【重要ニュースまとめ(10/29~11/4)】CoincheckとSBI VCトレードが決算発表、好調の要因は?国内大手7社による貿易業務のブロックチェーン活用
今回は、10月29日〜11月4日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。
目次
今週(10月29日〜11月4日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、国内大手暗号資産取引所の決算発表や、こちらも国内大手企業群による貿易業務でのブロックチェーン活用など、日本発のニュースが話題となりました。また、大統領選挙の開催に伴うAP通信のブロックチェーン活用も進んでいます。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。
CoincheckとSBI VCトレードの決算発表
Coincheck
Coincheckを運営するマネックスグループが、2021年3月期第2四半期決算を発表しました。グループ全体を通して好決算となり、中でもクリプト事業として位置付けたCoincheckを、今後の収益の柱として見込んでいるとのことです。
クリプト事業の利益は、グループ全体における前四半期比7倍となる7億円を計上しています。これは、Coincheckの特徴であるアルトコイン取引が好調であることが要因だとし、マネックスグループ参画後の最高益となりました。
市場におけるBTC取引量は減少するも、Coincheckにおける販売所取引量は昨年と同程度を確保しているとしています。登録ユーザー数も右肩上がりとなり、250万ユーザーに迫る勢いです。
決算では、グループ全体を通して新たなビジネスモデルへの転換も推進していくと発表しました。Coincheckでは、コア事業から派生したサービスとして「IEO」や「NFT」、「ステーキング」といった項目をあげています。
SBI VCトレード
SBI VCトレードを運営するSBIホールディングスからも、2021年3月期第2四半期決算の発表がありました。
SBIグループは、2020年5月の改正金融商品取引法施行後より、グループ全体を通してセキュリティトークン事業を本格化させています。その中での決算ということもあり、多くの注目が集まりました。
まずは、11月中にSBI VCトレードが暗号資産のレンディングサービスを開始する方針であることを明らかにしています。合わせて、先述のセキュリティトークンを取り扱う私設取引所の新設計画も公開しました。
これについては、次世代の金融商品であるセキュリティトークンの流通・発行市場を創設することで、企業にとっての新しい資金調達の選択肢を提供していくと説明しています。また、グループ内で運営するアクセラレータとのシナジーにより、日本の資本市場の厚みにも繋がるとしました。
肝心の業績は、取引所事業の上半期税引き前利益が、前同期比44.4%増の47億1200万円となっています。Zホールディングス傘下の暗号資産取引所TAOTAOの買収が話題となりましたが、今後はグローバルでもM&Aを推進していくことを強調しています。
SBIグループでは、暗号資産は株や債券といった伝統的な資産と相関性が低いとし、分散投資の効果を高めることができる存在と位置付けています。なお、6月の経営近況報告会で発表された暗号資産ファンドについては、運用開始を2021年度中としました。
【参照記事】2021年3月期 第2四半期決算説明資料(マネックスグループ)
【参照記事】2021年3月期 第2四半期 SBIホールディングス株式会社 決算説明会
国内大手7社による貿易業務でのブロックチェーン活用
国内大手企業7社による、貿易業務のデジタル化およびブロックチェーン活用を本格化させる計画が明らかになりました。NTTデータの運営するブロックチェーンプラットフォーム「TradeWaltz(トレードワルツ)」へ共同出資する計画です。
参画企業は、NTTデータ、三菱商事、豊田通商、東京海上日動火災保険、三菱UFJ銀行、兼松、損害保険ジャパンの7社となっています。
現状の貿易業務には、非常に多くのステークホルダーが存在します。にも関わらず、紙ベースの作業が中心となっており、システムへの手入力や倉庫管理といったコストが大きく発生しています。今回の取り組みにより、アナログ作業から脱却しコスト削減だけでなく大幅な効率化を図るのが狙いです。
本計画におけるブロックチェーンの活用方法は、企業間連携システムにおける共通プロトコルの導入です。ブロックチェーンがデータの耐改ざん性や透明性に優れているのはもはや周知の事実ですが、最近は企業間におけるシステムの共通化といった観点からも注目を集めています。
これは、エンタープライズブロックチェーンと呼ばれる領域です。貿易に限らず企業間でシステム調整が発生するような場面では、共通プロトコルであるブロックチェーンを採用することで、従来の作業が不要になります。
具体的には、企業間で使用する共通部分をブロックチェーンにし、各社でそれぞれ必要な部分はブロックチェーンに対応した周辺システムを独自に開発すれば良いのです。これについては、NTTデータによる以下の比較図がわかりやすいでしょう。
貿易業務に限らず、サプライチェーンのような複雑かつ膨大な作業が発生する場面では、途中で情報を追跡できなくなったり、特定のステークホルダーによって不正に書き換えられていたりといった問題が発生しています。
これは、異なる企業が独自に開発したシステムを無理やり結合させていたことが原因の1つです。仕様の異なるシステムを繋ぐ場合、新たにAPIを開発するケースが多くなりますが、その度に開発・運用コストが発生します。にも関わらず、予期せぬ不具合が起きてしまい先述のような問題が発生しているのです。
こうした問題の解決は、情報の改ざんが難しく透明性に優れたブロックチェーンの得意分野だといえるでしょう。今後新規に構築される企業間連携のシステムでは、共通プロトコルであるブロックチェーンが採用されるのは当然の流れといえます。
今回の取り組みは、2017年より実証実験という形で既に始まっており、商用化の目処が立ってきたことから共同出資に踏み切ったといいます。ロードマップとしては、2024年度までに国内外400社の顧客獲得を目指すと説明しました。
今年のダボス会議(世界経済フォーラム)では、「貿易業務のデジタル化フォーラム」が開催されるなど、世界的にもデジタル化の波が来ています。NTTデータによると、2021年度より「貿易取引の完全ペーパーレス化実現」を、2022年度からはそれらのさらなる高度化を目指すといいます。
また、今後の商用化が進みTradeWaltzが普及した暁には、貿易業務の全てを電子データで管理することができるようになるとしています。これにより、貿易業務の作業量を約50%削減することも可能だと説明しました。
【参照記事】貿易プラットフォーム「TradeWaltz®」の運営会社に業界横断7社で出資
【参照記事】貿易業務を完全電子化 NTTデータ・三菱商事など7社
大統領選挙の結果記録にブロックチェーン
通信大手のAP通信が、米国大統領選挙の結果を記録する際にブロックチェーンを使用する計画を明らかにしました。使用するブロックチェーンは、イーサリアムとEOSです。
AP通信は、通常の結果配信に加えてブロックチェーンに記録された結果記録も、政府部門や個別団体へ独自のAPIを通して提供するとしています。肝心のブロックチェーンに記録する前の投票結果ですが、ウィキペディアの類似サイトであるEveripediaやオラクルツールであるOraQleを参照することで取得するといいます。
今年の大統領選挙に際しては、Augurなどの分散型予測市場でも結果予測が活発になっていました。選挙自体をブロックチェーンで管理する状況には至っていませんが、少しずつ活用が広がってきているといえるでしょう。
今回提供するAPIの利用者は、関連するスマートコントラクトを利用することができ、各々自由にサービスへ統合することが可能です。AP通信も、自身のイーサリアム公開鍵やEOSアカウントを公開しています。
こういった著名企業が公の出来事の際にブロックチェーンを活用することは、業界にとって非常にポジティブなニュースだといえるのではないでしょうか。
【参照記事】Integrate your election systems with AP Elections API
【参照記事】AP通信、米大統領選の投票結果にイーサリアムとEOSブロックチェーンを活用
まとめ、著者の考察
法規制や市場動向の影響を受け、日本における暗号資産取引所の運営が非常に難しくなっている中、CoincheckとSBI VCトレードからは好調な様子が伺えました。利用者が一部の取引所に集まり、その他多くの取引所では厳しい状況が続いているのではないでしょうか。
一方のブロックチェーンに関しては、貿易業務における活用のように企業間でのシステム連携に採用されていくケースが少しずつ増えてきました。
突発的に導入が進むわけではありませんが、昨今のデジタル化の波を受け徐々にエンタープライズブロックチェーンの市場が盛り上がってきています。引き続き、単純な通貨の値動きだけでなく、技術的なファンダメンタルズにも注目していきましょう。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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