームをしなくても良い
先に触れたように、買取の場合、不動産会社はその物件に付加価値をつけて再販することで利益を得ます。リフォームは不動産会社が行いますので、リフォーム代は不動産会社が負担することになります。
【買取のメリット④】売却することが第三者に知られない
仲介で売却する際は広告を出しますので、物件を売りに出していることが第三者に知られる可能性があります。買取の場合はどこにも告知しないので、第三者には、売りに出していることを知られる可能性がほとんどありません。
【買取のデメリット①】買取のデメリットは仲介と比べ価格が安くなりやすい点
買取のデメリットについて見てみましょう。買取の代表的なデメリットは買取価格が相場より安くなる点です。購入する不動産会社はリフォームなどをして付加価値を付け売却して利益を得ようとするため、価格は安くなります。
ただ、売り主にとっては売却に時間がかからず、すぐに現金が入ってくる点でメリットがあります。価格が低くなっても利益がある場合は、すぐに現金化できる点は魅力です。
3-4.高く売却するには購入時の出口戦略がポイント
できるだけ高く売りたいというのは誰しもが考えることだと思います。どのようにしたら高く売却できるのでしょうか。物件の価格は減価償却法のように計算をして出しますが、そこに立地などの付加価値を勘案して最終的な価格を出します。
その際に見るものとして、築年数や駅からの距離、周辺環境といった立地や建物が角地かどうか、風通し、設備、内装などの建物の状態などがあります。
この中で自分がコントロールできるものとして築年数とリフォームが挙げられます。築10年を区切りに長くなるとだんだん評価額が落ちてきますので、そのあたりで売却を考えることで、安くならないうちに売却できます。
すでに10年過ぎている場合は内装のリフォームや管理状態を見てみましょう。管理をきちんとして、内装をきれいにしておくことで、価格は若干違ってきます。ただ、評価を上げるためにリフォームをしたとしてもリフォーム代以上に価格がアップするかどうかはわかりませんので、評価を上げるためだけのリフォームはしない方が良いでしょう。
駅からの距離や周辺環境などの立地は自分ではコントロールできません。購入の際にきちんと出口戦略まで考慮して物件を購入しているかという点がポイントになります。物件を購入する際の周辺環境や内見の仕方については以下のページで解説していますので、参考にしてみると良いでしょう。
【関連記事】プロはここを見る!投資用マンションの周辺環境と内見時のチェックリスト
3-5.見積もりを取るには一括査定サイトが便利
不動産を売却する方法として、直接不動産会社の相談する方法と一括サイトで見積もりを依頼する方法があります。直接不動産会社に相談をする場合、1社では本来の価格がわかりませんので、数社に相談をすることになります。その場合、その都度書類を準備したり、現地に行ったりする場合もあるので、面倒な作業が増えます。
一括サイトでは一度登録することで、複数の不動産会社に査定を依頼することができます。一度の登録作業で済むので、非常に便利です。まずは一括サイトでおおよその価格を把握し、条件が合いそうな不動産会社に相談しましょう。
一括査定サイトにはそれぞれ特徴があります。数百社に一括で査定を依頼するサイトや、信頼できる数社にしか依頼しないサイトがありますので、自分の好みや条件に合わせて選ぶことができます。以下に代表的な一括査定サイトをいくつか紹介しておきます。
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
すまいValue | 不動産仲介大手6社による共同運営 | 査定は業界をリードする6社のみ。全国840店舗。利用者の96.7%が「トラブルなく安心・安全に取引できた」と回答 |
LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス | 株式会社LIFULL | 全国1600社以上の不動産会社に依頼できる。匿名での依頼も可能 |
HOME4U | イエウール | 全国1600社以上、悪徳企業は排除されているので安心。最大6社に無料で不動産の一括査定 |
HOME4U | 株式会社NTTデータ スマートソーシング | 全国900社から6社まで依頼可能。独自審査で悪徳会社を排除 |
上記サイトでは査定をする際に仲介なのか買取なのかを選ぶことができます。「安くても利益が見込めるので買取で良い」「できるだけ早く現金化したい」という方は、不動産買取のサービスも利用を検討されてみると良いでしょう。
たとえば、大手不動産会社の野村不動産アーバンネットが運営する「ノムコム」の不動産査定・売却サービスでは、エリアに精通した野村の仲介+(PLUS)の営業担当者から査定金額が提示されますが、その後の売却活動で一定期間内に売れなかった場合は、あらかじめノムコムが提示した金額で購入する「買換サポート」が受けられるため、資金面でのリスクを軽減し、売却時の不安やストレスを解消することができます。(※保証や買換サポートについては、地域や物件によってサービスが提供されていない場合があります。)
3-6.売却の際にかかる税金
購入時と同じように売却の際も税金がかかります。税金を試算しなかったために思ったより手残りが少なかったということにならないように、税金がかかることを忘れないようにしましょう。
売却時の税金として、印紙税と譲渡所得税、住民税、固定資産税の清算分がかかります。それぞれ解説いたします。
売却時の印紙税
印紙税は売買契約書に貼る印紙代のことです。印紙税額は契約金額によって変わります。以下は契約金額ごとの印紙税額の一覧表です。以下は国税庁が発表している平成30年4月1日現在の印紙税です。租税特別措置法により軽減措置がとられ税率が軽減されています。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
*国税庁ホームページより抜粋
譲渡所得税と住民税
売却した売り上げは所得になりますので、譲渡所得税が発生します。まずは課税譲渡所得金額を出し、所有した期間によって税率が変わってきます。課税譲渡所得額は売り上げから経費や控除額を引いたものになります。また所得が上がると翌年の住民税が変わってきます。以下の表は国税庁から抜粋したものです。
譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)= 課税譲渡所得金額
譲渡価額 | 取得費 | 売った土地や建物を買い入れたときの購入代金(建物は減価償却費相当額を控除します。)や仲介手数料などの合計額です。実際の取得費の金額が譲渡価額の5%に満たない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算することができます。 |
---|---|---|
譲渡費用 | ①仲介手数料、②測量費など土地や建物を売るために直接要した費用、③貸家の売却に際して支払った立退料、④建物を取壊して土地を売ったときの取壊し費用などです。 | |
特別控除額 | 収用などのとき:最高5,000万円 自分の住んでいる家屋と土地を売ったとき:最高3,000万円 (「マイホームを売って、譲渡益がある場合」参照) |
|
課税譲渡所得金額 |
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
*2つの表とも国税庁のホームページから引用
5年以下の所有期間の場合が短期で5年を上回った期間所有していた場合が長期になります。
売却した際の固定資産税の清算
その年の1月1日時点での所有者は固定資産税を支払わなければいけません。例えば6月や8月といったように年の途中で売却した場合、固定資産税を日額で按分して買主から売主に支払います。支払いは契約時に行うこともあれば、契約後に行われることもあり、双方の話し合いで決めることができます。売主はうっかり忘れないようにすることが大切です。
3-7.ローンの残債と売却益の差額に注意
不動産を売却する際に、査定価格が仮に希望した金額であったとしても、ローンの残債がまだ多くある場合は、仲介手数料やその他の費用を支払うと、売却しても利益が残らなかったり、赤字になったりする場合もありますので注意が必要です。売却の際にローンの残債は完済しなければいけませんので、返済しても売却益が残るようにシミュレーションして売却することが大切です。
まとめ
東京オリンピックの開催が決まってから都心の不動産価格は上昇してきました。売却すれば利益が多く見込める方もいらっしゃると思います。不動産会社によって査定価格は違いますし、売却の方法が仲介なのか買取なのかによって利益も変わってきます。かといってあまりに慎重になりすぎても売却のチャンスを逃す可能性もあります。
不動産会社1社だけで話をすすめると、価格が高いのか安いのかの判断ができませんので、まずは一括サイトを利用するなどして、複数の不動産会社と接点を持つことから始めるようにしましょう。
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