アメリカ不動産を売却する方法は?手順や費用、注意したいポイントも
2019年末の税制改正大綱発表以降、アメリカ不動産に投資してきた人の中には、物件の売却を検討している人もいるのではないでしょうか。
また、アメリカにある物件の売却でどのような税金が発生するのか気になる人も多いでしょう。
この記事では、アメリカ不動産売却の手順や諸費用のほか、税金の注意点などについて解説します。
目次
- アメリカ不動産売却の手順
1-1.アメリカ不動産の売却を依頼するエージェントを探す
1-2.アメリカ不動産の売出価格を決める
1-3.物件広告を掲出して売却活動をスタート
1-4.買手候補者からのオファーを受ける
1-5.売買契約書を締結してエスクローを開設する
1-6.買主によるインスペクションの実施
1-7.クロージングと所有権移転登記
1-8.確定申告する - アメリカ不動産の売却にかかる費用と税金
2-1.アメリカ不動産の売却にかかる諸費用
2-2.アメリカ不動産の売却で発生する税金 - まとめ
1.アメリカ不動産売却の手順
アメリカ不動産を売却する手順について解説します。なお、アメリカ不動産の売却にあたって必ずしも売主が渡米する必要はありません。アメリカ不動産の売買には印鑑が不要なので、書類関係は全てPDFまたはクラウドサインなどで対応可能です。
1-1.アメリカ不動産の売却を依頼するエージェントを探す
最初に不動産売買の手続きを依頼するエージェントを探します。アメリカ不動産の売買には、売主と買主それぞれにエージェントがつきます。アメリカの多くの州では不動産業者による両手仲介が禁じられているためです。
エージェントに具体的な物件情報を伝えられるよう、物件購入時の手続き書類などをあらかじめ整理しておくと良いでしょう。
1-2.アメリカ不動産の売出価格を決める
エージェントを見つけたら、物件の売り出し価格を決めます。売出時の価格設定は、スムーズに不動産売却するために重要なポイントです。価格が周辺相場よりも高いと売れにくくなり、売却が長期化してしまうためです。
アメリカの不動産ポータルサイトでは、物件情報をアップロードしてからの経過日数が物件ごとに表示されます。この経過日数が長期間になると「何か売れない原因があるのだろう」と思われ、買主から敬遠されてしまう要因となる可能性があります。
アメリカ不動産の物件価格には「Listing Price」と「Sales Price」の2種類があります。Listing Priceは売り出し価格のことで、Sales Priceは成約価格のことです。どちらも不動産ポータルサイトで調べられるので、両方とも確認しながらエージェントと相談すると良いでしょう。
1-3.物件広告を掲出して売却活動をスタート
売り出し価格が決まったら、物件広告を掲出して買主を募ります。物件広告は不動産ポータルサイトに掲載され、この点においてアメリカと日本とで大きな違いはないと言えるでしょう。
物件が売れる確率を上げるためには、きれいな写真を多数掲出しておくことも重要です。エージェントか管理会社に依頼して、写真を多数撮ってきてもらうと良いでしょう。
また、売出後は定期的にエージェントとコミュニケーションを取ることも必要です。問い合わせの有無や内容などについて確認しておきましょう。
1-4.買手候補者からのオファーを受ける
アメリカでは、買主候補者からの物件購入に関する申込みを「オファー」と呼びます。なお、複数の買主候補者からオファーが入ることもあります。
オファーを複数受けた場合は、売主は1番良いオファーを選んで交渉が可能です。1番良いオファーを選ぶためにも、以下の点を比較すると判断しやすくなります。
- 購入希望価格
- ローン利用の有無
- 希望の引渡し時期
売り出し価格は売主の希望価格であるため、交渉では買主候補者が希望価格を提示してくることもあります。この希望価格とローン利用の有無を併せて判断してみましょう。
審査がこれからのローンの利用者は、金融機関の融資審査に落ちてしまうことも考えられます。現金購入者がいるのであれば、決済スピードや正確性を優先してそちらを優先することも選択肢となり得ます。
また、引渡し時期が長期間経過後だと、途中で何かトラブルが起こった場合に、決済に至らない可能性もあります。
1-5.売買契約書を締結してエスクローを開設する
オファーを吟味して売却相手を決めたら、売買契約書を締結してエスクローを開設します。
アメリカ不動産の売買では、契約書やお金のやり取りは全てエスクローを介して行います。売買契約書にサインしたら、サイン後の契約書はエスクローに送りますが、これを「エスクローを開設する」と言います。
エスクローは民間の法人であり無数に存在するので、どこのエスクローを利用するかはエージェントへ相談してみましょう。経験豊富なエージェントであれば、特定のエスクローと提携していることがあります。
1-6.買主によるインスペクションの実施
売買契約を締結したら、買主側で以下の手続きが進みます。
- 手付金の送金
- 物件インスペクションの実施
- ローン利用者の場合はローン審査
物件インスペクションとは、劣化箇所の点検調査のことです。アメリカでは日本の不動産取引における「契約不適合責任」に相当するような民法がなく、物件引渡し後に不具合が発生しても、事前に確認していなかった買主の責任とされます。
このため、引渡し前に点検調査した結果、修繕を要する箇所が見つかった場合は、売主負担で修繕するか交渉になります。
また、買主がローン利用者の場合はローン審査が行われますが、審査落ちになった場合は契約がキャンセルされます。手付金の返金などについては、売買契約締結前に確認しておくことが重要です。
1-7.クロージングと所有権移転登記
インスペクションが終わったら、決済残金の入金と所有権移転登記に進みます。エスクローから「クロージングステートメント」という明細書が提出されるので、明細書にサインを入れたら決済完了です。
入金後に所有権移転登記が行われたら取引は完全に完了します。
1-8.確定申告する
アメリカ不動産も、日本の不動産と同様に売却したら確定申告が必要です。アメリカ不動産を売却した場合は、アメリカと日本との両方で確定申告します。
日本在住の税理士でアメリカの納税にまで対応できる人は少ないので、確定申告についてもあらかじめエージェントに相談しておくと良いでしょう。
2.アメリカ不動産の売却にかかる費用と税金
つづいてアメリカ不動産の売却にかかる費用と税金について解説します。なお、アメリカと日本は租税条約を結んでいるので、同種の税金が両方の国で課税されることはありません。
2-1.アメリカ不動産の売却にかかる諸費用
アメリカ不動産を売却すると、売主はエージェントフィーとエスクロー関係の費用を支払います。
アメリカのエージェントフィーは通常売却価格の3%です。しかし、アメリカでは買主のエージェントフィーも売主が負担することが通例です。このため、売主はエージェントフィーとして売却価格の6%を支払います。
エスクローフィーには決済手続きの手数料や登記関連費用などが含まれます。金額はエスクローによって変化するものの、目安として物件価格の5%前後を想定しておきましょう。
2-2.アメリカ不動産の売却で発生する税金
アメリカ不動産を売却すると、州ごとに譲渡所得税が課税されるほか、連邦税が売却額から源泉徴収されます。
譲渡所得税は州税となるので、州ごとに別々の税率で課税されます。なお、テキサス州やワシントン州など複数の州では所得税が課税されません。2020年の税率については、こちらのTax Foundationeから確認可能です。
連邦源泉所得税については、州税ではなく連邦税なので、どこの州であっても課税されます。なお、課税されるのは物件の売却価格が購入価格よりも高かった場合のみです。
しかし、源泉徴収税なので、通常は決済時にエスクロー側で税金分が差し引きされます。あらかじめ税理士を通じて免税手続きすれば源泉徴収を避けられますが、源泉徴収の可否は税務署の審査次第となります。場合によっては確定申告しないと取り戻せません。
売却額でローン返済する場合は、源泉徴収によってお金が足りなくなる可能性もあるので、十分注意しましょう。
まとめ
アメリカ不動産の売却をスムーズに進めるためには、買主との交渉やエスクローの開設、売却に伴う税金についてなど、様々な業務に精通したエージェント選びが重要になります。
アメリカの不動産エージェントは副業で営んでいる少なくなく、専業のエージェントと副業のエージェントとでは経験や知識に差があるケースもあります。専業か副業か、エージェント選びの際は注意しておきましょう。
また、海外不動産の取引では時差や言語の違いが障害となることもあります。アメリカ不動産の売買を取り扱う日本の不動産業者に相談するなどの対策も検討してみましょう。
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