不動産投資には区分マンション投資やアパート経営などいくつかの種類があります。これから不動産投資を始めようとする方の中には、どれが自分に向いているのか分からず迷っている方もいるでしょう。またいきなり大きな金額のものに投資をするのは不安があるという方もいると思います。
そこで今回は、不動産投資の中でもよくトピックに上がりやすい区分マンション投資とアパート経営とを比較して、それぞれどう取り組むのがが良いのかを考えてみたいと思います。
目次
- 区分マンションは一部屋、アパート経営は一棟
- 家賃収入の大きさの違い
2-1.アパート経営では老後の生活費を補うこともできる
2-2.区分マンションの家賃収入は単身者の家賃分 - 投資をする目的
3-1.区分マンション投資をする目的
3-2.アパート経営の目的 - 管理範囲と修理費用の違い
4-1.アパートは一棟経営になるので管理範囲が広い
4-2.大規模修繕費用は区分マンションでも支払う - 物件の規模と価格帯の違い
5-1.新築区分マンションは価格帯の目安が付きやすい
5-2.アパートは広さや建材によって価格が全く異なる - 物件の立地の違い
6-1.用途地域で建てられる建物が決められている
6-2.アパートは駅から遠くても不利ではない - 融条資件や収支の違い
7-1.アパート経営は事業性ローンという側面がある
7-2.アパート経営の方が収支は良くなる? - まとめ
1.区分マンションは一部屋、アパート経営は一棟
区分マンション投資はマンションの一部屋を購入して賃貸経営をするものですが、アパート経営の場合は複数の部屋があるアパート一棟を賃貸経営することになります。そのため、アパート経営の方が大規模なものになり、投資額も収入も区分マンションより大きくなる特徴があります。
以下の表は区分マンションとアパート経営の違いを簡潔にまとめたものです(東京23区における新築物件の傾向を表しています。あくまで参考程度の数値であり、実際には下記と異なる条件のものも多く存在します)。
内容 | 区分マンション投資 | アパート経営 |
---|---|---|
規模 | 一部屋 | 一棟 |
ローン頭金 | 0円~ | 数百万円~ |
主な価格帯 | 1,000万円~ | 5,000万円~ |
立地 | 駅から徒歩10分以内が多い | 駅から徒歩15分以上の物件も |
利回り | 4%~ | 6%~ |
2.家賃収入の大きさの違い
区分マンションは一部屋、アパート経営の場合は一棟を所有することから、家賃収入に大きな違いがあります。どれくらい違うのかを見てみましょう。
2-1.アパート経営では老後の生活費を補うこともできる
アパート経営では複数の部屋の賃貸経営を行います。いくらくらいの収入になるのか、実際に売りに出ている物件を例として見てみましょう。
不動産・住宅情報サイトのライフルホームズで収益物件を検索すると、新宿区で以下のアパートが表示されましたので、こちらを例に見てみましょう。
価格 | 駅からの距離 | 築年数 | 部屋数 | 1ヵ月の家賃収入 |
---|---|---|---|---|
9,750万円 | 徒歩7分 | 1年 | 8部屋 | 49.56万円 |
こちらのアパートは満室で毎月49万5,600円の収入を得られます。もちろん、毎月の経費や税金がかかりますし、空室リスクもある点には気をつける必要がありますが、きちんと入居者がついて運用できればローン完済後にはこのアパート1棟で月数十万円の収入となり、老後の生活を十分に補うことができるかもしれません。
定年退職するくらいのタイミングでローンを完済するスケジュールで投資すればメリットが大きくなるでしょう。
2-2.区分マンションの家賃収入は単身者の家賃分
区分マンションの場合、単身者向けのマンション投資になるケースがほとんどですので、家賃収入は6万円や7万円といった額が多くなります(東京23区の場合)。こちらもライフルホームズで検索してみましょう。
価格 | 駅からの距離 | 築年数 | 1ヵ月の家賃収入 |
---|---|---|---|
2,380万円 | 徒歩3分 | 4年 | 8.23万円 |
こちらのマンションでは1ヵ月の家賃収入を8万2,300円得られることがわかります。このように区分マンション投資ではアパート経営と比較した場合、家賃収入はかなり小さくなるのが特徴です。
3.投資をする目的
不動産投資をする目的には、老後の不労所得を作ることや節税などがあり、人によってそれぞれ異なります。アパート経営と区分マンションでは、どのような目的を持って行われるのかを見てみましょう。
3-1.区分マンション投資をする目的
区分マンション投資には、節税、年金代わりの収入、生命保険代わりといった3つの大きな効果があり、その3つの効果を目的に始める人が多いのが特徴です。ただし、人によって収入や、所有している物件から得られる家賃収入などは異なりますので、効果の大きさも人によって異なります。
3-2.アパート経営の目的
アパート経営をする目的も区分マンションと同じように、節税、年金代わりの収入、生命保険の代わり、などがありますが、区分マンションと違い相続税対策で始める方も多く見受けられるのが特徴です。
もともと親の代から土地を所有している方の中には、相続税が膨大な金額になる方がいます。そういった人は所有している土地にアパートを建築して賃貸経営をすることで、その土地の相続税額を最大5割削減することができます。
土地とセットでアパートを購入してアパート経営をすることも一般的ですが、基本的に土地所有者でアパート経営を始める方の多くは相続税対策で始めています。このように土地を所有している場合としていない場合では若干目的が異なることがありますが、どちらもアパートで賃貸経営をすることには変わりません。
4.管理範囲と修理費用の違い
区分マンションとアパートでは規模の大きさが違いますので、管理範囲や修理代の金額にも違いがあります。どれくらい違うのか見てみましょう。
4-1.アパートは一棟経営になるので管理範囲が広い
アパートは一棟経営になるため管理範囲が広くなります。管理や設備の修理範囲は、室内の設備だけでなく共用部までが責任範囲となり、修理代も負担することになります。そのため、一度に発生する修理費用が大きな金額になることもあります。
その点、区分マンションの場合は基本的に室内の管理と設備の修理だけで済みますので、アパートと比較すると一度にかかる費用は少なくて済みます。
アパート経営の場合は常に広い範囲を管理し、設備に必要な費用は大きな金額になってもその都度支払わなければいけない点で、常に大きな資金を準備しておかなくてはいけないという負担が生じます。
4-2.大規模修繕費用は区分マンションでも支払う
区分マンションを所有している場合は、室内の管理が主な管理範囲になります。室内の設備が壊れ修理が必要になった場合は修理代を負担しなければいけません。なお共用部の管理は建物の管理会社が行いますので、その都度区分所有者に支払いが発生することはありません。
しかし、共用部の修理代や大規模修繕費用は、区分所有者が毎月積み立てている修繕積立金から支払われますので、実際には区分所有者が分担して支払っていることになります。このように区分マンションの所有者は、室内の設備などに対する修繕責任を負うほか、共用部の修理については費用を毎月積み立てる、ということを知っておきましょう。
5.物件の規模と価格帯の違い
区分マンションとアパートでは規模が全く違いますので、価格帯も違います。またそれぞれ新築と中古でも価格は異なります。どれくらい違いがあるのかを見てみましょう。
5-1.区分マンションは価格帯の目安が付きやすい
区分マンションの場合、同じエリアに築年数や面積が近い物件がいくつか存在することから、価格相場の目安が付きやすい傾向にあります。相場の目安はライフルホームズやアットホームといった不動産サイトで確認することができます。
例えば、アットホームで調査したところ、東京都中野区における築30年以内の1R・1Kマンションの平均価格は1972.4万円となっています(2019年8月20日調査、アットホーム登録物件による平均値)。
このように、マンション投資の場合は自分の希望に合った物件を比較的探しやすく、また気になった物件が相場に比べて高いか安いかの判断も付きやすくなることから、この点は初心者にも易しいと言えるでしょう。
5-2.アパートの場合は広さや建材によって価格が全く異なる
アパートの場合は土地の広さによって建てられる建物の規模が異なりますし、建ぺい率や斜線制限といった規制があり、同じ土地面積でも周りの環境によって建てられるアパートの規模が異なります。そのため、新築でも規模と価格帯を絞って探すことが難しくなります。
また、アパートの工法には木造、鉄骨、RCの3種類があるため、どの工法にするかによっても建築費が全く異なります。このような理由から、アパートは新築の場合でも規模や価格帯は全く違うという認識でいた方が良いでしょう。
中古の場合も工法や規模、築年数によって全く価格帯は異なりますので、取り組む際はその都度物件を見て慎重に検討することが大切です。
6.物件の立地の違い
マンションとアパートが建てられる立地の違いについて見てみましょう。
6-1.用途地域で建てられる建物が決められている
都市計画法には用途地域というものがあり、場所によって建てられる建物の用途や建物の高さに制限が設けられているため、マンションやアパートを建てたくても建てられないことがあります。
駅近にRC造のマンションが多く、駅から徒歩15分位の場所に低層のアパートや戸建てが多いのは、用途地域で建てられる建造物が制限されているからです。一般的にそういった傾向があるということを知っておきましょう。
6-2.アパートは駅から遠くても不利ではない
駅近に建てられているマンションと比較すると、駅から徒歩15分位の場所に建てられたアパートは立地面で不利だと思われがちですが、一概にそうは言えません。
確かに駅からの距離が近い方が利便性は良く、住みたいという人は多くなりますが、マンションとアパートでは家賃の額や住み心地に違いがあり、入居者の層が違います。また、用途地域によってアパートが建つエリアに高層のマンションが建てられないことが多いため、マンションとアパートは競合にはなりにくい可能性が高く、駅からの距離だけでアパートの入居率が低くなるとは言えません。
7.融条資件や収支の違い
区分マンションとアパートでは融資条件が異なる上に、規模が違うため手元に残る金額も違います。どれくらい違うのかを見てみましょう。
7-1.アパート経営は事業性ローンという側面がある
区分マンションの融資の審査では、契約者の属性や収入が大きな比重を占める傾向にあります。マンション自体にも担保評価額が設定された上で、いくら融資をするかという審査はありますが、実際の融資判断には契約者の収入が大きく影響します。
一方アパート経営での融資の場合、事業性ローンという側面が強く、家賃収入できちんと返済できるかどうかという面を見られることが多くなります。
7-2.アパート経営の方が収支は良くなる?
区分マンションとアパート経営とを比較した場合、アパート経営の方が収支は良くなる傾向にあります。融資額が高くても事業性を見て融資ができるのは、そういった理由もあります。どれくらい違うかを実際に売りに出ている上述の収益物件で比較してみましょう。
物件 | 最寄駅からの距離 | 築年数 | 価格 | 家賃収入 |
---|---|---|---|---|
区分マンション | 徒歩3分 | 4年 | 2,380万円 | 8.23万円 |
アパート | 徒歩7分 | 1年 | 9,750万円 | 49.56万円(8部屋) |
次に、これらの物件に投資をした場合の収支を試算してみたいと思います。以下の条件でローンを組んだ場合の毎月の収支と、手残り分を全額貯蓄した場合10年後にいくらストックされているかについて試算してみます。
区分マンションでローンを組んだ場合
- 金利2%
- 返済期間35年
- 頭金200万円
アパートでローンを組んだ場合
- 金利2.9%
- 返済期間30年
- 頭金1,000万円
※融資条件が区分マンションの方が若干良いのは、物件価格が安いぶんリスクが低く、アパートよりも良い条件で融資を受けられる傾向にあるためです。
物件 | ローン金額 | 月々の返済額 | 月々の手残り | 10年後の貯蓄額 |
---|---|---|---|---|
区分マンション | 2,180万円 | 7万2,215円 | 1万85円 | 121万200円 |
アパート | 8,750万円 | 36万4,201円 | 13万1,399円 | 1,576万7,880円 |
*金利2%、返済期間35年、頭金200万円、家賃下落、金利上昇、その他の経費は算入していません。
*金利2.9%、返済期間30年、頭金1,000万円、家賃下落、金利上昇、その他の経費は算入していません。
このようにアパートの方が家賃収入のボリュームが大きくなるため、区分マンションと比較して手残り額を大きくできることが確認できます。
しかし、アパートの場合8部屋あり、各部屋と共用部についても修繕責任がありますので、リスク分のストックを早めに貯めるためには、もう少し頭金を多く入れるなどの検討も必要だと言えます。
まとめ
区分マンション投資に比べると、アパート経営の方が手元のキャッシュフローは大きくなります。しかし、頭金が多く必要になることや、価格帯も区分マンションより高くなることから、初心者にとっては金額的な不安が大きいのではないでしょうか。
アパート経営はうまく運用できれば、まとまった収入が得られることや利回りが高い傾向にあったりするメリットがあります。一方、アパート経営は区分マンションよりも立地面や経年劣化等の面で空室リスクが高い傾向にあるため、入居者の募集の際にノウハウが必要になり、修繕タイミングにも判断が求められるなど、より経営者的な視点から運用をすることが望まれます。
区分マンションはアパートよりも価格帯が安く初心者の方にも手が届きやすい一方、家賃収入に対してローンの返済額や管理費・修繕積立金の占める割合が大きく、キャッシュフローが貯まりにくい傾向にあります。
そのため、区分マンション、アパートいずれも投資をする際は、メリット・デメリットをしっかりと理解し、細かな点まできちんとシミュレーションしてから、どちらが自分に向いているかを良く検討して取り組むようにしましょう。
Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース